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1-9 戦いの後で

刃が、重い。


ゴブリンソルジャーの剣は、雑な造りのくせに力だけはある。

真正面から受ければ、腕がもっていかれる。


アズマは、呼吸を整えながら距離を測った。


一歩、二歩。

ソルジャーは学習している。

さっきまでの突進とは違い、間合いを詰めず、確実に当てにくる動きだ。


――やっぱり、普通のゴブリンじゃない。


剣が振るわれる。

横薙ぎ。


アズマは、半拍遅らせて踏み込む。

マチェットで受け流そうとしたが、衝撃が重く、刃が弾かれた。


肩に、鈍い痛み。


「……っ」


浅い。

だが、確実に削られている。


周囲では、まだ戦いが続いていた。

ホブゴブリンは死んだが、残党が暴れている。

誰も、こちらを見る余裕はない。


助けは来ない。


来なくていい。


アズマは、視線を下げた。

ソルジャーの足運び。

剣を振る前の、わずかな癖。


――次は、同じ。


来る。


案の定、ソルジャーは大きく踏み込み、剣を振り抜いた。

さっきより深い、殺しに来る一撃。


その瞬間。


アズマは、後ろへ倒れ込んだ。


腰から落ちるような、深いスウェー。

重心が一気に下がり、剣が鼻先をかすめて通り過ぎる。


普通なら、ここで終わりだ。

倒れた人間は、次の追撃を避けられない。


だが。


アズマの足は、床に吸い付いたように動かなかった。


倒れきらない。

膝も、踵も、位置を保ったまま。


反動で、身体が前に戻る。


そのまま。


――カウンター。


下から、ククリが走る。

ソルジャーの脇腹に深く突き刺さり、骨の隙間をえぐった。


一瞬の硬直。


そこへ、マチェット。


首元。


刃が、確実に入った。


ごとり、と頭が落ちる。


血が噴き、ソルジャーの身体が、ようやく崩れた。


アズマは、息を吐いた。


「……終わり」


それから数分。


残っていたゴブリンたちも、次々と片付けられた。

逃げる者も、抵抗する者も、全て。


今度こそ、本当に終わった。


「やった……!」


誰かが声を上げる。

それを皮切りに、あちこちで安堵の声が漏れた。


生きている。

それだけで、今日は当たりだ。


アズマは、血を拭いながら立っていた。

いつも通り。

特別な感情は、ない。


――いや。


視線を感じる。


顔を上げると、グスタがこちらを見ていた。

笑っていない。

値踏みするような目。


やがて、ゆっくりと近づいてくる。


「……なんすか」


アズマが言うと、グスタは顎を撫でた。


「うーん……いやな」


言葉を濁しながら、アズマの周囲を回る。

肩、腰、脚。


何かを確認するみたいに。


距離が、近い。


次の瞬間。


――違和感。


腰のあたりに、手が触れた。

探るような、確かめるような。


アズマは、無言で睨む。


「……」


「ふむ……」


さらに、上。


モミモミ


「意外とあるな」


今度は明確な



下心。






バチンッ。


乾いた音。


反射的に、アズマの手が動いていた。


「……っってぇ! 何すんだよ」


「さーせん。反射的に」


淡々とした声。


グスタは少し驚いた顔をしたあと、すぐに笑った。


「いいじゃんか。減るもんじゃねぇし」


「減ります。気分が」


そのやり取りを聞いて、周囲の冒険者たちは苦笑いするだけだった。

誰も、止めない。


グスタは、腕を組み、少しだけ真面目な顔になる。


「アズマ」


「……はい」


「お前、今の動き」


一拍。


「あれ、ただの身体能力じゃねぇ」


アズマは、言葉に詰まった。


「……」


グスタは、確信したように続ける。


「ありえない重心制御。そこからの反射。筋肉の動き」


先ほどまでのおどけた雰囲気は消え、兵士の言葉だ。


「――特殊能力、持ってるだろ?」


沈黙。


アズマは、視線を逸らした。



「……え、あ、はい」





とりあえず



戦いは終わった。

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