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1-2

世界が壊れたのは、50年前-


ある日突然、世界各地によくファンタジーで出てくるような“魔物”と呼ばれる存在が現れた。

理由はわからない。前触れもなかった。ただ、どんどん現れては人を襲い、殺していった。




魔物には銃は効かなかった。

正確には、効きが異様に悪かった。何発撃ち込んでも倒れず、逆に近づかれて殺される。

代わりに有効だったのは、刃物や鈍器といった近接武器、そして一部の人間が目覚めた“特殊能力”による攻撃くらいか。


そんな恐ろしい存在が生まれれば文明は、あっという間に後退した。各国は戦争や外交どころではなく自衛に専念することしかできず、その結果、外交は途絶え、流通は途切れ、人口は瞬く間に減っていった。



日本では、生き残った人間を守るため、各都市毎に巨大な外壁が築かれた。

壁の内側が生活圏。外側は魔物の領域。

そんな生活も50年も経てば当たり前の光景になってしまった。


そして——

外に溜まりすぎた魔物を殺すのが、兵士や冒険者の仕事だった。


ジリリリリリリリリ!!!


「……はいはい」


今日も、けたたましい時報で目を覚ます。

アズマは昨日と同じように起き上がり、同じ栄養食を流し込み、同じ作業服に袖を通した。


「働きますかねえ……」


誰に聞かせるでもなく呟き、武器を手に取る。

右にマチェット。左にククリ。

軽く振ってみて今日の状態を確認。うん、いつも通り。


これで、今日も生きる。





外に出ると、やっぱりゴブリンの群れがいた。

もう驚きもしない。挨拶みたいなものだ。

なんなら中の人間よりもゴブリンと接する機会の方が多いのではないか?

もしゴブリンと話が通じるなら酒でも飲んでみたいもんだ。

「そっちはどう?」「ぼちぼちでんな」みたいな。





「おはようございますってか」




踏み込み、斬る。

刺して、蹴って、切り捨てる。


ゴブリンの血が飛び、地面に倒れる。

アズマの動きは昨日と変わらない。感情も、変わらない。




問題なく壁周辺を片付け、若手組は探索へ回された。




今日の相方は、昨日と違う男だった。

落ち着きがなく、周囲をやたら気にしている。


「なあ、最近ゴブリン増えてねえ? 気のせいかな」


「……さあ」


「夜勤の奴らのせいなのかな?それとも……」


「さあ」



アズマは適当に相槌を打ち、前を歩く。


かつてはコンクリートジャングルと呼ばれていたらしいが、今では普通にジャングルになりつつある。いや、ほぼ半壊しているビルやタワーと森が同居している姿はさらに歪な世界なのだろう。


アズマからすれば、どうでも良いことだが。





そのときだった。




茂みの奥から、数匹のゴブリンが姿を現した。




一匹、二匹……


六匹……


十匹以上。


唐突なゴブリンの集団。


「あ、やべ……」


相方は一瞬固まり——次の瞬間、背を向けて走り出した。


「え、ちょ……」


呼び止める暇もなく、相方の姿が遠ざかる。


アズマも後を追おうとしたが、このままゴブリンを引き連れて戻ってしまうと後が怖い。報告書が発生しうるケースだ。


一瞬迷って


体をゴブリンの方に向き直る。

クソむかつく事にゴブリンどもがニヤついているように見える。もう勝った気で嫌がるのだ。



「……ちっ、しょうがない」


アズマは舌打ちし、周囲を見渡す。

近くに、大きな木があった。




あそこならいけるか。





次の瞬間、少女は地面を蹴り、大きな木に突撃するとその幹を走り登っていた。両手を使う事なく。

そして、そのまま器用に、もしくは重力を感じさせない動きで、枝の上に立った。




こい



「クソゴブリンども、ここまできてみろ!」



そしてビシッと中指を立てた。




ゴブリンと話は通じないが、挑発にはのってくる。


ゴブリンは我先にと、木をよじ登り始めた。



「登るの、遅……」


そして、頭悪すぎ


両手を使ってよじ登るゴブリンなんて、アズマにとってみれば無防備に生えてくるつくしみたいなもんだ。

気兼ねなく刈り取れる。


はたからみればまったく信じられない光景だ。


アズマは木の側面を手を一切使わず、歩く。



そして登ってきたゴブリンの頭を一匹ずつ叩き落とす。

マチェットが頭を割り、ククリが首を刎ねる。


落ちる死体。

続いて登る死体予備軍。

そしてつくしのように刈り取られる首。



数分後、動くものはいなくなった。


 


アズマは木の上で一息つき、下を見下ろす。


「……しまった」


ぽつりと呟く。


「木の上で殺すと、回収めんどくさいな」


死体は散乱し、吸引機を使うにも手間がかかるだろう。

次からは、もう少し考えよう。たぶん。


そう思いながら、アズマは枝から飛び降りた。


今日も世界は、何も変わらない。

くそったれなまま、続いていく。


それでも——

働かなければ、生きられない。

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