2話
これからもこの駄文をよろしくお願いします。
今回、祭が外に出ようと思った理由は、大きく分けて2つある。
1つ目は、人の世界があの後どうなったのか見てみたくなったから。
600年と言う膨大な時間の中で人がどう進化したのか気になったのだ。
そして最大の理由の2つ目は、あきたから。正直、同じ森で600年も暮らしていれば流石にあきる。
森の動物とは仲良しだし、森に住付く魔物は生き物としての違いを理解しているため2人には襲ってこない。
全く面白みのない生活にもいい加減嫌気がさしてきた。
その為、今回祭は出ることにした。
「ほら、行きますよお母様」
ルスクが龍の姿になると全体の色は青くなり、翼生えた西洋風の姿だ。
ルスクは龍の姿で、まだ小屋の中で用意をしている祭を待つ。
「あっ、待ってよルスク!」
そう言った途端、祭は大きなバッグを肩から下げて小屋から走って出てきた。
そして全長20m程のルスクの背中に飛び乗る。
「それじゃ行きますよ」
「うん♪」
今日の祭はかなり上機嫌だ。
そしてルスクは、大きな翼をはためかせ飛び立つ。
「ルスク、街が見えたら近くで降りてそこから歩いていくよ」
「分かっています」
「あとさ、これから私の事お母様って呼ばないでね」
「なっ何故ですか!?」
「いや・・・だって・・・」
「そうですか・・・私はもうお母様と一緒にいられないのですか・・・。そうですよね・・・親を失った私をここまで育ててくださった事だけでも感謝しきれない・・・。お母様が邪魔だと言うのなら私は何処へでも消えましょう。いままでありがとうございました。私も他の兄妹の様に立派に独り立ちしましょう・・・」
「ちっが――――――う!!!!」
大空に祭の声が響く。
「だから!私の容姿でルスクにお母様なんて呼ばれたら絶対におかしな事になるでしょうが!だからこれから人前では、私がルスクの事をお母さんって呼ぶから!分かった!?」
「なんだ、そんな事ですか。早く言ってくださいよ」
「言う前に勝手に被害妄想をしてたのは誰!?」
全く・・・、と嘆息しながら祭はルスクの背中で横になる。
そしてしばらくすると、ルスクが祭に話しかけた。
「お母様、何やら火の手が上がっていますが・・・?」
「えー、火事?」
前方では、大量の民家が燃えているのが分かった。
「どうでしょう。私が消しましょうか?」
「うん、そうしてあげて」
大半の龍は、『炎龍』と呼ばれている者で火を司る。
が、極稀に『蒼龍』と言う個体が生まれる。
『蒼龍』は水を司り、ルスクは『蒼龍』に属する。
「やっぱり無難に雨でも降らしましょうか。直接水を吐けば早いでしょうけど正体がバレるのは、面相な事になりかねませんからね」
そして空の雲行きが怪しくなる。
次の瞬間、空から大量の大粒の雨が降り始めた。
民家の火は、シューと言う音を立てながら消火されて行く。
「ねぇールスク。折角だし降りてみようよ」
「分かりました、お母様」
ルスクは近くの森に降り立ち、人の姿となる。
「分かってると思うけど私の事は祭って呼ぶんだよ?私はお母さんって呼ぶから」
「分かっています」
祭は、ルスクの手を握った。
ルスクの身長は170cm近くあるため、身長120cmの祭と手を繋ぐと完全に親子そのものだ。
「それじゃお母さん、行こ?」
「はい、マツリ」
小走りで森を出た。
「これは・・・酷いですね・・・」
ルスクは思わず顔を顰める。
村と思われるその場所は、完全に崩壊していた。
地面には、男や老人、子供の血や臓器がぶちまけられ、女の姿は無い。
家の中の備蓄は、無くなっており周囲は、死臭が立ち込めていた。
「そうだね。多分、盗賊とかに襲われたんだろうね。もしくは、敵国の襲撃か」
2人はう~んと、その場で考え込む。
「で、どうします?このまま他の街に行きます?」
「嫌だなぁルスクは。私がほっとくと思う?」
祭は、にぃと笑う。
「ですよね」
2人は、捕らえられたであろう女性を助けに行く事にした。