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番外編 ロウ、祭との出会い

オレは、物心つく前から暗殺やスパイの技術をどこかの組織に教えこまれた。


場所は覚えていない。


ただ、その組織は『世界を裏から操る』なんて事を本気で実行しようとする、オレ以上のバカな所だった事を覚えている。


毎日のように繰り返される気の狂いそうな訓練と感情を殺し、心を壊し、個性を潰す教育で、オレと同じように拾われたり、攫われたりしてきた子供は、何人も死んだ。


オレは血反吐の吐くような訓練を受けながら、毎日を生きた。





何歳の事だったか?

オレに初の仕事が来た。


その仕事は暗殺。


どこの国だったか、そこの要人を殺してこいと言われた。


ダークエルフは体の成長が遅いから、多分子供の姿の方が都合がいいのだろう。


そしてオレはその国に潜入し、実際にその人物を殺した。



なにも感じなかった。



その時、オレは壊れているのだと実感した。







ついにその組織が、どこかの国に潰される日が来た。


その国はこの組織の場所を嗅ぎつけたらしく、大量の騎士やギルドの人間で組織のある建物から見える景色は埋め尽くされていた。


組織の連中に忠誠心等ないので、基本的に全員が散り散りに逃げた。





逃げて、逃げて、逃げ続けた。


あとには何人もの人間が追ってくる。


だが、魔法を使ったオレに追いつけるわけでもなく、また一人、また一人と諦めていく。






どれくらい逃げただろうか。


オレは知らずに迷い込んだ森で行き倒れた。


チュンチュンと小鳥のさえずりが遠くに聞こえていった。


そんな時だ。ハッキリと声が聞こえた。

「どうしたの?」と。


それがお袋だった。


オレは「オレにも分からん」と答えた。

するとお袋は困ったように首を傾げた。


「ねぇー」

しばらくしてお袋はオレに聞いてきた。


「なんで泣いてるの?」そのお袋の言葉にオレは確かめるように手を目にやった。

すると目からは知らずのうちに涙が流れていた。


「なんで・・・だろうなぁ・・・」


涙声でオレは答えた。


「そうか、これが悲しい、なんだな」


やっと出たその答えに更にオレの目からは涙が溢れ落ちる。


「悲しいを知らないの?」

不思議そうな顔でお袋はオレに聞いてきた。



「いや、今、初めて知った。オレは今、悲しんだ・・・な?」


するとオレは何故か笑っていた。

ハハハと言う、苦しまぎれの笑い声がオレの口から漏れた。


「なんで笑ってるの?」と、またしてもお袋はオレに聞いてきた。


オレは「悲しいを知れたから」と答えた。


「クソ・・・もっと、楽しいを、嬉しいを、愛おしいを、知りたかったな・・・」


手で自分の目を覆った。


「なら一緒においで」と少し嬉しそうな声でお袋はオレに声をかけた。

オレはその言葉と同時に気を失ってしまった。


それからの記憶はオレには無い。


気がついたらあの家の中に寝かされていた。

多分あのクソ兄貴辺りがおぶっていったんだと思う。




だが、これだけは言える。


オレは、お袋が差し伸べたあの小さな手をしっかりと、掴んだ。




コレが、オレとお袋の出会いだ。






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