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第十話 事件? 茶飯事だよ!

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事件? 茶飯事だよ!


俺たちはまず祈雨を助けるにもなんで許嫁になったのかを知るため祈雨の親がいるホテルまで向かった。

「おお、悠君じゃないか! どうしたんだい?」

いつ見ても元気だよなぁ、この人。

この人は祈雨の父親だ。

「許嫁の件で訪ねてきました」

俺は作り笑いで答えた。

寸前で祈雨の父親は顔を強ばらせる。

「あはは、悠君は作り笑いが下手だね」

「ごまかすのが下手なのも変わりませんね」

ちなみに俺とこの人はかなり仲がいいのだ。

「後ろの方は泉香さんと白虎ちゃんだね? まあ、長話になるかもしれないから中に入りなさい」

俺たちは指示に従い中にお邪魔させてもらった。

流石、高級マンション。どこもかしこも綺麗だ。

そして、広い。

言ってなかったが祈雨はご令嬢なのだ。しかも日本きって金持ちの。

「許嫁の件だったね。これは君の親御さんとの話で決めていたことだんだ」

寂しそうに語る祈雨の父親。

俺の親は死んだわけではない。ちゃんと生きてはいるんだが俺はあんまり会いたくない。

まあ、そんなことは置いておいて親同士の許嫁か。

なんか、ゲームみたいだ。

「祈雨は小さい頃からそのことを知っていたんだ。だけど君は違った。君の親御さんはそのことを内緒にしていたんだ。なぜだか、わかるかい?」

まあ、おおよそ、驚く顔が見たかっただろう。

「君の考えていることとたぶん同じだ。君の親御さんはユーモアがあって面白いのだがこんな大事な話を黙っているなんて思わなかった」

そこが俺の親です。誠にすみませんでした。

「祈雨はこないだまで許嫁に対して喜んでいたんだ。だけど、昨日だったかな。その話を断られたんだ」

そうか、祈雨はその話をするために親に会いに行っていたのか。

「その理由がきっと後ろの二人だと思う」

祈雨の父親は静かに泉香たちを見る。

しかし、睨んでいるのではない。優しさを持った目で見ている。

「事情は分かりました。許嫁の件了承しましょう。親の言うことを聞くのが子供の役目ですからね」

俺はそう言い残し部屋を出ようと後ろを向く。

「君はお金が目的じゃないのだね」

俺はその言葉で止まった。

お金?

「あの子に近づくのは私たちの財産を狙ったやつらばかりだ。しかし、君といい君の親といいなんでそんなにお金に貪欲でないのだね?」

お金に貪欲でないというのは違う。俺はできることならお金は欲しいさ。

だけど、それ以上にお金目的で人付き合いをするのが許せないんだ。

「俺はお金を持っている持っていないで人の価値を決めませんからね。お金を持ってなくても面白い奴はいるし、お金を持っている奴にめんどくさい奴はいる。俺はお金でなくその人の性格で決めているんですよ。俺は祈雨が好きですよ? あいつは面白い。こんな俺でも一緒にいてくれるんだから。それにこいつらだってそうです」

俺は泉香と白虎を前に押し出す。

「こいつらは普通じゃありません。それは祈雨だって同じ。だけど、こいつらは俺を認めてくれた。一緒にいてくれるんですよ。こんな俺なんかの傍にね」

俺はニッと笑い祈雨の父親に向かって堂々と言い放つ。

「だから、許嫁の件がなくても俺は祈雨を一生大事にしますよ。あいつは俺の生涯で初めての友達でありたった一人の幼馴染なんですから」

俺は言ってからホテルの一室を出る。

そこで祈雨の父親は飛び出てきて言う。

「あ、ありがとう。君のような人が祈雨の幼馴染で本当によかった。これからも祈雨をよろしく頼むよ」

俺は無言で頷きホテルを後にした。

「む~。私には言ってくれないんだぁ~」

泉香がムッとした顔で俺に甘えてきた。

「言ったろ? お前らも変わらず大好きだってさ」

俺は言ってから恥ずかしくなり顔を逸らす。

泉香はなんだか大喜びで俺に抱きついてきた。

それに続いて白虎も俺に抱きついてくる。

「お、おい。抱きつくなぁ!」

俺は必死でもがくが悪あがきだった。

祈雨がいるところはなんとなく分かる。あいつは物事が嫌になったとき決まって池や湖、海などあるところに行く。

ここから近いところは三箇所。その中にはあいつと俺の初めて出会ったところがあった。

「きっとここだな」

俺はケータイで調べていた地図を閉じケータイをしまう。

「悠君」

「なんだよ」

「私も大好きだってこと覚えておいてよ?」

なんたってこんなところでいうのかねぇ。

恥ずかしくて顔が真っ赤になっちまうじゃないかよ。

「わ、私もですよ!」

白虎が負けじと言う。

その姿はまるで幼児だ。

ああ、きっとこんなところ近所の人に見られたら警察にまた御用になるんだろうなぁ。

だが、今はそんなことをしている暇はない。

俺は泉香と白虎の頭を撫でてその場を制す。

「さあ、行こう。祈雨を助けに」


そこは広い池だ。

伝説の龍が住むとされ立ち入り禁止になっているのだが子供の俺はそこで釣れる魚にしか目をくれずその池に入っていった。

そこには人の手が入ってないせいもあって雑草だらけだった。

『ここは立ち入り禁止だよ?』

俺が入ろうとするとひとりの少女の声がする。

『君は?』

俺が聞くと少女は腰に手を当て偉そうに言う。

『私は咲実祈雨なのさ。この世界で最強の幼稚園児なのさ。そっちは?』

『俺は海道悠。これから魚を釣ろうと思うんだけどどう?』

『いいのさ? 私が行くと魚釣れないかもしれないのさ』

『はは、別にいいよ。ほら行こう』

そう言って俺は手を差し伸べる。

その手を少女は嬉しそうに取りこっちにくる。

それが俺と祈雨の出会いだ。ちなみにその日魚は本当に釣れなかった。

「やっぱりここにいたのか」

俺の目の前では池に石を投げ込んでいる祈雨がいた。

「なんでわかったのさ」

祈雨は泣いたあとのように掠れた声で聞き返す。

「そりゃあ、幼馴染だからな」

俺は腰に手を当てて偉そうに言う。

祈雨は俺を睨み威嚇する。

「なんで来たのさ! 私を一人にしてよ!」

静かな森にその声は響き渡る。

俺は無表情でそれを見る。

「やだね。お前を一人にはさせない。これまでもこれからも」

俺は祈雨に近付く。

俺は顔面に激痛が走る。

「私に近付くたびに蹴るから」

あはは、見えないよ蹴りが。

確かに俺が一歩近付くたびに俺は蹴られた。致命傷を外されながら。

「なんで来るのさ! 私は、私は!」

「許嫁でもいいぞ? 俺は大いに構わん」

俺は祈雨の言葉を遮るように言い放つ。なおも攻撃は続く。

「私が許嫁でもいいの?」

そんな質問をしてくる祈雨。

はん! そんな質問こそ馬鹿らしい。

「ああ、いいよ。お前が許嫁でいいよ」

そこで俺は祈雨を抱きしめた。力いっぱい抱きしめた。

「ふざけないでよ!」

祈雨からのゼロ距離のナックルが俺を襲う。

うぅ、体中がいたい。だけど、祈雨はもっと痛いんだ。

俺が我慢しなくてどうする!

「ふざけてんのはお前だ!」

俺は祈雨を怒鳴りつける。

そして、優しく頭を撫でた。

「心配したんだぞ? お前いきなり出て行くとか言い出すしさ」

祈雨は俺に抱きつき泣き出した。

「だって、私だけズルしたみたいなんだもんさ。みんな一生懸命自力で悠を取り合ってるのに私だけ許嫁なんていう地位をもらってズルしてるみたいなんだもん! だから、私――」

「諦めるの? なら、悠君は私が全部もらっちゃうけどいいよね?」

不意に泉香が言う。その声は静かで冷静だ、一つの刃物さえも思わせるほどに尖っておりそれが祈雨を動かした。

「それはダメなのさ! 私だって悠のこと……」

「なら、諦めずに粘りなさいよ。そんなに私たちは弱く見えるの? 許嫁なんて飾りでしかないよ? 私たちはそんなものに臆したりしない。欲しいものは力ずくで手に入れるよ」

そう言い放ち泉香は静かに祈雨を見つめる。

「でも、でも、私が許嫁になればみんなの取り合いは確実に――」

「現実なんて知るか! お前の親も、現実も、関係ない! 要はお前がどう考えてるかってことだけだ!」

俺は祈雨に二度目の怒鳴りを上げ黙らせる。

「お前はどう思ってるんだ? 泉香じゃないが許嫁なんて飾りだ。このままじゃ俺は泉香たちのものになっちまうかもしれないぞ?」

――それでもいいのかよ。

そう言うと祈雨は立ち上がり涙を拭き俺を見る。

「私は悠が好きなのさ。だから――」

――一緒にいてよ

俺はニッと笑いその場に立つ。

「もう、あの時みたい」

祈雨は真っ赤な目で言う。

「なら、魚釣りでも行くか?」

「私が行ったら魚釣れないのさ」

「それでも構わんさ。ほら行こう」

俺は手を差し伸べる。

祈雨は嬉しそうに手を取りこっちに来る。

「「「おかえり」」」

「うん。ただいまなのさ」

そう言って俺たちはわいわいと魚釣りをして家に帰った。

たぶん、これで良かったんだ。これで俺の理想は守られた気がする。

その夜俺のケータイに一通のメールは入った。

次回予告

「こ、これは……?」

「悠君、これでさよならなの?」

「悠様! どういう事なんですか!」


では、次回

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