18話
今回は少しほのぼのします。
少し増やして2つに分けようと思いましたがややこしくなるのでやめました。その為少し長めです。
この大陸は祭の世界で言うオーストラリアをかなり大きくした様な形をしてる。
それを長年に渡り戦争、独立を繰り返し今は4つの国に収まっている。
4つの国は、祭達が住んでいた森を囲むように(囲んでいると言ってもあの森はニストゥル王国の領地)出来ている。
例えだが、あの森を世界の中心とするなら、西にニストゥル王国、北にアーディウス帝国、東にメイラストール皇国、南にハスト神聖国となっている。
そう言ってしまうとニストゥル王国とハスト神聖国は近く感じるのだが、実質は物凄く遠い。
元々王都がニストゥル王国の端にあったのもその原因だが、途中にある元龍の国を避ける為に遠回りしなければいけないのだ。(もし戦場だった場合、見られて攻撃されかねないから)
「今日はこれぐらいにしようか」
日が傾き始め、しばらくすると上空からは綺麗な夕日が見えた。
下は、大きな谷とその周りを囲むように森が出来ていた。
ちなみに未だにニストゥル王国を抜けていない。
その近くに小さな村が見えるので祭はルスクに言った。
「そうですか?分かりました」
いつものように少し離れた場所にルスクは降り立つ。
「うわっ、この森、魔物一杯いるじゃん。よくこんなとこに村なんか作ったなぁ」
森の中に入った瞬間に祭は魔力を『気体』にして放った。
すると多くの魔物を発見した。
「上から見た分には、村の規模からしてどう考えても魔物と戦えそうに無いんですけどね」
「・・・もしかして無人の村?」
「可能性はあるね。まーそれなら、勝手に家借りて寝ればいいし別にいいけど」
「それもそうですね」
「・・・本当にそれでいいの?怖くないの?」
昔住んでいた森の小屋も実は、元々あった物を改造した物なので2人は全く気にしない。
「怖いも何も・・・ねぇ?」
祭は目でルスクに同意を求める。
「そうですね」
「?・・・なに?」
ミディアは首を傾げた。
祭とルスクは、ミディアの方を向いた。
『私達が何に負けるの?(負けるんですか?)』
「・・・確かにっ!!」
思わず納得してしまった、ミディアであった。
「あ、やっぱり無人だ」
村に到着すると祭はそう呟いた。
民家はどこも皆、とても汚く屋根や壁に穴が空いている。
倒壊している民家もあり、地面にはゴミ等が散乱していた。
「そうですね。全く人の気配がしません」
「・・・嫌な予想が的中」
「それより早く寝れそうな家さがそ。ある程度だったら私が直すからさ」
「・・・そんな事も出来るの?」
「うん、直すって言うか埋めるだけどね」
「?・・・埋める?」
「お母様、早く探しましょう。日が完全に落ちてしまいます」
「はいはい」
3人は適当に家を探すことにした。
「どうもここが一番綺麗だね」
祭は腰に手を当てて言った。
3人の目の前にある家は、屋根に小さい穴が無数にあり、壁に拳程の大きさの穴が3つある。
中に入ってみると、狭い部屋が1つしか無く、床はギシギシち鳴り、所々腐っている。
「・・・どうやって直すの?」
「ん?まー見てて」
すると祭は床に手の平を置いた。
その瞬間、家の穴は紫色の物が出てきて、どんどん塞がっていった。
「!・・・なっなんで!?」
「魔力を糸にして家の木材の中に通して全体的に強化。デッカイ穴は、『個体』にして塞いだんだよ」
「確かお母様のあの糸の技はこうやって生まれたんですよね」
「あー、そう言えばそうだね。いつの間に武器になったんだろう?」
祭はう~んと唸りながら首を傾げる。
「ま、いいや。ルスク、浄化魔法掛けといて」
「はい、分かりました」
すると家の細かいシミ等はどんどん消えていき、部屋のホコリも無くなった。
「よしっ、これで大丈夫」
「では夕食にしましょうか」
ルスクは持ってきたバッグからエプロンを取り出す。
「・・・火は?」
ミディアは2人に聞いた。
『あ』
完全に忘れていたようだ。
「・・・そもそも食材は?」
『あ』
これも忘れていたようだ。
「・・・どうするの?」
「そうだね・・・。取りに行こうか?」
「・・・この暗い中?」
外を見ると完全に日が沈んでいた。
「・・・もう、寝る?」
『はい』
計画性の無い事を自覚した2人であった。
3人は寝巻きに着替えた。
「寝る前に体に浄化魔法掛けときますね」
「うん、お願い」
ルスクは、祭とミディアに浄化魔法を掛け、その後に自分にも掛けた。
「う~ん、やっぱり味気ないね、これは。お風呂に入りたい!」
「・・・お風呂って何?」
この世界にはお風呂に入る習慣は無く、代わりに水を染み込ませたタオルで体を拭く。
「お風呂ってのは、お湯を張ってその中に入る事だよ。最近、入ってないんだよね」
「森で暮らしてた時は、火魔法を使える人が3人居たので、出て行ってしまうまでは大体毎日入ってましたからね」
「・・・あたしも入ってみたい」
「もし機会があったらね。それじゃ寝るよ、無駄なエネルギー使うとお腹減るし」
『はい』
そう言った所でまたミディアは気がついた。
「ベッドも何も無いけど、床で寝るの?」
「そんなわけないでしょ。ほら、ちょっとここに腰掛けてみて」
ミディアが祭が指さす所を見るがそこのは何も無い。
「?・・・何もないよ?」
「いいからやってみて」
「・・・分かった」
ミディアは言われた通り、その場所に腰掛けてみる。
すると何故かそこに座れた。
「それは糸で編んだ物だよ。皆で寝ようと思って結構大きめに作ったから」
すると祭は何も無い所にダイブした。
そのまま地面に激突したように思えたが、何もないところに祭は寝転がっている。
「2人もおいで」
そう言うと2人は祭を挟む様に何も無いところに寝転がった。
「久しぶりですね。これで寝るのも」
「まー、森ではずっとこれだったしね」
「・・・どんな生活してたの・・・?」
「どんなって楽しい生活だよ。遊んで寝て狩して。ずっとそんな感じだった」
「そうですね。特にこれといってやる事も無かったですし・・・」
「唯一やる事と言ったら、魔法の練習、研究とか剣術とか武術とかだったね」
「・・・本当に自由だったんだね」
「そうだね。今思うと、とんでもない生活してたね」
「ふふ、そうですね。さぁ、もう寝ましょう。お腹が空きます」
「はいはい、おやすみ」
『おやすみ』
3人は眠りについた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「・・・・・・・・・・・お腹すいた」
夜中、祭はお腹が空いて目が覚めた。
そして間に挟まれていたため難しかったが、2人を起こさないように、そぉっとベッドから降りる。
音をたてないように家のドアを空け、外に出る。
外は、満月だったのか月明かりに照らされて辺りはとても明るい。
「起きちゃったけど・・・どうしよう・・・」
夜風に当たりながら祭はそんな事を考える。
ワオォ――――――――――――――――――ン
遠くから遠吠えが聞こえた。
「! なにっ!?」
辺りを見渡しながら祭は慌てる。
ワオォ――――――――――――――――――ン
また聞こえた。
「この遠吠え・・・。もしかして・・・」
そう言って、空腹なことも忘れ、家に戻る。
シルヴァとアリシアの出逢いは、結構先になりますが書く予定です。




