第二話 白昼夢だな、これは
白昼夢だな、これは
ひょんなことから美少女を家に招き入れてしまった俺はラッキースケベを狙って何度も攻めたが何も起こらず床に入ってしまい今は月曜の朝である。
「おはよう、きらら」
俺はいつものようにデスクトップの美少女こと相川きららに挨拶をする。
「今日は月曜日か。学校……だよなぁ」
俺は天を仰ぎながら項垂れる。
そんなことをしても誰もが望む学校破壊が完了するはずもなくしかたなく俺はリビングに下りた。
「あ、起きたの? せっかく起こしに行ってあげようと思ったのに」
そこにはエプロンを着た泉香がいた。
チッ、なんで裸エプロンじゃないんだ。お前ら常人は裸エプロンに命が宿るのを知らないのか!
俺は半分諦め気味に話を聞いていてハッと我に返った。
「おおお、起こしに来てくれる……だと……?」
なんだそのイベントシーンは! そんなのが現実にあっていいというのか!?
「え? うん、あともう少しでご飯もできたし起こしに行こうと思ってたんだけど。先に起きられちゃった」
テヘッっと舌を少し出していたずらっぽく笑う泉香。
「あ、あ、あ、明日からお願いしますぅぅぅぅぅ!」
俺はその場でダイビング土下座をし頼み込んだ。
「え、う、うん。いいけど……何も土下座までしなくてもいいのに」
苦笑いをしながら了解をした泉香。何を言っている。土下座するに決まっているだろう。こんな美少女に朝起こされるなんてギャルゲーでしかあり得んぞ!
「ん、待てよ? 今朝ごはんを作ってるって言ったか?」
俺が泉香の後ろを除き込むとそこには豪華な料理が配置されていた。
「こ、これ、全部泉香が作ったのか?」
俺はちょっと引き気味に料理を見つめる。それもそのはず、俺は朝飯を食べない派なんだ。
「ご、豪華すぎたかな?」
作り終わって気づいたかのように泉香は言う。
「はあ」
「どうしたの?」
泉香は俺の溜め息が気になったらしく聞き返した。
「俺は朝、ごはんを食べない派なんだよ」
俺は泉香にそう伝えると泉香は固まった。衝撃の事実を知ってしまったかのような表情で俺を見てくる。
「そ、そうなんだ。ご、ごめんね。これは私が全部食べるから!」
そう言って泉香は料理をしまい始めた。
「おい、何も食べないとは言ってないだろ。出しておけ、俺が食う」
俺は席に着き箸を取り出し料理を食べ始めた。
「む、無理しなくていいんだよ? これは、私食べるし……」
俺はそんなのお構いなしに食べる。
出された料理の十分の一を食べ終わったところで箸を置きティッシュで口を拭きながら言う。
「別にお前が全部食わなくてもいい。残りは適当に弁当に入れて残ったのは夜と明日の朝ごはんにしてくれ。それでなくなるはずだ」
俺は立ち上がりリビングを出る。
「ど、どこ行くの?」
泉香が不安そうな顔をこちらに向けているのが分かる。
「歯磨きだ。飯を食うと歯磨きをしなくちゃならん。それが面倒で俺は飯を食わんだけだ」
そう言い残し俺は洗面台まで向かった。
歯磨きをしたあと俺は憂鬱ながらも制服に着替えカバンにあらかじめ用意しておいた教科書をぶち込み家を出ようとすると泉香がドアで姿を隠しながら出てきた。
「い、いってらっしゃい」
俺は気恥ずかしくなりお、おうと声を出して家を出た。
学校までの道のりは長い。俺の家は高校が決める自転車通学の距離内に一メートルだけ足りず自転車通学はできないため歩いて通学している。
「夏はなんでこんなに暑いんだ。ゲームだと少しも熱くないのに」
と、盛大な皮肉を言い暑さに耐えながら学校まで歩いた。
「学校怠いぃ」
席に着きながら俺はチャイムなると同時に言い放つ。
「おい、悠。そんなこと言うと次のテストで赤点を取ったときどうなるかわか――」
「ええ、わかってますよ。でも、俺百点以外を取った経験ありませんし。どうしようもないでしょ?」
俺は机に突っ伏しながら言う。ああ、暑いのに眠い。なんで授業をゲームの主人公は楽しくできるのかわからないよホント。
俺はいつもみたいに学校よ、潰れろっと念じながら寝てしまった。
次に俺がこの世界を見たとき時刻は四時を回っていた。
「弁当を食わんとならんか」
俺はカバンの中に入っている弁当箱を取り出し食い始めた。
「まずくはない。いや、むしろうまいというべきか?」
俺は一人しかいない教室でつぶやいていた。
「なーに言ってんのさ。悠、帰るよ。……ってあんたが学校でごはんを食べるなんて珍しいじゃん」
今話しかけてきたのは俺の憎きライバル……ではなく、幼馴染にして人類最強の咲実祈雨。最強というのはこいつは総合格闘技の世界チャンピオンをちゃっかり練習試合で空の彼方まで吹き飛ばしたことから始まった伝説である。
幼馴染というのは俺とこいつは今は違うがつい半年前までずっと一緒のクラスだったからだ。そりゃあもう、幼稚園から高校までずっとな。気味が悪いだろ?
「別に好きで食ってるわけじゃない。ちょっと事件が起きてな。それでだ」
俺は食べるスピードを緩めず話す。
「ふーん、そうなんだ。じゃあ、食べ終わるまで待ちますか」
祈雨は俺の前の空席に座り俺の顔を見て微笑んでいる。
「なんだよ。俺の顔を見てそんなに微笑むところがあるのか?」
俺は不機嫌な顔をしつつも質問した。
「ううん。ただ可愛いなぁと思って」
それを聞いた俺は背筋に悪寒を感じた。
「な、何言ってんだ。妹じゃあるまいし。変なこと言うなよ」
俺は残った料理をかき込み弁当をしまう。
「うん。帰ろ」
長いポニーテールを翻し祈雨は教室のドアまで走っていった。
俺はそれに見とれてしまった。長いポニーテールは今では失われた存在であり、似合う人物も少なくなっている。それにもかかわらず祈雨は髪が黒くそして、ポニーテールという完全に失われてしまった最後の人種だ。いわゆる絶滅期浮腫である。顔だって見るだけなら可愛い。長い足には全体的にいい肉付きをしており触ればとても気持ちがいい(実体権付き)。
そんな幼馴染を持つ俺は周りから睨まれることが多い。
だが、祈雨にはそれだけの存在感を持ち合わせているので俺は別に気にしてこなかった。
「何してんのさ。早く行こうよ」
振り返った祈雨が急かしてくる。
「ま、待てよ」
俺はそこで我に返りカバンをもって教室を後にした。
帰り道、俺たちは馬鹿なことを話しながら俺の家へと向かった。
「じゃ、私こっちだから」
「おう、じゃあな」
俺と祈雨の家はかなり離れている。だから、途中で別れるのは知っていたがなんだか寂しくなってしまう。
そんなことを考えながら歩いていると先の方で誰か立っていた。
「わ、私を拾ってくれませんか?」
近づくとそれはかなり可愛い少女だった。
だが、決定的に違うところがある。頭に猫耳が付いているのだ。
「……」
俺は無言で横切った。
「ちょっと! 無視しないでくださいよぉ」
びくんと俺の体が止まる。言葉に反応したのではない。体が動かないのだ。
「私、コレでも妖怪ですから。そんなこともできちゃうんです」
なんで俺の周りには通常の美少女が現れてくれないんだ!
体も口も動かすことができず俺が困っているといきなり動けるようになり俺はバランスを崩して道路に転んだ。
「もう一度聞きます。私を拾ってはくれませんか?」
俺は気絶している感を醸し出しこの場を切り抜けようと試みるが少女はその手には余るチェーンソーを出した。
「わかった。起きようじゃない、かぁぁぁぁぁぁあああああああ!? あっぶねぇ! 何? 俺を殺したかったの? 違う? あたりだろ!?」
俺は寸前で避けたチェーンソーを見て背筋が凍った。
「やっと起きてくれましたか。で? 答えは?」
ブォー、ブォーと殺る気満々の元気なチェーンソーを見てしばし考えた。
そして、出した答えが……。
「三食首輪付きでどうですか?」
ギィーとチェーンソーがコンクリートにあたって火花が散る。
「はい。是非拾わせてもらいます」
俺は冷や汗をかきまくって震える声で答えた。
すると動きっぱなしのチェーンソーをどこかの家に投げ込み顔で少女が俺を見てきた。
「よろしくお願いします。私、白虎といいます」
白いショートに白い猫耳を下げ挨拶をする白虎。
「ああ」
俺は短い叫びを上げた。
これはもしかしたら白昼夢かもしてないな。こんな美少女が俺と関係性を持つのは世界がおかしいぞ。
そのあとパーティーが増えた俺はそのまま家まで向かった。
「ただいま」
ドアを開け言うが返事はない。
泉香は帰ったのか? いや、それはないか。あいつは指名手配をされてるらしいからな。
だとすると寝てるのか? まあ、どっちにしろ俺には関係ないが。
「どうかしたんですか? 早く中に入りましょうよ」
白虎が急かしてくる。
俺は中に入りまずリビングに入った。
するとそこにはタオルに包まって震えている泉香がいた。
「どうした?」
俺は後ろから声をかけると泉香はビクンと体を震わせ俺の元に走ってきた。
「え? ええ? ちょ、おま、待てって!」
そのまま泉香はダイビングヘッドまがいの抱きつきをしてきた。
「げぇっ!」
泉香のいきなりの攻撃に俺は対処できずそのまま倒れる。
な、何なんだ? 俺が何をしたっていうんだよ。
「助けて……助けてよぉ」
一言言うたびに俺を抱きしめる泉香の手の力が強くなる。
た、助ける? 何を何から?
そんなやり取りをしていると家のチャイムが鳴った。
「また、来たよぉ」
泉香の声が泣き声に変わった。そうか、チャイムはコイツにとって悪夢なんだろうな。警察かもしれないから。俺がいないときチャイムには出られない。そもそも顔を見せるということはコイツにとって自殺行為なのかもしれないな。
「大丈夫だ。警察だったとしても俺が追い払ってやるから」
そんなかっこいいことを言っている理由は簡単だ。さっきから泉香のよく育った胸が当たっており、しかも泉香の長めのショートから香る甘い香りが俺の理性をどことなく砕こうとしていたからだ。
「うん。わかったよ。わかった」
そう言って手で涙を拭きながら俺から離れていった。
俺は一瞬後悔したがチャイムがその後悔をなぎ払ってくれた。
「はいはい。今出ますよーっと」
俺が玄関を開けるとそこには祈雨がいた。
「なんだ。祈雨か」
俺は安堵し息を吐く。
「何さ。私じゃ悪いの?」
「いやいや、そういうわけじゃない。で? どうしたんだよこんな時間に」
祈雨足をもじもじさせ恥ずかしがっている。
クッ。こいつ。可愛さを追求した動きをしやがって。か、可愛いじゃないか!
「え、えっと。さっき帰ったら家が燃えてて住むところなくしちゃった♪」
は?
「家が萌えてて住めない?」
「たぶん悠が考えてるもえてるじゃないと思うよ?」
ああ、そっちですか。
「って、ええ!? 家が燃えていた!?」
「うん。反応遅いね」
な、なんと。で、俺んちにきたということか。ん、待てよ? そこから出される答えはまさか……。
「だから、私をここに住まわせてもらえないかな?」
ほらきた! だと思ったよ!
「だめ?」
祈雨が上目遣いで聞いて来る。
「……俺リア充になれるかもしれん」
ってそうじゃないだろ俺ぇぇぇぇぇぇ!!
「お、お前の親は?」
「え? ああ、お父さんたちならビジネスホテルに行くって。私は悠と既成事実を作ってこいって言われたけど。ねぇ、既成事実って何?」
祈雨パパナイス! 俺もその気で行かせてもらいます!
「ねえ、お菓子はないんですかぁ?」
中から白虎の声が聞こえた。
「悠君、警察だった?」
部屋の奥から顔を出した泉香。
俺? 冷や汗をかきながら言葉を失ってますが何か?
「悠、この惨状は何かな?」
うん。祈雨さんが怖いです。
「え、ええーっと。とりあえず上がってく?」
俺は冷や汗で水たまりか出来上がりながらも苦笑いをしながら部屋にあげようかと試みることにした。
「うん。じっくりとこの惨状を説明してもらわなきゃね」
「……はい」
世界最強に勝てるのはきっとアニメキャラだけだ。
俺はそうじゃない。よってこの状況で取る方法はOKをいうだけだった。
「おーかーしー!」
「誰だったの?」
頼むから静かにしてくれませんかね!?
「ふふん♪」
廊下に響く祈雨の鼻歌に俺は怯えながら今日を生きることを決めた。
次回予告
「へぇー、悠はそういう行為が好きなんだ」
「お前たちはイベントシーンを壊すことしかしないのか!」
「悠君。大好きだよ」
では、次回