あとがき
はじめまして&こんにちわ。本作を執筆いたしました、雪宮鉄馬です。
このたびは「春になったら、会いに行く」を、最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。この物語を完結させることができたのも、ひとえに、読んで下さった方がいたからだと思っております。また、つたない文章、表現力、誤字脱字のチェック漏れがあったかとは思いますが、常に修行途上の身故に、その点についても、この場をお借りして、陳謝いたします。
「春になったら、会いに行く」長いので、ここからは「はるあい」と称します。執筆中も、長いタイトルなので「はるあい」と呼んでいました。
「はるあい」は、一年ぶりの久々の恋愛小説となります。前作がファンタジーだったのに対して、今回はファンタジー要素がほぼありません。そういう小説を書くのは、本当に久しぶりです。当初のコンセプトは、教師と生徒の恋愛という、タブーに踏み込むつもりだったのですが、それをやっちゃうと、有名な某ドラマのような、ドロドロした展開になりそうだったので、あえて「ガーデニング」という要素をメインに取り入れて、教師と生徒の恋愛、というのはソフトに表現することにしました。
物語自体も、当初の設定から、ずいぶんといじくり倒し、二人が過去の傷から再生し、互いに告白して終わる、読後感の良いものを目指しています。
また、コンセプト段階から、技術的な面として、二人の視点を交互に書くというのを取り入れています。先生、美咲、先生、美咲と、視点が入れ替わることにより、一人称文体の強みである「心理描写」を強化し、かつ弱点である視点切り替えができるように、と考えました。
これは、小説においては邪道なのですが、どうしても互いにどんな風に思っているのか、というのを書き出す必要があっためと、今後執筆したい小説のテストヘッドとして用いてみました。ちなみに、なぜ邪道かというと、ビジュアル再現を読者の頭の中で行わせる小説という表現において、一人称文体では視点を切り替えたことが分かりにくいためです。その分かりにくさを、男性と女性、普通の口語文と丁寧口調という、使い分けによって、少しでも伝わるように配慮したつもりです。
先生の視点と、美咲の視点、じつは最大の違いがあることにお気づきになったでしょうか?
実は、先生の視点ではなるべく文章が固くなるように書いて、美咲の視点では難しい言葉は極力避けて柔らかくなるように書いていきました。
物語としては、けして明るい小説ではありませんでしたが、心理を書き込むのは楽しい作業でした。視点が変わるたびに、先生になりきって書いて、美咲になりきって書くのは大変でしたが、登場人物も少ないので、ラストまでコントロールできました。
美咲が十八歳なのは、春を迎えて大学生になったら、生徒と教師という関係ではなくなるということへの、布石だったりします。また、ヒースの和名と衣里果とか、大川先生と美咲の名前が一緒だけど物語上何の関係もないというフェイント、小ネタとしての小鳥さんの正体や、花壇を荒らした犯人当てのためのヒントを置いたり、最後まで桜井先生のフルネームは秘密だったりと、妙なところで遊んでいます。そういったことも、執筆へのモチベーションにつながったのかと思います。もちろん、最大のモチベーションは、不特定多数の方々が、読んで下さるという期待とうれしさです。
書き終わった後思うことは、やはり恋愛小説は難しい、ということです。どうやって、互いに心惹かれていくのか、その過程を描くのは醍醐味ですが、人の心を描くということは、とても難しいです。その分、挑戦のし甲斐もありました。
そんな拙い、恋愛経験値ほぼゼロの人間が書いた小説ですが、皆さんの目には、どのように映ったのか気になるところでもあります。ぜひ、次回作への活力や執筆の勉強にもつながりますので、ご意見・ご感想をお聞かせいただければ、うれしく存じます。また、他の自作小説同様、ご意見・ご感想はいつまでも受け付けていますので、何卒よろしくお願いいたします。
では、最後になりますが、広大なこのサイトの中で「はるあい」を見つけて読んで下さった皆様。評価してくださった皆様。感想を付けて下さった皆様。本当にありがとうございました。感謝してもしきれないほどです。
また、皆様と次回作でもお会いできることを祈りつつ……。
雪宮鉄馬 2011/7