最終回 俺、前からリア充でしたね
悠 「うぅ、皆さん。ありがとう!」
泉香 「な、なんで泣いてるの?」
俺、前からリア充してましたね
私の大切な人が行ってしまった。
命懸けで私を守ってくれた人に私は何もできなかった。
私はその場に崩れ落ち手を着く。
「なんで……なんであんなこと言うの? 悠君以外に素敵な人なんていなよ。いなんだよぉ」
感情が漏れ出す。
それと同時に涙が顔をぐしゃぐしゃに変えていく。
「悠。なんで……」
「悠様……」
みんな私と同じ意見みたいだ。
それから数分後、祈雨ちゃんちの親が迎えに来てくれた。
だけどそれに私は乗れなかった。
「私、乗れない」
「え? なんでだい?」
親御さんが聞き返す。
「私の家はここだから。だから、乗れない」
私は車にかけていた足を下ろす。
「ごめんね、祈雨ちゃんたちだけで行って。私は悠君が戻ってくるまで待ってる」
そうだ。私にはそれくらいしかできない。
私を守ってくれた彼を。私が初めて好きになった彼を。最後の最後まで自分のことより私なんかのことを考えてくれた彼を。私は待つことしかできない。
「私もこれには乗れないのです。私も悠様に拾われた身。恩義を返しておりません。行くならば祈雨さんだけで――」
「何言ってんのさ。今から私たちはあのバカを連れ戻しに行くのさ。さっさと乗らないと悠は私のものにしちゃうのさ」
考え込んでいた私たちに祈雨は微笑み言い放つ。
「え? でも――」
「悠の考えていることなんて関係ないのさ。要は私たちがどう思っているか、なのさ」
それは祈雨ちゃんが家を飛び出した時に悠君が叫んだ言葉だった。
そうだ。私だってあの時言ったではないか。諦めたらいけないと。
「そういうことなら……乗ろうかな?」
私は笑みを取り戻し車に乗り込んだ。
今行くよ。悠君。
現在位置は空港の内部。所謂休憩場所に定められているところだ。
コンディションは……言うまでもなく最悪だ。
「そんな不満そうな顔をするな。なーに、あっちに行けば友達の――」
「うぜぇ」
俺はオヤジの言葉を一言で翻弄する。
俺は椅子に座って発射時間を待つ。
「あの子たちには悪いことをした。そう思っているな?」
ああ、そうだよ。だからなんだよ。
オヤジは俺の顔を見てニヤニヤしている。
「あと、十五分かな?」
オヤジは意味深なことを言う。
出発まではあと三十分以上ある。なら、オヤジが言った十五分って何なんだ?
まあ、そんなのもう俺には関係ないか。
俺は溜め息を着き買ってもらったコーヒーに口をつける。
うん。苦い。
それから俺はやることもなく時間を過ごした。
理不尽だ。なんたって俺はいつもこうなるんだ。俺はただ二次元の女のと話をしていればそれでよかったんだ。
……いや、訂正。祈雨、白虎、和羽、そして泉香。五人で過ごすのがよかった。
みんな確かにどこかオカシイ。俺も含めてみんながオカシイ。
でも、いや、だからこそそんな生活が楽しかったんだ。
普通の生活はただ淡々と時間は進む。だがしかし、あいつらとなら俺は楽しい生活を遅れたのかもしれん。
いや、実際楽しかった。
この頃の生活は活き活きとしてとても新鮮な毎日だった。
本当に大切なものは無くしてから気づくとは先人も言ったものだ。
まさにそれだ。今の俺の状況は。
ああ、もっと大切にすればよかった。
「そろそろだな」
オヤジがニヤつき空港のドアを見る。
俺もそれに釣られて見た。そこにはあいつらがいた。
さっき、最低な別れ方をしてやったのになんであいつらがいるんだよ。
そこには祈雨、白虎、和羽、泉香。誰ひとり欠けずに空港まで来ていた。
「悠君!」
泉香が俺に気づき走ってくる。
――来るな。別れが辛くなるだけだ。
だが、俺の願いも虚しく泉香は走りをやめない。
――頼む。来ないでくれ。俺はお前たちとは仲のいい友達でいたいんだ。
俺は天を仰ぐがそれは神様には無視された。
「悠、君。やっぱり、ダメだよ……行っちゃ、ダメだよ」
息を切らして泉香が言う。
ああ、なんでだよ。なんで来たんだよ。
「俺は、アメリカに向かう。これは俺が望んだことだ」
俺は言い切りそっぽを向く。
「違う、違うよ……」
泉香は息を整えて俺をまっすぐ見て言う。
「悠君はそんなの望んでなんかいないよ」
そう言って泉香は俺に抱きつきてきた。
俺は俺の本心を暴露されたことに動揺して動けない。
「お、俺は……」
「我慢なんて悠らしくないのさ」
幼馴染の祈雨はニッと笑い言う。
「そうですよ! それに悠様にはまだ返しきれていない恩義があります。だから行かないでください」
なんだよ。みんな自分勝手に言いやがって。
「なんで、なんで来たんだよ」
俺は放心状態でやっと出た声で問う。
「別に悠のために来たんじゃないのさ。私たちのためにここに来たのさ。後悔は間違ってもしたくなかったからさ」
「そうですよ。私たちはこのまま悠様を行かせたらきっと後悔します。だからです」
「私は、私は悠君に守られた。家族を失った私を、どこの誰とも分からない私を悠君は拾ってくれた。恩返しをさせないでどこか言っちゃうの? 悠君」
泉香は俺に抱きついたまま上を見て言う。
ああ、俺は間違っていたのか。
みんなと少しでも距離を取れば嫌いになってくれると思ったのに間違えたのか。
俺は最悪の失敗をしたらしい。
このままじゃ俺は……最高のエンドを迎えられそうだ。
「お、お前ら、ホント……ホントに、バカ、だなぁ……」
俺はずっと耐えていた涙をすでに流して顔がぐしゃぐしゃだ。
だけど、涙が止まらない。
頑張って止めようと考えた。実行した。だけど止まってはくれなかった。
「その涙が悠君の望んだものだよ」
ああ、俺は行きたくないのか。
自分が認められた。だけど、俺はもっと前から人に認められていたんだ。
この、目の前にいる少女たちに俺は認められていたんだ。
「お、俺は行きたくない。だけど、親には逆らえない」
俺は涙を拭い振り向く。
そこにはオヤジがハンカチを投げて立っていた。
俺は投げられたハンカチをキャッチするとオヤジの方を向く。
するとオヤジが笑い出して俺の肩を叩く。
「はっはっは! お前はいい女を作ったな。いや、まだ友達か。まあ、どっちでもいい! それより後悔は無いな? アメリカに行けばお前は確実に自由な人生が遅れる。お前は俺の子供だ。きっとほかの奴らと合わずつまらない人生を送ってきただろう。ここで行かなければお前はそこに逆戻りだ。それでもいいんだな?」
オヤジはまっすぐに俺を見つめ俺の選択を待つ。
ああ、これはギャルゲーだ。
今、俺には選択肢が出されてる。
1、みんなを捨ててアメリカに行き最高の人生を過ごすか。
2、みんなとここに残り最高ではないが他では体験できないほどの危機感溢れる生活を送るか。
俺は迷わなかった。
「俺は二番。みんなと一緒にいるよ、オヤジ。確かに現実は理不尽で退屈だ。だけど、それはアメリカに行ったからといって変わるものじゃない。たぶん、これは俺のただの考えだがそれを変えるにはこの四人なら変えられるかもしれないんだ。だから、俺はここに残る。悔いはない。俺はこいつらと人生を歩んでいこうと思う」
俺はオヤジに言う。
オヤジは最初からわかっていたかのように肩を竦めると明後日の方に歩いて行った。
「ああ、そうだ。悠」
オヤジは立ち止まり俺の名を呼んだ。
「なんだよ」
俺は気恥ずかしくなりそっぽを向く。
「誕生日、オメデト……それだけだ。じゃあ、元気でな」
そう言い残しオヤジは去っていった。
そうだった。今日は俺の十七回目の誕生日だった。
俺はポケットからゲームを取り出すために手を入れるとそこにはゲームではなく五枚のチケットと紙が入っていた。
『追伸 悠、これは目に毒だ。預かっておく。その代わり可愛い彼女を水族館にでも連れてってやんな』
そう手紙には書かれていた。
ったく、あのバカオヤジ。
気づけばまた俺は涙していた。
これもあんたの筋書き通りかよ。
俺は苦笑しみんなの方に振り向いた。
「さあ、迷惑かけたお詫びだ。水族館にでも行こうじゃないか!」
俺は満面の笑みを浮かべみんなに言い放つ。
「そうそう、悠はそうでなくっちゃ」
「悠様! そこは美味しいお菓子ありますか?」
「やったァ! おにぃとデートだぁ」
「悠君、大好き!」
そう言って多種多様の反応を見せるみんな。だが、その顔にはもう悲しみの感情はなかった。
そして、俺たちは走り出す。
「目的地はここから三十キロの水族館だ!」
俺の後ろをみんながついてくる。
そんな光景が俺には新鮮だった。
朝起きればパソコンを開いて画面に挨拶をしていた俺がひょんなことから可愛い少女と出会い。
いつも登校ギリギリまでゲームをしていた俺がひょんなことから幼馴染と一緒に住むことになったり。
学校ではほとんど目立たなかった俺がひょんなことから妖怪と一緒に住むことになったこの頃。
妹はブラコンでめんどくさいし、朝は泉香に起こされるという毎日。
いつしか、俺の日常は変化していて毎日が新しく、そして新鮮だった。
そんな生活をさせてくれたみんなには感謝してもしきれない。
「ありがとうな。みんな」
俺は走りながらそう言っていた。
「ありがとうなのは私たちなのさ」
「そうだよ。ありがとう悠君。君のおかげで私は人の優しさを思い出せたよ」
「そうです! ありがとうなのです!」
「え? ええ? わ、私もとりあえず、ありがとう!」
ははっと俺は笑いまた前を向きだして走り出す。
ああ、未来に何があろうともこの記憶だけは忘れないでいよう。
この素晴らしい記憶は後世にも受け継いでいってもらおう。
俺はそう思いながら目的地である水族館に向かうのであった。
ええ、この度はこの『俺、今日からリア充します ――ただし、相手はどこかオカシイやつら――』を読んでいただきありがとうございました。
皆様のおかげで最後まで書ききる事ができました。
次回作はまだ考えていませんができるだけ早く書きたいと思います。
今度はこのネームではなく『ヲサダここから』で書きたいと思いますのでどうぞよろしくお願い致します。
最後にこの作品があなたの記憶の一部になれるように祈っております。




