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9話

今回いつもより長いです。



「おじゃましまーす」


3件目の武器屋に3人は入った。


カウンターでは白髪の老人が暇そうにしていた。


「法器って置いてありますか?」


「置いてありますよ」


祭がニコニコしながら聞くと、老人も笑いながら言った。


「これ全部そうじゃよ」


老人はカウンターの横にある棚を指さして言った。

3人がそちらの方を見るとそこには、剣や弓等と言った近距離武器や遠距離武器が多く並んでいた。


「どれが一番いいですか?」


「そうじゃの~・・・この剣なんかは力作だと聞いておるぞ」


老人が手にとったのは、少し長めの黒い鞘に収められた両刃の剣だった。


「じゃーそれくださいな」


祭は初めてのおつかいの様なテンションで老人に言う。


「待て待て、お嬢ちゃんには使えんじゃろう。試しに持って魔力を流し込んでみなさい」


「はーい」


祭は老人からそれを受け取り魔力を流し込んでみる。


「あっ!」


祭が魔力を流し込んだ瞬間、祭の魔力に耐えられえず剣は粉々に壊れた。


「すみません!弁償します!」


ルスクは咄嗟に頭を下げる。


しかし老人は神妙な顔をして祭に言った。


「いや、大丈夫じゃ。その代わりちょっと頼みを聞いてくれんかの?」


「なに?」


「実はうちの法器は孫が作った物なんじゃ。前に孫が「もっと魔力の高い人がいたらなぁ・・・」と言っておっての。孫の為に仕事場へ行って孫と会って貰えんか?」


「それくらいなら・・・」


老人に案内され、3人は老人の孫の元へ向かった。





「あれ?お爺ちゃんどうしたの?」


老人が『スミル工房』と書かれた仕事場に入ると、奥から頭に三角巾を巻いた女性がタオルで手を拭いながら出てきた。


仕事場と言われた場所の内装は清潔感に溢れ、武器を作っている場所には見えなかった。


「前に魔力の高い人に会ってみたいとか言っておったじゃろ?このお嬢ちゃんはお前の力作だとか言ってた法器を魔力の込めすぎで壊したのじゃ」


老人は、祭の肩を叩きながら言った。


「はぁあああっ!?」


驚きのあまり目を丸くして持っていたタオルを落とした。


「もしかしてあの剣!?」


「そうじゃ」


「ッ!?」


女性は声にならない叫びを上げた。


「えっと・・・ごめんなさい!」


祭は女性の前で頭を下げる。


「本当に君がやったの・・・?」


「うん、どれくらい流したらいいのか分からなかったから取り敢えず多めにしたら壊れちゃった」


「・・・・・・お爺ちゃんありがとう。君、名前は?」


女性は老人にお礼を言って祭に名前を聞いた。


老人はお礼を言われると仕事があるからと去っていった。


「祭だよ」


「よろしくねマツリちゃん。わたしは、ここの責任者でスミル。ちょっと話し聞かせてもらえる?」


「うん、2人はどうする?」


祭は後ろで待機していた2人に話しかける。


「私達は宿に戻っています。行きましょうミディア」


「・・・うん、気をつけてね」


「分かった分かった。行こ、スミルさん」


「うん」


祭はスミルの後に続いて工房の中に入っていった。






「えっとね、今回マツリちゃんの壊した法器なんだけど・・・普通壊れないんだよ」


「え?」


「基本的に壊れないが正しいかな。魔力を流していない状態じゃただの剣だし。でもね?魔力を流した状態の法器はよっぽどの事がないと壊れない。いや、壊せないんだ」


「どうして?」


「魔力を法器に流すと法器の保持者と法器は繋がった状態になるんだ。持ってる人間の魔力が尽きない限り法器は強化され続ける。で、今回マツリちゃんが壊した件だけどね」


「うん」


「魔力が多すぎて魔力を放出する穴が耐えられなくなったんだ。これはね、凄いことだよ?今まで法器が魔力が少ないせいで正常に作動しないってクレームは来たことあるけど魔力を込めすぎて壊れたなんて聞いたことない。多分マツリちゃんが初めてだよ」


「で、結局私は何をすればいいの?」


長々とした説明に飽きてきた祭は、本題を聞き出す。


「・・・マツリちゃんは魔装って知ってる?」


「うん、今日ギルドで聞いた。開発中なんでしょ?」


「そう。でも、わたし達みたいな法器を作ってる人たちは、魔装は世に出ることは無いと考えてるよ」


「なんで?出来るんじゃないの?」


「理論的には出来るよ。でもどう考えても魔装を正常運転できる人なんていなかったんだよ」


「いなかった?」


過去形だった為、祭は首を傾げる。


「わたしはマツリちゃんなら魔装を動かせると考えてるんだ」


「へ?」


「魔装の最大の壁。それは魔力量なんだよ」


「魔力量?」


「そうだよ。ほら、水に浸すと大きくなる玩具あるじゃん?」


「うん」


「魔装はまさにそれなんだよ。魔装は普段小さいんだよ」


スミルが取り出したのは1cm程の宝石の様なものがついた指輪だった。


「これに多量の魔力を流し込んで魔装を起動させる。ちょっと試しにやってみてよ。あと音声パスワードは、展開だよ」


スミルは、祭の指に魔装を通す。


「えっと・・・展開?」


すると指輪は、眩い光を放ちながら膨れ上がり祭を一瞬で包む。


1秒もかからずその光は消え、その中から黒をモチーフにしたドレスを纏う祭が現れた。


「お~~~~~」


自分の姿を確認して祭は驚く。


「や・・・やった・・・」


スミルは危ない足取りで祭に近づく。


そしておもむろに祭に抱きつく。


「やった――――――――――!!!ついにやったよ!!」


若干涙声でスミルは叫ぶ。


「マツリちゃん!この魔装、貰ってね」


「え?いいの?」


「いいのいいの!使える人に貰ってもらわなくちゃ可哀想でしょ?」


スミルは祭の背中をバシバシと叩きながら言う。


「『魔装』の効果だけどえっと空飛べたりするよ。後その魔装は闇魔法を組み込んであるからね。基本的にその魔装も法器と一緒で破けたりしないし洗濯も要らないから」


闇魔法とは精神干渉の魔法だ。記憶操作・人格変換・幻術。基本的にこの闇魔法を使えても幻術が関の山で記憶操作や人格変換を行える人物は存在しなしい。


「てことは私、魔装の状態なら闇魔法使えるの?」


今まで正面に魔法を使えなかった祭は嬉々としてスミルに聞く。


「うん、使えるよ」


「よっしゃ―――――――――――――――――――――――!!」


ガッツポーズをして祭は喜ぶ。


「念願の・・・念願の魔法だ・・・」


喜んだと思ったら今度は嬉し泣きをしだした。


「でもいいの?記念日の時に出展するんじゃないの?」


「ん?だって今のところマツリちゃんしか着れない魔装を誰が欲しがるのさ」


ごもっともな言葉に祭は頷く。


「わたしは魔装を展開させられる人が見たかっただけ。それ以外は求めないよ」


「へー、なんか職人さんみたい」


「職人のつもりだよ。取り敢えずそれは貰ってね。元に戻すときは解除って言えばいいから」


そう言われたので祭は解除と呟く。するとまた光に包まれ、元に戻った。


「また新作出来たら呼んでもいい?」


「うん、私も興味があるからお願い!」


2人は固く握手をした。







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