第十一話 緊急招集、集まれオタ道を持った同士よ! え? 全く違う?
悠 「次回最終回ですけど、何か?」
緊急招集、集まれオタ道を持った同士よ! え? 全く違う?
俺は部屋に戻り寝ようとベットに横になるとケータイに着信があったことに気づく。
「こ、これは……」
メールを開いて俺は驚いた。
それは縁を切った親からのものだった。
『赤の他人へ。いきなりですがオーストラリアに来なさい』
「ホントに突然だなぁ、おい!」
メールにはその一文だけだった。
なんだよ。いきなりメールでオーストラリアって。
困惑しているとケータイが鳴り始めた。
相手は……親だ。
「は――」
『やぁやぁ、赤の他人君。さっきのメールはびっくりしたかな?』
「したよ! 大いにさせてもらいましたよ!」
残念ながらこのテンションが我が親なのだ。
『オーストラリアは嘘だ』
「だろうな!」
でなきゃ困るよ!
「で? ホントはなんだよ」
『いやぁ、ちょっとね。借金作っちゃった♪』
「はぁぁああああ!?」
借金ってなんですか!?
『あはは~。カジノにハマっちゃならんな~』
「……」
アホだ。なんで俺の親はこんなにアホなんだ。
俺はその場で頭を抱えた。
借金、そこから導かれるのただ一つ……。
『そこで、君には私たちの保証人になってもらった。では、健闘を祈らせてもらおう』
ですよねぇ~
ああ、神様。なんで俺にばかりこんな仕打ちをするのですか。
勝手に電話してきておいて勝手に切った親はたぶんもう夜逃げしたのだろう。
俺ばかりでなく、和羽も捨ててどこぞのお国に逃げたのだ。
「こうしちゃいられない。こっちも何か――」
ピンポーン。
インターフォンが鳴った。
ああ、オワタ。
きっとそっち系の業者だ。
「は~い」
和羽の声が聞こえた。まずい! このままじゃ――
「は~い。怖いおじさんですよ~」
どこにそんなことを言う人がいるんですか!?
俺は急いで階段を駆け下り玄関に向かう。
「おい! 妹に何かしたら――」
「あ、おにぃ。お父さんたちがきたよ~」
へ?
そこにいたのはさっきまで俺と話していた親父がいた。
「おお、悠。成長したなぁ」
そう言ってオヤジは俺の頭を撫でる。
「それに色っぽい女の子を何人も連れて。何とも許せないなぁ」
俺はその場で固まり状況判断ができないでいた。
「な、なんで。ここにいるんだよ……」
オヤジはこっちに向き直り静かに言った。
「お前にはやってもらわなくちゃならんことがあるからだ」
何を言っているのか一瞬わからなかった。
「縁を切った俺にまだ未練でもあんのかよ」
俺はオヤジを睨む。
「ああ、未練だらだらだ。さっさと来い。もうここには戻ってこないからな」
なんか、大事なことをさらっと流したよね!?
「どういうことだよ! 勝手に来て勝手に連れてってもう帰ってこない? ふざけんな!」
俺は大声を上げた。
何がどうなったらそんなの理解できるやつがいるんだよ!
「まあまあ、落ち着け息子よ」
「俺はあんたの息子じゃない!」
「なら、赤の他人よ。お前の命は俺が握っていると言っても過言じゃない」
何を言っているんだ?
「お前のところに入るはずのお金は全て親のものとさせてもらった。お金がなくては生きていけまい。ちなみに祈雨ちゃんのおうちには連絡が行っていてもうすぐ迎えが来る。他の子はみんなそっちで引き取ってくれるそうだ」
何を勝手に決めてんだよ!
「何の権限でそんなことを――」
「親の権限だ」
言いきられた。言い切られてしまった。
俺は何も返せない。
親だって? 縁を切ったのに今更なんで俺の邪魔をすんだよ。
「さ、行くぞ。時間はもうないんだ」
俺はオヤジに手を引かれて外に出る。
何もできないのか? 俺はただの子供なのか?
「待ってよ」
声を上げたのは泉香だ。その目は信じられないようなものを見る目だった。
「ん? 君は?」
オヤジが泉香を睨む。威厳と恐怖を持った目で睨まれているにもかかわらず泉香は負けずに睨み返す。
「悠君を勝手に連れて行かないで。その人に私はまだ何もお返しができてない。だから――」
「君は一体、悠の何なんだ? 彼女か? 妻か? 親友か? それとも――」
赤の他人なのか? そうオヤジの言葉が玄関に静かに響く。
「わ、私は……」
「すぐに答えられないのならば親子の話に口を出さないでもらおう。さ、行くぞ」
そう言い切ってオヤジは再び手を引く。
俺はやられるがまま引っ張られた。
それに泉香は諦めきれずにいたのか俺の裾を強く掴む。
「悠君、これでさよならなの?」
寂しそうな顔をこちらに向ける。
「……」
俺は何も言えない。言う権利がない。言いたいのに俺は俺の手を引く人物に遮られる。俺には何もできないのだ。
「悠様! どういう事なんですか!」
俺が黙っていると白虎が叫んできた。
「悠様! 私たちは捨てられるのですか! もう、私たちには興味はないのですか!」
必死に叫ぶ白虎。その姿はおもちゃを買ってくれと訴える幼児にしか見えない。
「何か言ってください! 悠様!」
一瞬、空気が静かになる。
「……ごめん」
俺はそれだけ言って玄関を出た。
一瞬見えたみんなの表情は暗く光を失ったものだった。
だが、俺には何もできない。
諦め切った俺の背中に暖かいものが当たる。
「悠君……ダメだよ。行っちゃ嫌だよ」
泉香が抱きついているようだ。
声が震えている。きっと泣いているのだろう。
そう感じた俺は不意に目に手を当てるとそこには冷たい水滴が目から頬に向かって流れていた。
「悠君はそれで幸せなの? ねぇ、答えてよぉ」
こらえきれなくなったらしく俺の背中に顔をくっつける泉香。
「泉香、よく聞け。これから行くところはとってもいい人たちのところだ。俺なんか忘れてもっと素晴らしい人を見つけろ」
そう言い残して泉香を振り切り俺はオヤジの車に乗り込んだ。
瞬間、俺の顔が涙で崩れる。
俺は、俺は絶対にやっちゃいけないことをした。
その気持ちで俺の中はいっぱいになる。
「悠、お前にはやってもらわなくちゃいけないことがある。それはさっき話したな?」
オヤジは空気も読まず話しかける。
「お前はアメリカの有名な大学に認められたんだ。だから、お前にはアメリカに行ってもらう」
ふざけんなよ。
「口答えは許さんぞ? お前は――」
「ふざけんなよ! あんたとは縁を切って――」
「ふざけているのは貴様だ!」
オヤジの威厳のこもった叫びは車の中に反響する。
「これは母さんと和羽との話し合いで決めたことだ。貴様はその会議に参加していなかった故に貴様に反対意見は許さん」
言い切り運転に目を向けたオヤジ。
俺は絶句した。
なんだよ。それ。俺は全くの蚊帳の外じゃないかよ。
「クソッ! なんでオヤジに俺の人生を決められなくちゃならないんだよ!」
俺はドアを力いっぱい叩いたが残ったのは手の痛みだけだった。
クソッ、イテェ。
「今から、空港に向かう。文句はないな?」
あったって取り合うつもりがないのによく言うぜ。
俺は無言で頷き車に身を任せた。
ああ、後でみんなに説明しなくちゃな。それと謝らなくちゃ。
俺は車の窓から外を見た。
いつの間にか降っていた雨でアスファルトは真っ黒になり、歩道を歩く人々は傘をさし雨を避ける。俺はそんな光景を見ながらもう、どうでもいいと目を外した。
車に流れていた『ハレルヤ』という曲を聞きながら俺は再び思い出した。
――ああ、現実=理不尽ってこと忘れていたよ。
ははっと苦笑し俺は眠りに着いた。
次回予告
「悠君はそんなの望んでなんかいないよ」
「別に悠のために来たんじゃないのさ。私たちのためにここに来たのさ。後悔は間違ってもしたくなかったからさ」
「お、お前ら、ホント……ホントに、バカ、だなぁ……」
では、次回最終回




