20話
今回、少し長いです。
「全く、ロウはなんでいつも行き倒れるかなぁ」
次男は、ロウと言う名前だった。
ロウの顔は、青年の様な顔立ちで目は紫色。スラリとしていて、身長は180程。
腰には4本の短剣をさしている。
「ぐっ、今日はたまたまだって!これでも最近は減った方だ」
「やっぱり行き倒れるんだね・・・。それより今日は、なんでこんなとこで行き倒れてたわけ?」
「いや~ハッハッハ。ちょっとギルドの依頼で遠出したのはいいんだが、片道分しか食い物を持って来てなくてな」
「相変わらずバカだね」
そう祭は言った。
が、後ろでミディアは「・・・お母さんは言えない」と呟いたが、祭には聞こえない。
「これでも頑張ったんだぞ!昨日の夜は遠吠えして必死に動物でも呼び寄せようとしたんだけどな。ダメだった」
「昨日夜聞こえた遠吠えは、やっぱりロウだったんだね。って言うか当たり前でしょっ!なんで遠吠えで動物が集まるの!?」
「えっ!?遠吠えって動物を呼び寄せるんじゃないのか!?」
「違うよっ!!」
そう言い切って祭はぜぇぜぇと息をきらす。
「お母様・・・それぐらいにしては・・・?」
「そっそうだね。ロウ、この子が家の四女になったミディアね。で、ミディア、こっちのバカがロウだよ」
祭は適当に紹介をすます。
「・・・よろしく、ロウさん」
「あー、よろしくな。ミディアちゃん。あとお袋、バカってなんだ!バカって!」
「バカはバカでしょ。今までの事を振り返って見なさい」
「くそっ、言い返せない・・・!」
拳を握りしめて、悔しそうにロウは言った。
「で、お袋達はなんでこんなとこにいるんだ?」
「ん?ハスト神聖国に行く途中だよ」
「あっ、ならオレと行き先は一緒か。一緒に行っていいか?」
「いいよ、別に。ルスクもいいよね?」
「はい、もしまた行き倒れて死んだら、あと味が悪いですからね」
困った顔をしながらルスクは言った。
「さっすが姉貴!頼りになるっ」
「ふふ、私が頼りになるのは、今に始まった事ではありませんので」
少し誇らしげにルスクは言った。
「そう言えばロウは、どんな依頼でここまで来てたの?」
「えっと確か・・・・・・ファフニールとか言う魔物の討伐だったぞ。もう倒したけどな」
「あれ?ロウって魔物の討伐苦手じゃなかったっけ?」
「ハッハッハ、オレも成長したんだよ!」
「頭も成長すればいいのに・・・」
「うるせぇーっ!」
「ま、いいや。取り敢えず依頼も終わってるんだったら行こうか」
「そうですね。これ以上長居する必要もありませんし、行きましょう」
そしてルスクは、3人を背に乗せ、飛び立った。
「そう言えばロウのあの遠吠えを聞くと、未だにあの変声術は健在なんだね」
ルスクの背に乗りながら祭は、ロウに聞いた。
「そうだよっ!」
と、ロウは祭の声で言った。
「・・・似てる」
ミディアは関心したように言った。
「だろっ!?これが結構難しんだぜ?」
「ほんと・・・凄いんだか、凄くないのか・・・」
祭は額に手を当てて嘆息しながら言った。
「ま、凄いのは認めますが、もっと頭の螺子を締めてくれれば嬉しんですがね」
ルスクも祭を同じように嘆息しながら言った。
「むしろロウに螺子なんてあるの?」
「お袋、それは流石にオレでも傷つくぞ」
ロウは項垂れている。
「そう言えばロウ、あなたは今まで何をしてたの?」
祭は新たな話題をふる。
「あ?オレか?オレは・・・そうだな。適当に旅してギルドで金稼いで暮らしてたかな」
「誰も殺して無いでしょうね?」
祭は半眼でロウを睨みながら言った。
「ハ、ハハハッ。ソンナコトシテナイゼ」
あきらかに目を逸らしながら、ロウは言った。
「あれほど言ったでしょ!?一般人は殺しちゃダメって!」
「一般人は殺してねぇよっ!」
「もしかして貴族や王族を殺ったの!?昔の仕事は、もうやっちゃダメだよ!?」
「やってねぇよ!盗賊とかだよ。人助けだ!」
「なっならいいけど・・・・・・。って良くない!普通、国に明け渡すものでしょうが!この私でも再起不能で勘弁してあげたんだよ!?」
「十分だろうが!!てかオレは知らなかったんだよ。今初めて知った!」
「よく今まで捕まらなかったね・・・?」
「ま、オレに関わりたくないんだろうな。ダークエルフだし」
「・‥ダークエルフ?エルフじゃないの?」
「あれ?ミディアちゃんは知らないのか?」
「・・・うん、日焼けかと思った」
その言葉に3人は『どんな日焼けだよ』と呟いたが、ミディアは未だにキョトンとした顔をしている。
「まー、簡単に言うと化物だよ」
そう言いながらロウは、自分の事をミディアに話した。
ダークエルフ。
それはエルフの一族の禁忌と呼ばれる存在。
ダークエルフの生まれる条件はエルフ同士の近親相姦。
遺伝子が濃くなりすぎて、その異常によって肌が黒く、瞳が紫色。保有する魔力も多く、寿命はエルフの比ではないくらいに長い。
エルフだけでは無く、他種族からも化物と忌み嫌われている。
大抵が産まれてすぐに殺されるか、捨てられる。
ロウはその後者だった。
「ま、そんな感じだな。オレは別に差別とか気にしてないし、最近の奴は別にダークエルフの事なんてなんとも思ってない奴も多いし別にどうでもいいけな」
「・・・そう、ならいい」
悲しそうな顔をしながらミディアは言った。
「朝からしんみりした話は止めてよっ!ロウにはバカ話がお似合い!」
「そうです。ロウはいつものようにバカ話でもしてればいいんです!ほら、あれ言いなさい!昔、『果物の種を体の中で育てて栽培すれば永遠に食べられんじゃね?』と考えて、大量の種を食べてお腹を壊した事とかっ!」
ルスクがそう言うと、ロウは赤面して叫んだ。
「2人してひでぇよ!」
ロウは、さっきの空気をぶち壊すように笑った。
次回、ロウの戦闘を入れようと思います。
実は、先が気になる展開にしてから話を終わらせる事に全力を尽くしてるんですけど、難しいですね。
あと、近々ルスク無双をするつもりです。




