24話
それから3週間後。
ついに事件は起きた
「なんですか、よってかかってこんな小さな子をいじめて!恥ずかしくないんですか!?」
路地裏で赤色のサイドテールで、背は祭と同じくらいの少女を庇いながら、ルスクは黒いローブ姿の集団に抗議する。
今は祭もミディアもロウも居ない。
3人は、ギルドの依頼で外に出ている。
ルスクだけが、ロウに料理をねだられて買い物をしていたのだ。
4人が泊まっている宿は、部屋も良く、値段も安いが、食事が出ない。
その代わりに厨房を自由に利用できる。
この状況は、十数分前に遡る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「~♪~♪」
ルスクは、鼻歌を歌いながら街を買い物カバン片手に歩いていた。
「すみません、これください」
果物が沢山並んでいる店先で、ルスクはそれを3つほど取り、会計に出す。
そしてそれを受け取り、また街を歩く。
「ひゃっ!」
ルスクは誰かとぶつかり、ぶつかった人物は小さな悲鳴を上げて尻もちをついた。
その人物は祭ほどの少女だった。
「すみません、大丈夫ですか?」
ルスクは笑顔で手を差し伸べる。
が、その少女はその手を取ること無くまた走って行った。
「? なんでしょう?」
そう少女の背中を見ながらルスクは呟いた。
「どけっ!!」
「きゃっ!」
今度は、ルスクが誰かに突き飛ばされた。
「なんなんですか・・・、一体・・・」
ポンポンとロングスカートについた土埃を手で払いながら言った。
突き飛ばした者は集団で、黒いローブを身に纏っている。
その集団はあの少女を追いかけている。
「これは・・・、助けた方がいいです・・・よね?」
誰に同意を求めているのか、疑問形でルスクは言った。
そしてスカートを動きやすいように破き、走りだす。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
で、今に至る。
元々龍は、運動能力が高いので本気で走ればすぐに追いつくことが出来た。
「その化け物を早くこちらに渡せ!」
「何が化物ですか!?こんなに可愛い女の子が化物の筈がないでしょう!そもそもあなた達はなんなんですか!?」
「我々はその化物を連れ戻しに来た者だ!早くそいつを渡さないと貴様も命を落とすことになるぞっ!」
「だから化物ってなんですか!?そもそもあなた達にこの子と渡す道理なんてありません!」
更にルスクは声を荒げる。
「もう、いいよ」
少女は泣きそうな声でルスクに言った。
そして少女は、ルスクの前に出た。
「ありがとうね」
ひどく悲しげな笑顔を浮かべて、ルスクに言い集団の方へ行った。
「さような「嫌ですね」え?」
少女の別れの言葉をルスクは、遮った。
「もしここで見捨てたら、お母様に失望されます」
そう言って、少女の手首を掴み奪い取る。
「行きますよ」
部分的に擬態魔法を解き、背中に大きな青色の翼が展開される。
そして、ルスクは少女を抱えて飛び立った。
「ひっ」
一瞬少女はびっくりしたような声を上げたが、すぐに落ち着いた。
「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
「えっ、あ、はい」
少女はすっかり縮こまってしまっている。
「どこか行くあては在りますか?近くなら送っていきますよ?」
「いや、どこにもないよ」
「それなら少しこのまま空でも飛んでましょうか。しばらくすればあの集団も諦めるでしょう」
そしてルスクは、その場からかなり離れた所まで飛び街から出た。
街から離れた山の中。
少女は、ルスクの横で膝を抱えている。
「多分諦めてくれないと思うよ。あの人達は」
「何故ですか?と言うか化物ってなんですか?」
そう言うと少女は、少し戸惑った顔をした。
「大丈夫です。私も私の家族も似たようなものですから、あなたが何者であろうと受け入れますよ?」
ルスクが言うと少女はまた戸惑った顔をしたが、しばらくして重たい口を開いた。
「龍」
「へ?」
「龍」
「え・・・、は?」
「龍」
「いや、はい、わかりました。龍ですね」
まだ頭が混乱しているが、ルスクはいちを納得した。
「その・・・つまり私と同種と?」
「うん、でもあたしは炎龍だがらあなたとは違う」
「そうなんですか。で、あなたはなんで追われてたんですか?」
少女は眉を寄せた。
そして怒りの篭った声で言った。
「キメラの材料だから」
かなり急展開です。
個人的に急展開って大好きなんですよ。




