第三話 俺のリア充ライフスタート!?
俺のリア充ライフスタート!?
いつもの朝、いつもの憂鬱。そんな毎日にも変化はある。
例えば家族が急に二日で三人増えたりとかな。
「起きて。悠君。ねえ、起きてよぉ」
俺の耳元で甘い声と香りがする。
ああ、これこそリア充だろう。こんな夢が一生終わらなければどれだけいいことか。
「悠君。おーきーてー」
あれ? なんか、夢じゃない? あれ? あれれ?
「起きないと、き、キスするよ?」
な、何ぃ!? それは是非してもらいたいぞ!
だが、そんな願いも虚しく俺は目を開けるしかなくなる状態に陥った。
「早く起きないと体真二つですよぉ?」
バサっと起き上がり少女が持つチェーンソーを回避した俺。
「もし、ホントに起きてなかったらどうするつもりだよ!」
俺は朝から大声を上げ少女を怒った。
チェーンソーを持って笑っているのは白虎。自称妖怪だそうだ。
「大丈夫です。私は起きていると認識してから殺ろうと決めてましたから」
それはそれで問題だと思うけどね!?
俺は白虎から目線を外しもうひとりの人物に目を向けた。
「うぅ。……あと、もうちょっとだったのに」
なぜか、悔しい顔をしながら顔を真っ赤にしている泉香。
「泉香に起こしに来てもらうことは約束したが白虎に起こしてくれとは頼んでいないぞ!?」
再び俺は白虎に視線を直し言う。
失敗すれば殺されかねない白虎に起こしに来てもらいたいと思うのはきっとMのすることだ。俺はそう信じる。
「そんなぁ。悠様を起こすのに許可はいりませんよぉ」
「殺す許可は必要だと思うけど!?」
ムッと口を尖らせ不機嫌な顔になり白虎は落ち込んでいる。
「ああ、もう。わかったよ。明日から起こしに来てくれ白虎」
俺が半分諦めて言うと白虎は目を光らせ
「はい!」
といい部屋を出た。
はあ、朝から疲れるよ。
「悠君はごはん食べないんだよね?」
泉香が元通りの顔に戻っており聞いて来る。
「ああ、もうちょっと寝るから三十分くらいで起こしてくれるか?」
俺はあくびをしながら泉香に言う。
「うん。わかった。おやすみ」
そう言って泉香は部屋を出て行った。
ああ、なんか嵐が去ったみたいに静かだ。
「さて、予告通りに寝ますか」
俺はまた暗闇の中に誘われて行った……はずだった。
「きゃー!!」
泉香の悲鳴が聞こえた。
「……好感度を上げるためにここは行ったほうがいいのかな?」
行くか行かまいかを判断するのに小一時間。そして、行かないと判断して寝ようとしたので0.015秒。
「助けに駆けつけてよ。バカー!」
俺の部屋のドアを蹴破り入ってきた。
「泉香、まだ三十分経ってないと思うんだが」
俺は布団に潜り言う。
「あ、そうか……じゃなくて、私の声聞こえたでしょ!?」
「ハッハッハ、ナンノコトカナ?」
気持ちいい声の音色と共に眠気が俺を呼んでいる。ああ、あと数秒もしないうちに寝てしまいそうだ。さようなら嫌な現実。しばしのお別れだぜ!
「ぐびゃふっ」
俺は鳩尾に激痛が走り眠り駅特急線に乗り遅れた。
「な、何事だ?」
俺は布団をどかすとそこには泉香が抱きついていた。
ななな、なんですかこのイベントは! 俺に選択肢なしで進むイベントがあっていいんですか!?
「怖い、怖いよぉ。ゴキブリ」
はい? ゴキブリ?
「お前はいつの時代のゲームキャラだよ」
俺は起き上がり泉香の頭を撫でてやる。
「で? どこだ? ゴキブリは」
泉香は指を指し場所を教える。ああ、あんなところにいたのか。
俺はティッシュを何枚か取りゴキブリの確保の為手を伸ばすとそれよりも先に幅広でギザギザしたものがゴキブリを捉える。
そして、それはギィーンと刃の部分が回りだしゴキブリを床ごと真二つにした。
俺は青ざめた顔でそれを見届けるしかなかった。
「泉香さん。Gは殺しましたです♪」
そう、ゴキブリを容赦なく切り刻んだのは白虎だった。
俺はその場で固まっていたがハッと我に返り白虎に文句の一つでも言ってやろうと顔を上げると
「それよりも悠様。チェーンソーの近くに手を近づけては危ないですよ?」
「それはどちらかというとチェーンソーを持っているやつに言いたいよね!?」
俺は文句ではなくツッコミは入ってしまった。
いやいや。どう考えてもおかしいのは白虎だよね? 俺ではないよね?
「何を言うんですか! 私はGを退治しただけですよ!」
無い胸を張って言う白虎。
な、なんという言い分だ。流石人外の未確認生物だけあるよ!
「悠君!」
泉香が俺の背中に抱きつきまだ震えていた。
「悠君。あいつ死んだ? ねぇ、あいつ死んだ?」
あなたがあいつ死んだと聞くと背筋が凍るのはなんでしょうか?
「あ、ああ、白虎がチェーンソーで床ごと――」
真二つにしたよと言おうとしたがそれは部屋に現れたもうひとりの人物によって遮られた。
「へぇー、悠はそういう行為が好きなんだ」
殺気のこもった非常に冷ややかな声が俺の部屋俺の目の前でした。
「き、祈雨さん? どうして、そんなに怒っていらっしゃるんですか?」
俺は愛嬌たっぷりの苦笑いというスマイルを送ると祈雨さんはニコッと笑いを返す。
「死にたい?」
「なんでそうなる!?」
「わからないとは言わせ……てもいいかな」
「そこは言わせないのが正解だと思うぞ!?」
なんで、俺は朝からこんなやりとりをしなくちゃならんのだ。
ん? 今の俺の言葉、おかしくないか? それじゃあまるで――
「じゃあ、死ぬ?」
「で、ですよねぇ~~~」
絶賛冷や汗安売り中っとこれでなんとかみんな俺の今の状況をわかって――ぎゃー! そこはダメ! ああ、もう、俺――
「悠君? 悠君~~~!!」
「あ、ヤバ、ちょっと強くやりすぎた」
「ふわぁ、眠いです」
おい、三人目。今のこの状況での言葉として正しくないだろそれ!
だが、俺はそんなことを言うはずもなく当初の目的通り眠りに着いたのだった。
「なんで、学校なんてものがあるんだ。さっさと潰れてしまえばいいものを」
俺は忌々しさ全開で学校に怨念をぶつけている最中だった。
「そんなに怒んないでよ。ほら、キャンディーだよ?」
となりで祈雨が昭和のアニメ感バリバリのグルグルの刺繍の入った丸い雨を俺に渡してきた。
「ったく。なんでこんなに暑いのに学校なんて……」
苦笑いををしながら祈雨はうちわで俺を仰いでくれていた。
「でも、学校がなかったら悠と一緒に家で……ふふん♪」
小さい声で最後の方は聞き取れなかったがそれには重大な問題が生じるぞ。
「学校がなくても俺んちにはもう二人住人がいるだろ?」
俺は仰いでもらっていたうちわを取り今度は俺は祈雨を仰ぐ。
「あ、そうだったね。はぁ、何さ何さ。私だって悠とあんなことしたのにさ」
最後にさを付けてしまうのがこいつの癖だ。まあ、この頃は目立たなくなってきたが昔はひどかった。俺がいないと誰も言葉を理解できないでいたんだからな。
「ねぇ、今日の晩御飯何?」
「知るか。泉香に聞けば良かっただろ?」
俺はそっけなく言い放つと祈雨は俺からうちわを奪い仰ぎ始めた。
そんなことをしていると登校時間はすぐに過ぎていった。
そして、いつものように学校終わりまで寝てから帰り現在は家だ。
「ふぅ、お腹いっぱいなのさ」
お腹を数回叩き満足したような顔で自室に帰って行く。
ちなみにこいつらの自室は空き部屋を利用してもらってる。まあ、無難だろう。
「私も自室に戻って寝るです」
「お前は風呂に入れ」
「ええー」
当たり前だ。こいつ昨日から風呂に入らずにいるんだぞ? 腐いったらありゃしない。
白虎は風呂に渋々向かった。
俺? 俺は飯を食い終わったと同時にゲームですが、何か?
「悠君、口にご飯付いてるよ?」
そう言って泉香が俺の口元に丁寧に拭く。
「って、俺はどこぞのお子様だよ!」
俺は顔が熱くなるのを感じて下を向く。
「ご、ごめん……」
泉香も同じく顔を赤くし下を向いてしまった。
「お、俺は歯磨きしてから寝る。じゃあな」
俺は気恥ずかしくなり部屋を出た。
歯磨きをし自室に戻って着替えてから床に入った。
「ったく、今日一日でどんだけ好感度を上げさせるつもりだよ」
俺は文句を言いながら布団に潜った。
「いくらでもだよ」
へ?
「いくらでも上げさせちゃうよ」
俺が布団を確認するともぞもぞと動いている。しかもこの声はい、泉香じゃないか?
「お前何やって――」
そこで俺は言葉を失ってしまう。だって、ねぇ? 泉香のやつ裸なんですもん。
「お、おま、何してんだよ」
全ての言葉が裏返ってしまう。こんなの初めてなんだ察してくれよ!
「ふふ、緊張してるの? 可愛い」
裸の泉香が俺の体に擦り寄って来て抱きついてきた。
「私の初めてあげちゃうね」
そう言って泉香の手が俺の上半身から下半身へ伸び触れようとする。
俺は急速に頭の回転を早め何がどうなってこうなったのかを考えた。そして、考えうる答えを考えついた。
俺は泉香の肩を持ち俺の体から引き剥がす。
「きゃ」
泉香のか弱い悲鳴が聞こえる。だが、俺はそんなもんじゃないんだよ。こっちは理性を保つので精一杯なんだ。
「い、泉香。こ、媚なんて売らなくてもいいんだぞ?」
そう。俺が考えそしてたどり着いた答えは媚を売り追い出されないようにするというものだった。
「え? こ、媚なんて――」
「じゃあなんでな事をした? 俺の事を好きでもないのに」
泉香は言葉を失う。俺の理性もかなり大丈夫になってきた。
「いいか、泉香。お前は誰にも渡しはしないよ。警察? 本物の殺人犯? なんだそれ、おいしいのか? 俺はお前を渡してまで欲しいものなんてないよ。だから安心していい」
俺は大きくなる下半身をなんとか治めさせ理性を保つ。
「でも、私何も持ってないんだよ? そんなの不公平だよ。代償は必要だよ。だから、私恥ずかしいけどこんなことを、したのに」
「だから、そんなのいらねぇよ。お前は飯作ってくれるだろ? それだけで十分だ」
俺は泣きそうな顔をしている泉香の頭をなでてやった。
「いつも」
「ん?」
「私が泣いているときはいつもお父さんがそうしてくれた。今は、悠君だけど悠君も頭、撫でてくれてる」
泉香は泣き止み顔を俺に近づけて来る。
ここここれは、いや、このままではきききキスしてしまうぞ!
「ななな何してんのさ二人共!」
「いけないです! そういうのはダメー!」
俺の部屋のドアを蹴破り入ってきた二人。祈雨と白虎だ。
「え? ええ? なんで二人が」
泉香が驚いている。きっと二人が自室に入ってからきたのであろう。
じゃなくて……。
「お前たちはイベントシーンを壊すことしかしないのか!」
俺はあともう少しというところで中断された悔しさのため叫んでいた。
「悠君」
「悠」
「悠様」
「「「変態(だよ、それ)(なのさ)(ですね)」」」
俺は泣いていた。なんでだ。なんで俺はこんな美少女たちにみんなして変態扱いされなきゃいけないんですか。
俺がその場で縮こまっていると泉香が隙を見て俺に抱きついてきた。
裸なので泉香の心拍数、体温が伝わってくる。
「悠君、大好き♪」
俺は一瞬遅れて泉香に言った。
「だ、だから、媚は――」
「媚なんかじゃなくて純粋に好き――」
そして泉香は俺の耳元に口を近づけ甘い息と声で言う
「悠君、大好きだよ」
ああ、俺の理性が吹き飛んでしまった。無理でしょこんな可愛い子に裸で抱きつかれてそんな甘いことを言われて立ってられる男子はいないね!
祈雨、白虎の叫び声が遠く感じる。
ああ、もう、死んでも悔いはないかも……。
そう思いながら俺は気絶という眠りに着いたのだった。
次回予告
「おにぃは私の物なんだからね!」
「最悪だ。今日は俺の厄日かもしれん」
「悠君は私とこ、子供作るって言ったもん!」
では、次回