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第四十二章 その二 攻防戦開始

 レーアは、クラリアがディバートに告白したと思われる日から、元気がないのを気にしていたが、何故かクラリアがレーアを避けているようなので、ショックを受けていた。

(無理矢理告白させたのを怒っているのかな?)

 レーアは悲しくなって、基地の廊下を歩いていた。

「何しょぼくれてるんだ、レーア?」

 ナスカートがそんなレーアの微妙な気持ちなど全く気づいていないのか、軽い口調で話しかけて来る。

「うるさい、ナスカート! あっちに行って!」

 レーアは立ち止まって怒鳴った。ナスカートはまさかそんな事を言われると思っていなかったので、

「何だ、機嫌悪いな」

「貴方には関係ない」

 レーアはプイと顔を背け、また歩き出す。

「ああ、そうか、クラリアがディバートに告白したのを知って、気が立ってるのか」

 ナスカートは更に無神経さを発揮して言う。レーアはピクンとして立ち止まり、彼を見た。

「何か知ってるの、ナスカート?」

「あれ、何も聞いてないのか、クラリアから?」

 その問いかけにレーアはギクッとした。

「聞いてないわよ」

 その反応にナスカートは嬉しそうにニヤリとし、

「そうなのか、何も聞いてないのかあ」

「こら、面白がってないで、どうなったのか言いなさい!」

 レーアは暴力に訴え、ナスカートの襟首をねじ上げた。

「わ、わかったよ、言うから、その手を放してくれ」

 レーアはムッとしたまま、ナスカートの襟を放した。ナスカートは服の乱れを直してから、

「ディバートの奴、本当にバカだよな。俺だったらさ、絶対OKなのにな」

「ディバート、断ったの?」

 レーアは目を見開いた。

「ああ。そう言ってた。あいつさ、女の子の扱いに慣れてないから、あっさり断ったみたいなんだ」

「そうなんだ……」

 ああ、やっぱりクラリアは私に対して怒ってるんだ。無理矢理告白させて、あっさり断られたら、怨まれるよね、けしかけた私は。レーアはまた落ち込みそうだ。

「可哀想だよな、クラリアはさ」

 ナスカートがそう言ったのを聞き、レーアはすかさず、

「それにつけ込んで、クラリアを口説こうなんてしたら、許さないから」

「そんな事しないって。俺もレーア一筋だからな」

 ナスカートが臆面もなく言ってのけたので、レーアの方が恥ずかしくなった。

「バ、バカ、何冗談言ってるのよ!?」

「冗談に聞こえちゃうのかあ。俺も可哀想だな」

 ナスカートがしんみりした顔で言ったので、さすがにレーアも悪いと思ったのか、

「あ、その、好かれるのは嬉しいから、その……」

「好きになるだけじゃ、男は満足しないんだよ、レーアちゃん」

 ナスカートがいつものスケベ顔になる。

「ふざけないでよ、もう!」

 レーアは微笑んで応じた。そしてある事に気づいた。

「ねえ、さっき、『俺もレーア一筋だから』って言ったよね?」

「な、何だよ、いけないか?」

 レーアがグイッと顔を近づけて来たので、ナスカートは嬉しいより先にビクッとした。

「『俺も』ってどういう事?」

「それは、ディバートもレーア一筋だからさ」

 ナスカートの答えにレーアは驚いた。そして、クラリアが何故自分を避けているのか、わかった。

「ディバートは何て言って断ったの?」

「それは俺も知らないよ。奴に直接訊いてみたら?」

 レーアはナスカートを突き飛ばすようにして走り出した。

「何なんだよ、あいつ?」

 ナスカートはムッとしてレーアを見送った。


 一方、エラメド・ラムルス率いる戦車大隊がパルチザンが占拠した前線基地を目指していた。彼は戦車の装甲に特殊塗料を使い、ケスミー財団の監視衛星から逃れる事に成功していたのだ。彼等の進軍をレーア達はまるで把握していなかった。

「手始めに前線基地を奪還し、グランドキャニオン基地の補給路を確保。その上でサラミスに侵攻し、急進派とパルチザンの主要メンバーを殺害、あるいは捕縛する。できれば捕縛が望ましいが、最悪の場合は殺害で仕方がないだろう」

 ラムルスは通信機で各戦車のチーフに伝達した。

「更に加えて、それ以上に大事なのは、大帝の令嬢を救出する事だ。令嬢は恐らくサラミスにいると思われる。急進派を取り逃がそうとも、令嬢の救出を優先せよ」

 ラムルスは、ザンバースの秘書マリリア・モダラーの本当の恋人であるマルサス・アドムと結び、反ザンバースを画策している。そのためにも、レーアは自分達の手元に欲しいのだ。彼女は自分達の正当性を証明する「旗印」になると思っているからだ。

(ザンバースを討つには、何としてもレーア・ダスガーバンの力が必要なのだ)

 ラムルスはニヤリとした。


 レーアが司令室に駆け込んだ時、基地全体にサイレンが鳴り響いた。

「偵察隊より入電! 帝国軍の戦車部隊が前線基地に向かっている模様! 数、およそ三千!」

 通信係が言った。

「畜生、突然現れやがって! どんな方法で近づいたんだ、奴らは?」

 タイタスが悔しそうに言った。ミタルアムが、

「監視衛星の目を逃れたという事は、何か特別な事をしたのだろう。とにかく、作戦を急がねばならない」

「では自分はナスカートと戦闘機で出撃します」

 ディバートはそう言って司令室を離れる。彼はレーアが入って来たのに気づいたが、彼女をチラッと見ただけで出て行ってしまった。レーアはディバートを追いかけようとした。

「レーア、俺達も前線基地に向かわないと」

 イスターに声をかけられたので、

「そうね」

 レーアはディバートを追いかけるのを諦めた。


 ディバートはナスカートと共に戦闘機がある格納庫に向かっていた。

「あ」

 途中で彼はクラリアに出会った。

「先に行っているぞ」

 ナスカートがそのまま走る。ディバートはクラリアに近づいた。

「昨日はすまなかった。あまりにも自分勝手な言い方だった」

 するとクラリアは作り笑いをして、

「振られるのが一緒なら、遠回しに言われるより、はっきり断られた方がいいわ」

「そうか」

 ディバートも作り笑いをした。クラリアはいきなりディバートに駆け寄り、彼に口づけした。

「クラリア……」

 ディバートは驚いて彼女を見た。

「レーアとはどうせキスもしていないんでしょ? だから、キスだけは私が先にさせてもらったわ」

 クラリアは涙顔で言った。

「レーアとは、その……」

 何か言おうと思ったが、ディバートは言葉を思いつけない。

「心配しないで、ディバート。私とレーアは小さい頃からの親友よ。この程度で壊れる程、(やわ)じゃないわ」

クラリアがおかしそうに言った。ディバートはそれに釣られて微笑み、

「そうか。わかった」

「気をつけてね」

 ディバートはクラリアに敬礼で応え、格納庫に向かった。

 

 レーア、タイタス、イスター、アーミー、ステファミーらは、各地から応援に駆けつけたパルチザン隊と共にホバーカーやホバーバギーに乗り合わせ、前線基地に向けて出発した。

「ああ」

 その彼女達の頭上をディバートとナスカートの搭乗した戦闘機が飛び去った。

「ディバート……」

 レーアが悲しそうな顔でそう呟いたのを、タイタスは聞き逃さなかった。

(レーアはやっぱりディバートが好きなのか……?)

「そう言えば、クラリアはどうしたんだ?」

 何も事情を知らないイスターが尋ねた。するとステファミーがレーアをチラッと見てから、

「クラリアは具合が悪いの。だから、サラミスに残ったわ」

「あれ、そうなの? 知らなかった」

 アーミーがそう言ったのをステファミーが慌てて遮る。

「何言ってるの、アーミーったら。もう忘れちゃったの?」

「え?」

 ステファミーはクラリアから、レーアと顔を合わせるのが辛いからと言われていた。しかし、アーミーは何も聞いていなかったのだ。

(もう、面倒臭い事になったなあ)

 ステファミーはウンザリ顔になった。

「見えて来たぞ、基地が」

 イスターが言った。

「何とか連中より早く着けたな」

 タイタスがホッとした顔で言う。

「ディバートとナスカートが威嚇してくれたからだろう。それに戦車はホバーカーより機動性がないしね」

 イスターが嬉しそうに言った。

「とにかく、戦いはこれからです。皆さん、気を引き締めて下さい」

 サラミスのリーダーだったケイラス・エモルが言った。レーア達は黙って頷いた。

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