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第三十八章 その二 クラリア・ケスミーの恋

毎日更新は今回で終了です。一週間に一度くらいに落ち着くと思います。

「レーア、ちょっといい?」

 レーアは司令本部の廊下を歩いているところをクラリアに呼び止められた。

「何? ナスカートのバカなら、二度とバスルームを覗くなってボコボコにしたから大丈夫よ」

 レーアはナスカートがバスルームを覗いているのに気づき、夜襲をかけて制裁を加えたのだ。

「それは心配してないよ。多分、彼が興味あるの、レーアだけだから」

 クラリアは何故か寂しそうに言った。レーアは、

「そんな事ないって! 貴女が知らないだけなの! ナスカートの奴、アーミーとステファミーの時も覗いたらしいの。だから、今度そんな事したら、潰すわよって脅かしたの」

「潰す? 何を?」

 クラリアは本当にキョトンとして尋ねた。レーアは赤くなって、

「そ、それくらい察してよ、クラリア」

「?」

 クラリアはさっぱりわからないという顔をしてから、

「ちょっとこっち」

とレーアを廊下の端まで引っ張って行った。

「何なのよ、クラリア?」

 レーアは少々鬱陶しくなって尋ねる。クラリアはモジモジして、

「ディバートの事なんだけど……」

 レーアは不思議そうな顔で、

「ディバート? 彼がどうかしたの?」

 クラリアはヤレヤレという顔をして溜息を吐き、

「率直に言うわね。貴女、ディバートの事、どう思っているの?」

「えっ?」

 レーアはその時やっとクラリアが何を尋ねたいのかわかった。そして、

「そうねえ。彼は、まァ、同志ね。それ以上でも、それ以下でもないわ」

とニヤニヤして言う。クラリアはその様子に気づき、

「何よ、その嫌ーな笑い方は?」

「別にィ」

 レーアに見抜かれたクラリアは赤面した。レーアはクスッと笑って、

「貴女らしくないわよ、クラリア。ディバートの事、好きなんでしょ?」

 するとクラリアは消え入りそうな声で、

「うん」

 レーアはクラリアの顔を覗き込んで、

「それで、ディバートには告白したの?」

「し、してないわよ……」

 クラリアの顔は爆発するのではないかと思える程赤くなった。レーアはニッコリしてから真顔になり、

「だったら、告白するしかないわよ。それしか、彼の気持ちを確かめる方法はないんだから」

 クラリアはレーアを見て、

「で、でも……」

「答えを聞くのが怖いの?」

「うん……」

 レーアはムッとした。クラリアの弱気な態度に腹が立ったのだ。

「何考えてるのよ! そんな事怖がっていたら、何も進展しないじゃない!? とにかく、告白しなさい」

「わ、わかった……」

 レーアのあまりの迫力に気圧されて、クラリアは頷いた。レーアは再びニッコリした。

「でもさ……」

 クラリアは上目遣いにレーアを見た。

「何?」

「でもさ、レーアはそれでいいの?」

「えっ?」

 そう尋ね返されて、レーアはドキッとした。

(何よ……。私、ディバートの事、そんな風に考えた事なんて……)

 確かに出会った頃はそのイケメンさにクラクラ来た時もあったが、今はそんな気持ちはない。自分には使命がある。そう思っていた。いや、そう思い込もうとしていたのかも知れない。


 グランドキャニオン基地は、パルチザンと共和主義者達の重要な前線基地である。ザンバースのいるアイデアルに一番近い要塞だ。しかも、旧帝国時代から、難攻不落と言われたその場所は、帝国軍の一個師団でもそう簡単に落とせるものではない。

「急進派の連中を、この北アメリカ大陸から一掃するためにも、この作戦、成功させねばならん」

 帝国人民課担当官であるマルサス・アドムは、自分の部下達に力強く語った。

「実験の五倍の出力でグランドキャニオン基地を攻撃する。程なく内部で争いが起こって自滅したら、軍に制圧させる。万に一つも失敗はあり得ないが、決して気を抜くなよ」

「はっ!」

「作戦開始だ」

 マルサスの部隊は、それぞれホバーカーに乗り、大掛かりな装置を搭載したトレーラーを取り囲むようにグランドキャニオン基地を目指した。


 クラリアは、レーアがしつこくけしかけるので、とても緊張しながらディバートがいる司令室に行った。ソッと中に入って行くと、ディバートは彼女の父であるミタルアム達と話をしていた。

「グランドキャニオン基地に接近している妙な部隊を我が財団の監視衛星が捕捉した」

 ミタルアムの言葉にディバートは目を見開き、

「グランドキャニオン基地は、今まで全く攻撃を受けていなかったはずです。今になって動いたという事は、何か裏がありそうですね」

「そう考えるのが正しいね。とにかく、君達はレーア君と共に北アメリカに戻ってくれたまえ。グランドキャニオン基地は、我々の最前線だ。何としても守らなければならない」

「はい」

 ディバートは力強く頷き、ミタルアムから離れてクラリアの方に歩いて来た。

「ディ、ディバート」

 クラリアは恐る恐る声をかけた。ディバートはクラリアを見て微笑み、

「何かな?」

 彼はクラリアがレーアの親友だという事を知っているくらいで、ほとんど会話を交わした事がない。嫌われているのかな、と思っていた彼は、クラリアから声をかけてくれたので心なしか嬉しくなっていた。

「訊きたい事があるんだけど」

「そう? 何?」

 ディバートはできるだけ優しい口調で尋ねた。クラリアは顔がドンドン火照って行くの感じながら、

「ディバートには、彼女とかいるの?」

「えっ?」

 まさかそんな事をミタルアムの娘から聞かれると思っていなかったディバートはびっくりしてしまった。

「いや、いないけど……」

 それが何か? 以前の彼だったらそう言ってしまったかも知れない。でも、レーアの事が気になっているディバートは、クラリアが何を知りたいのか理解できた。

(そういう事か……)

 ディバートは困っていた。

(どうしたらいいんだろう?)

 相手はミタルアムの愛娘だ。迂闊な事を言って、ギスギスするのは望まない。かと言って、変に期待を持たせるのも酷い仕打ちだ。

「そ、そう。ありがとう」

 ディバートが思い悩むまでもなく、クラリアは勝手に話を切り上げて立ち去ってしまった。

「俺の考え過ぎか?」

 ディバートは苦笑いをした。

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