3話
こんな駄文でもよろしくお願いします。
「それじゃ、ちょっと探してみるよ」
今回、祭が襲撃した人間を探す為に使う魔法は、正確には魔法ではない。
それどころか祭は、魔法を使うことは出来ない。
無限の魔力を有しているが、異世界の人間である祭には、魔法を使うことができなかった。
その為祭は、魔力を魔法として行使するのではなく、魔力を魔力として行使する。
魔力は、単純な力として変換可能。
祭は魔力を『固体』『液体』『気体』の3つのどれかに変換して行使するのだ。
今回使うのは『気体』。範囲は、半径10km。
空気中に放たれた祭の魔力は、攻撃や防御、偵察等多種多様の性能を持っている。
大人数で襲ったのなら見つけるのは容易かった。
「おっ!いたいた。沢山の武器と血の匂いをプンプンさせてる男の集団が!連れてる人は皆、女の人だしこれは確定だね。距離は・・・ここから東に2kmの山道。急ごっ!」
「はい」
もう一度ルスクに飛び乗り、飛び立つ。
「ガハハハ!頭領!今回は上物だかりですぜ!」「先に俺らで頂いちまいましょうよ!」
ざっと30人程の男の集団では下品な笑いが響く。
「ダメだ。こいつらは大事な商品だからな。貴族共は、処女じゃないと買ってくれないぞ」
頭領と呼ばれる男は、憮然とした態度でそんな事を言った。
その後ろでは、多くの鎖に繋がれた女性が虚ろな目でトボトボと集団に連れて行かれていく。
もう諦めた様子の女性達の目からは生気が感じられず、何の抵抗もしていなかった。
前方では、大笑いしながら男達が歩いている。
しかし次の瞬間。
その男達は一気に消し飛んだ。
「お母様、やり過ぎです。後ろの女性に当たったらどうするんですか・・・?」
背中に乗る、紫一色の2m程の棒を持った祭にルスクは、注意する。
「私はそんなヘマしないから大丈夫だよ」
祭は上空でルスクの背に乗りながら、『固体』になった魔力の棒を振った。
祭はこれを勝手に魔剣と呼んでいるが魔剣を振ると魔力を放出し、対象を攻撃する事が可能だ。
『気体』の攻撃と違う所は、『気体』で攻撃すると無差別攻撃になってしまい、後ろの女性にも当たってしまうからだ。
「取り敢えずさ、降りてみようよ。見た所、女の人の数は5人。連れて行けるんなら連れて行きたいしさ」
「連れて行くって旅にですか?人間を?」
ルスクは、親を人間に殺されたため基本的に祭以外の人間を敵視している。
その為、今回の祭の提案には、ルスクも眉を寄せた。
「うん、そうだよ。ルスクにもいい経験になると思うしね。大丈夫、ルスクを傷つけた人間だけが人間じゃないから。優しい人間も一杯いるよ?」
「でも・・・・・・人間は嫌いです・・・」
「それは私の事も嫌いって意味?」
「ッ!ちっ違います!お母様は大好きです!」
「それなら私以外の人間も好きになれるよ。頑張ってみなさい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
ルスクは渋々承諾した。
そして呆然と男達がいた場所を見つめる女性達の元へ降り立つ。
「こんにちはー!」
『ッ!?』
空から降ってきたいきなりの挨拶に女性達は、ビクッと反応する。
「単刀直入に聞くけどさ、皆は私と来る?それとも崩壊した村に帰る?」
女性達は、ただ呆然と祭を見つめる。
「私と一緒にくるなら今日から家族だし、来ないなら来ないでいい。私は強制しないよ?」
「・・・あの」
女性の中で一番小柄な肩ぐらいまでの茶髪の子がおどおどしながら手を上げた。
「ん?何?」
「・・・この人達から救ってくれたのはあなた?」
「うん、そうだよ。私が皆、殺した」
「・・・そう」
そしてその女性は考え込んだ。
「・・・行く」
「え?」
「・・・どうせお母さんもお父さんも殺された。それならあなたと一緒に行く」
「そう!なら今日から君は家族だ!」
「・・・うん」
「で、他はどうする?さっきも言ったけど私は強制しないよ?」
そう言うとゾロゾロとその女性達はお礼をしてその場から去っていった。
祭はルスクと共にその女性の元に降り立つ。
「自己紹介をするね。私は祭、この子がルスク。君のお姉さんに当たるかな」
「よっよろしくお願いします」
笑顔を引きつらせてルスクが挨拶をする。
「・・・あたしはミディア。歳は16」
「へー、家の家族じゃ最年少だね。ルスク」
「お母様、初の人間でもあります」
「ルスク、私は人間だよ?」
グゥと拳を握りながらルスクに迫る。
「取り敢えずさ、聞きた事は山ほどあるけど立ち話もなんだからルスクに乗りながらでもいいよね?」
「にっ人間を乗せるのですか!?」
「そうだよ、駄目?」
「・・・分かりました」
少し頬を膨らませながらルスクは2人を背に乗せる。
展開は早めで行こうと思います。




