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家出した公爵姫は年上の傭兵に愛の指輪を贈る

作者: 宮前葵

 私は家出を決意いたしました!


 私の名前はレイリーレ。家名はハルブクスク。お家の階位は公爵です。


 つまり私は公爵家の第一姫なのです。


 公爵家は王家と近い血縁関係にある家に与えられる爵位です。そのため、公爵と次期公爵には王位継承権が与えられます。つまり、公爵家は貴族ですが王族なのです。


 ですので公爵家の娘は「令嬢」ではなく王家の娘と同じく「姫」という尊称で呼ばれます。私は生まれた時から「レイリーレ姫」と呼ばれて育ってきました。


 姫ですからそれは大事にされましたよ。幼少時から、私が望んだことで叶わない事はあり得ない、くらいのものでした。何かが欲しいと言えば必ず与えられ、何かが食べたいと言えば即座に用意されたものです。


 ただし、甘やかされただけではありませんでしたよ。「姫」の尊称には多くの責任が付随します。その責任を果たすには自覚と教養が必要なのです。つまりは厳しい教育です。


 学問であるとかお作法であるとか、あるいは話術、ダンス、絵画、音楽、お料理、フラワーアレンジメント、庭園の見方、宝石の鑑定、服飾の評価方法なんてものもありました。


 普通の貴族令嬢ではそこまでやらないだろう教育も「姫」にはどんどん課されます。それが傍系王族たる公爵家に生まれた者の宿命なのです。


 私はそういう教育を、姫の自覚を持って懸命にこなしましたよ。優秀な成績でね。私にもプライドがあります。ただ甘やかされたダメなお姫様と呼ばれたくはありません。


 客観的に見ても、私は公爵家の第一姫に相応しい淑女に育ったと思いますよ。その事があった年、私の年齢は十七歳。そろそろ結婚を考えなければならない歳でした。


 公爵家の姫となれば普通は王家の方か、同じ公爵家の方と結婚をいたします。ごく稀に侯爵家の方に嫁入りする場合もありますが、それは次女三女の場合ですね。第一姫が嫁ぐことはまずありません。


 伯爵以下は論外です。特に王族の血を引かない伯爵以下の貴族と公爵一族の結婚は貴賤結婚として扱われ、結婚後には公爵家と縁を切られてしまうのが普通です。


 他には海外の王族に嫁ぐ事が十分に考えられます。かつて隣国の王妃に迎えられた公爵姫がいらっしゃいました。王妃でなくても当地の公爵相当の貴族のお妃になった方も少なくありません。


 いずれにしても私は結婚後も高貴な「お妃」と呼ばれる身分を保つ事を全く疑っていませんでしたよ。私はそのために厳しい教育に耐えたのですからね。


 ……ところが、ある日。お父様に呼ばれた私はとんでもない宣告を受けたのです。


  ◇◇◇


「お前にはハスタミヤン伯爵の元に嫁いでもらう」


 ……私は一瞬、何を言われたか分かりませんでしたよ。


 しかし、お父様は私を傷ましそうな顔でジッと見詰めた後、首を横に振って俯きました。


「……すまない」


 それで、お父様の言葉が冗談でもなんでもない事が分かりました。


 公爵家の第一姫である私に、なんと伯爵家に嫁に行けと、お父様は本気で言ったのです。公爵家当主であるお父様の言葉は絶対です。


 こ、この私が伯爵家へ⁉︎


 私は驚くよりも唖然とし、同時に足元が崩れるような感覚を味わいました。フラついて膝を着きそうになります。侍女のメイリーンが支えてくれました。


「お嬢様!」


 私はメイリーンの腕に捕まりながら、お父様を見上げました。お父様は悲しそうな、しかし揺るがぬ視線で私を見据えていました。


「な、何故ですか! 何故私が伯爵家などに嫁がねばならないのですか!」


 思わず私は声を荒げました。お父様はジッと私を見ながら、苦しそうなお声を出します。お父様も本意ではないのでしょう。


「国王陛下のご命令だ」


「こ、国王陛下の?」


 私は目を丸くします。いよいよ分かりません。なぜ国王陛下が私の輿入れを命ずるのでしょうか? どこそこへ嫁に行ってくれないか? という打診ならおかしくはありませんが、さすがに命令は前代未聞ではございませんでしょうか。


 お父様はため息を吐きながら説明をしてくださいました。


「全ては戦争のせいなのだ」


 王国は先日まで、隣国との戦争をしていました。それは知っています。大規模な戦争で国王陛下も出陣され、社交界もその話題で持ち切りでしたから。


 戦争は王国の勝利で終わり、凱旋式でまだお若い国王陛下は金色の鎧姿で誇らしげにパレードなさっていましたね。


 ですけど、お父様のお話によると、今回の戦争はそう簡単なものではなかったようです。


 なんでも、何度も何度も敵に領内深く攻め込まれ、苦しい戦いを強いられたとか。


 そして特に苦しい局面で事件は起こります。奇襲を受けて防戦一方になった王国軍に敵の一部隊が突入してきて一気に国王陛下のいる本陣に迫ったのです。


 本陣は大混乱。敵は国王陛下の金色の鎧を見つけ、一気に斬り掛かってきました。国王陛下のお命は風前の灯となります。


 ……その時に陛下の前に飛び込んできた大柄な騎士がおりました。その騎士は剣を振るうと国王陛下を狙う敵兵をバッタバッタと薙ぎ倒し、救援が駆け付けるまで国王陛下の御身を守り抜いたのでございます。


 その騎士は伯爵家の三男だったそうですけど、命を救われた事に感激した国王陛下は彼を即座に伯爵に叙任し(仮にですけど)身辺に取り立てました。


 すると彼はそれ以降も、さまざまな作戦で武勇を発揮し、作戦にも適切な提案をし、ついには王国を勝利に導いたとの事でした。


 彼のおかげで王国が救われた事は、出征した貴族の間では常識となっているという事で、命を救われた件もあって国王陛下は彼を戦功第一と讃え「いかなる褒美をも必ず叶える」と約束したのだそうです。


 するとその騎士、ルーデリック・ハスタミヤン伯爵はこう言ったのです。


「ハルプクスク公爵家の第一姫、レイリーレ様を私の妻に頂きたい」


 と。


 ……どういう事なのですか? 


「わ、私はそのハスタミヤン伯爵とは面識がございません。人違いではないのですか?」


「ハスタミヤンは今度彼に与えられた家名で、元々はロスタン伯爵家の三男だそうだ」


「同じ事です。私はルーデリックという名前に覚えがございません」


 社交で名前を聞いた事があれば覚えている筈です。しかし、覚えがないという事は少なくとも名乗られた事はないと思います。そもそも私に挨拶に来てダンスをせがむ殿方は、最低でも伯爵家のご嫡男までで、伯爵家の三男なんかは遠慮して近付きません。


 おそらく絶対に面識がないのです。それなのにいきなり求婚してくるわけがありません。何かの間違いです。


「落ち着けレイリーレ。残念だが間違いではない。国王陛下も、私も、彼に何度も確認した。お前で間違いないそうだ」


 ルーデリック様曰く、社交で私を遠くから見て一目惚れしたのだそうです。国王様にもお父様にも「領地も地位もいらないから、是非レイリーレ姫を我が妻に」と申し入れたそうですね。


 伯爵が公爵家の姫に求婚など、普通なら不敬の罪にも問われようかという大問題ですが、ルーデリック様は今回の戦争の英雄です。国王陛下も「なんでも望むものを」と言ってしまっています。


 困った国王陛下がお父様に命じた(実際には頭を下げてなんとかお願いして)事で、私のハスタミヤン伯爵家への嫁入りが決まったという事でした。


 私は激怒しました。


「そ、そんな事で! そんな事で私が伯爵家なんかに嫁入りしなければならないのですか!」


 お父様は苦しそうな表情をしながらそれでもこう言いました。


「そんな事とはなんだ。国王陛下の勅命だぞ」


「ちょ、勅命と言ったって、限度があるではございませんか! 伯爵家! しかもお話によればそのルーデリック様の興した新興のお家という事ではございませんか!」


 出来立てほやほやの伯爵家など、伝統ある歴史を持つ子爵家や男爵家にも劣ります。そんな家に、王国の頂点たる公爵家の姫が嫁ぐなど、前代未聞です。


「お断り! お断りしてくださいませ! お父様!」


 私は詰め寄ったのですが、いつでも私のいう事はニコニコと受け入れて下さるお父様が、この時ばかりは頑として聞き入れて下さいません。


「もう決まった事だ」


「お父様!」


「この縁談を断るということは勅命に背くということ。王国に叛意を示すという事だぞ。分かっているのか? レイリーレ」


 お父様の言っていることが分からないわけではありません。国王陛下の勅命は神の名と同じ。それほど重いのです。


 しかし納得は出来ません。私はお父様にもお母様にも次期公爵のお兄様にも何度も何度も訴えましたが、全て却下されました。


「かわいそうだが」「かわいそうなレイリーレ」「残念だが妹よ」と仰いながら、結局は諦めて伯爵の嫁になれというのです。


 私は怒り狂いました。どうしてですか! なんで私が伯爵夫人なんかにならなければならないのですか! いくらなんでも酷すぎます! そんな低い身分になるために、厳しい教育に耐えて一流の貴婦人になったわけではございませんよ!


 しかし、私の声は届きません。絶望した! 私は絶望しました。この家にも、勝手にこんな婚姻を押し付けてきた国王陛下、そしてこの国にもです!


 私は家出を決意いたしました。


  ◇◇◇


 私は密かに公爵邸を抜け出しました。


 公爵邸は王都郊外にあり、大きな森に近接しているのです。私は子供の頃には森でよく遊んだ事があって、その時に抜け道を見付けていたのでした。


 外出着の上からしっかりしたコートを羽織り、頭には質素な鍔広帽です。足元はブーツを選択しました。大きな手提げのバッグには下着を何枚も詰め込みましたよ。


 目的地は王都から西に馬車で二日程行ったところにある公爵領です。そこの領都には私の乳母が住んでおります。彼女は平民ですから匿ってもらえれば、お父様の追跡からも逃れられるでしょう。


 私は早朝にバッグを抱えてお部屋を抜け出し、庭園を足早に過ぎると森の中に入りました。


 子供の頃の記憶を辿りながら森の中を進みます。あの頃なら潜れた茂みも今の私では掻き分けて進むしかありません。


 顔に蜘蛛の巣を被ること数回。何回か転倒したこともあり私は落ち葉だらけになって、ようやく森を抜けました。


 そこはもう王都から大きく離れた農地の広がる一帯でした。少し離れた所に街道が見えます。事前に覚えておいた地図通りなら、あれが西街道でしょう。あれに沿って西を目指せば公爵領に着くはずです。


 街道は舗装されておらず、土を固めただけの造りです。ですから馬車で通ると耐え難いほど揺れるのですが、歩く分には快適でしたね。


 ただ、誰も歩いておらず、高くなった日差しの下、私は一人で黙々と歩きました。


 歩くのは良いのですが、バッグが重いです。私はあまり重いものは持った事がありません。肩に掛けたり担いだり、色々工夫したのですがどうにもなりませんでした。


 ヒーヒー言いながら長い時間歩いていましたら、村が見えてきました。木の柵で囲われた中に、二十軒ほど小さな家が並んでいます。


 た、たくさん歩きましたから、今日はここまでにいたしましょう。私はバッグを引き摺るように村に入りました。門の所にいる兵士は奇異なモノを見るような顔をしていましたが、咎めはしませんでした。


 街道の左右には建物が立ち並んでいましたけど、私にはどれが宿屋なのか分かりません。何度か公爵領まで行った時は途中で宿に泊まりましたけど、馬車から降りてすぐに中に導かれましたから、外観を覚えていないのです。


 人に尋ねようにも、なぜか十人ほどいる人々は私を遠巻きに見ているだけで近付いて来ようとしません。困りました。お腹も空きましたし、休みたいのに!


 普段なら私が少し目線を動かすだけで侍女が飛んできてくれますのに……。私はなんだか急に心細くなってきました。でも、今更お屋敷に戻るわけには参りません。


 こ、この村がダメなら、もっと先の村に行ってみるしかありません。私はもはや鉛の塊のように重いバッグを抱え直そうとしました。


 と、その時突然バッグが軽くなったのです。驚く私でしたが、バッグはそのまま上に上がって私の顔の前で停止しました。


「バカなのか君は。こんな所で何をしている」


 見ると私の前に男性が、大きな男性が立っていました。その彼が私の手提げバッグを片手で持って持ち上げていたのです。


 驚くより先に怒りが来ました。バカとはなんですか! この私をバカ呼ばわりした者などこれまでいませんでしたよ!


「失礼な! 何者ですか! 貴方は! 名乗りなさい!」


 私の叱責に、男性は。濃い金髪を短く刈り、日焼けした顔に鋭い青い瞳を持つその男性は、驚いたような表情を浮かべました。


 そして何故かニヤッと笑うとこう名乗りました。


「ディックというものだ。しがない傭兵だよ。お嬢さん、あんた貴族だろう?」


 私は目を丸くしてしまいます。


「どうしてそれが……」


 ディックは呆れたように言いました。


「そんな上等な格好して気取った帽子被ってたら分からない方がおかしいだろう。見ろ、村人は何事かと思って近付いて来ないじゃないか」


 それで誰も近付いて来てくれなかったようです。ディックは首を振り振り言いました。


「近付いて来ないだけならまだマシだ。ならず者や野盗に見付けられたら大変な事になる所だった」


「大変な事?」


 首を傾げる私に、ディックは顔を近付けていやらしい感じで笑いました。


「拐かして、犯して、売り払う」


 私は真っ青になって震え上がりました。た、確かにその危険はあるかもしれません! どうして気が付かなかったのでしょう!


 ガタガタ震え出す私を睨みながらディックは冷たく言いました。


「早く屋敷に戻ることだ。送ってやるから」


 しかし、今更帰れません。私は決めたのです。


「嫌です! 帰りません! 私はハルプスクス領都まで行くのです!」


 ディックが眉を顰めます。


「ハルプスクス? 歩いたらここから七日は掛かるぞ? 君に歩けるのか?」


 な、七日? 馬車で二日だから歩いて三日くらいだと思っていた私は仰天しました。


 しかし、もう後戻りは出来ません。私は歯を食い縛ります。


「行きます!」


 歩き出そうとする私を、ディックがバッグを引っ張って止めました。


「待て待て!」


「止めないで下さいませ!


 バッグを引っ張る私を、ディックは困ったような顔で見ていましたけど、やがてため息一つ吐いてからこう言いました。


「分かった。俺が護衛してやろう。とても一人では行かせられん」


 私はウッとなりました。確かに、お屋敷の外の事が何も分からぬ私が、一人で旅をするのは無謀だと、薄々感じ始めていた所です。案内人と、それとならず者や野盗からの護衛は必要でしょう。


 しかし、この大男がそのならず者ではない保証が果たしてあるのでしょうか? 護衛を任せたはいいけど、そのまま拐かされたら……。


 胡乱な目付きで睨む私に、ディックは呆れたような顔で頭を掻きつつ言いました。


「他に当てがあるならそっちに任せるがね。贅沢が言える立場なのか? 君は?」


 ……確かに、当ては全然ありません。このまま一人で進んでも野垂れ死か拐かされて売られるか……。ならばもうこの男に賭けるしかないでしょう。


「わ、分かりました。ディック。貴方を私の護衛に任命します!」


 ディックはなぜか少しホッとしたような表情になりましたね。


「分かった。じゃぁ、金だな。俺は傭兵だからな。金さえくれれば君を必ず守ってやろう」


 しかし、ディックの言葉に私は首を傾げました。


「……お金?」


 沈黙が流れます。いえ、お金は知っています。お屋敷に商人を呼んでお買い物をする時に、侍女とか執事が商人に渡しているアレですね。知っては、います。


 けど、触った事もございません。もちろん、今も持っていませんよ。ええ。


 呆然としていたディックが一転、いきなり顔を赤くして怒鳴りました。


「金も持たずにどうやって旅をする予定だったんだ! このバカー!」


 私はみぎゃーっとなりながら反論します。


「し、仕方がないではありませんか! 知らなかったのだから!」


「流石に金も払えない奴は護衛出来ないぞ! 今すぐ屋敷に戻れ、このバカ娘!」


 そ、それは困ります。戻りたくはありませんし、ディックに見捨てられたら旅が続けられなくなります。お金、お金の代わり……。


 あ、私は思い出して手袋を脱ぎ、指にしていたターコイズの指輪を外して差し出しました。


「これで、これでどうですか!」


 ディックは指輪を見て何故か硬直しました。ジッとターコイズの青い輝きを見ています。


「こ、幸運のお守りだと言われていつも身に付けているのです。どうでしょう?」


 ディックは花でも受け取るような優しい手つきで指輪を私の手から引き取ると、凄く嬉しそうな笑顔でターコイズに見入っていました。そんなに気に入ったのかしら?


「……分かった。この指輪に誓って、君の身柄を引き受けよう」


 ディックの言葉に私はホッと息を吐いたのでした。


  ◇◇◇


 ディックと旅を始めてみて、私はつくづく自分の考えの甘さに呆れ果てました。


 まず、ディック曰くハルプクスク公爵領の領都まではディックの足で七日だという事で、少し歩いただけで彼は「君の足に合わせたら十日になる」と言いました。


 しかも私は体力もありませんから休憩も多く取らなければなりません。もっと掛かってもおかしくないという話なのでした。


 それと宿です。私が宿に泊まりたいと言ったらディックは「お勧めは出来ないな」と言いました。なぜ?


「君が知っている宿は貴族向けの宿だろう? そんな宿は大きな街にしかない。小さな村にある宿は狭くて汚くて虫だらけだ。そんな所に君が泊まれるとは思えないね」


 ……確かにそれはあまりゾッとしないお話ではあります。それならまだ暖かいこの時期なら野宿した方が快適なのだそうです。


「あと、追っ手の問題もある。君の家から君を探して追っ手が来る可能性があるだろう」


 確かにその通りです。その場合は宿からまず捜索されるだろうとのこと。追っ手から逃れるには出来るだけ宿は避けた方がいいでしょう。


 それとディックは服装の変更を指示しました。コートと帽子は売って、スカーフとオンボロな上着を着せられました。これなら平民の旅行者に見えるだろうと。ディックは元より厚手の上着にズボン、そしてブーツという平民の出立ですからね。


 私のバッグも売って、ディックの背負っている大きな背嚢に私の荷物を入れました。ディックはそれ以外に長い剣を持っています。しかし彼は気にした様子もなく荷物を背負っていました。


 村を出て街道を行きます。私は荷物がないからかなり楽になりました。


 街道には人の通りがほとんどありません。ごく稀に旅人が歩いていたり、荷馬車が通ったりするだけです。ディック曰く街道の混み具合には時期もあるそうで、麦刈のシーズンには荷馬車が地平線の向こうまで連なる事もあるんだとか。今は初秋ですからね。


 街道の周囲は農地だったり草原だったり、林になったりします。意外に人が住んでいないんだな、という印象でしたね。ディックは「人が住める土地には条件があるのだ。まず水が確保出来なければいけないからな」と言っていました。他にも農地に出来る土地にも条件があるそうです。


 初日は辺りが薄暗くなる前に、林の中で野宿の準備を始めました。かなり林の奥に入ります。これは街道を行く野盗に見つからないようにするためとの事でした。


 水は昼間に通り掛かった小川で革の袋にたっぷり汲んであります。食料も黒くて硬いパンを村で買ってあります。小さな焚き火を熾してその前で私とディックは最初の夕食を食べました。


 ……美味しい美味しくない以前に、酸味があってカチカチなパンは本当に食べ物なのか疑うレベルでしたし、木のコップに注がれた水も革の匂いが付いてしまっていて臭くて飲めません。


 昨日まで豪華な晩餐を当たり前のように食べていた私ですからね。あまりの激変にそれは心が挫けそうになりましたよ。でもそんな事を言ったらディックに帰れと言われるでしょう。私は水にパンを浸して柔らかくして、どうにか口に押し込みました。


 興味深そうに見守るディックに、私は憎まれ口を叩きます。


「何を見ているのですか! この私にこんな粗末な晩餐を食べさせて! せめてウサギでも狩ってくればいいでしょうに!」


 ディックは目を丸くします。


「狩るのはいいが、料理は出来るのか?」


「ええ。私は料理も学びましたからね。お肉さえあれば立派な料理にして差し上げますよ!」


 もちろん、調理器具も調味料もないのにお料理が出来る筈がございません。


 しかし、ディックは興味深げに「ふむ」と頷くと、立ち上がって林の中に消えていきました。


 私が首を傾げて待っていますと、やがて彼は何かをぶら下げて帰ってきました。そしてそれを私の前に投げ出します。


「それ、狩ってきたぞ。作ってもらおうか」


 見ると、本当にウサギです。手足がまだピクピクと痙攣しています。私は硬直しました。丸のままのウサギなんて生まれて初めて見たのです。


「そ、その……、せめてお肉にしてはいただけませんか?」


「捌くのは調理担当の仕事だろう。ほら、短剣を貸してやるから」


 ……む、無理! 無理ですわ! 獣を捌くなんて公爵家の姫として学んだ料理の手順にはありませんでしたもの!


 私はピクピクしているウサギの前で途方に暮れたのでした。


  ◇◇◇


 ……短剣でピッとウサギの首に切れ目を入れます。


 赤い血が吹き出してきますから、そのまま後ろ足を縛った紐でウサギを木の枝に吊り下げます。


 こうして血抜きをしないとお肉が鉄臭くなるしすぐ悪くなってしまうのです。そのためにディックは獲物を殴って気絶させた状態で持ってくるのです。


 血抜きが終わったらまずはお腹を掻っ捌いて内臓を取り出します。それから首を落として切れ目を入れ。皮を剥いて鮮やかなピンク色のお肉を切り出し……。


「ずいぶん手際が良くなったじゃないか」


 ディックが呆れたような声を出します。それはね。三日もやれば慣れましたよ。初日にはディックに教えられつつ、泣きながら切り捌いたものですけど。


 肉に塩とハーブを干したものを揉み込み、串に刺して焚き火に翳します。この条件ではせいぜいこんな料理しか出来ませんね。せめてお鍋でもあればシチューが作れるのですが。


 ウサギの串焼きと黒バンをバリバリ貪る私をディックは面白そうに見ていましたね。それはね。一日中延々歩いていればお腹も空きますよ。空腹は最高の調味料と言うではありませんか。


 川で水浴びし、洗濯をして、トイレはその辺の茂みで済ませるのにも慣れました。虫も獣も蛇も魚も、慣れればなんという事もありません。


「三日で慣れるのはさすがに順応性が高過ぎるんじゃないか?」


 とディックは呆れてますけどね。


 ついでに言えばディックにも慣れました。この大男は私を非常にぞんざいに扱いますけども、それは悪意を持っての事ではなく、貴婦人と接した事があまりないからだという事が分かってきました。


 私の状態を見て休憩を入れたり、夜は私の寝床を草や毛布で整えてくれたり、何より不必要に私に触れないようにしてくれます。気遣いは出来る人なのです。


 明るいし、諸国を旅して傭兵稼業をしているから色々面白い話を知っているので話をしていて飽きません。年齢は二十七歳で私より十も上ですから、接していて安心感も感じます。


 正直、ディックのおかげで旅は思いがけないほど楽しいものになっていました。家出直後にはどうなることかと思っていたのですけど。


 ただ、慣れたとはいえ、私はまだまだ街道を旅することの恐ろしさが分かっていなかったのです。……それは、五日目の夜に起こったのでした。


  ◇◇◇


 夜半過ぎ、私はディックに揺り起こされました。熟睡していた私は寝ぼけます。


「……もう少し寝させなさい。メイリーン……」


「バカ! 誰がメイリーンだ! 起きろ。囲まれてる!」


 へ? さすがに私が驚いて飛び起きますと間近にディックの緊張した顔があります。ドキッとします。


「野盗の集団だ。囲まれている。人数は十人くらい」


 私は自分の血の気が引く音を聞きました。


「た、大変ではありませんか!」


「ああ、大変だ。おそらく、前の村で君を見られたな」


 私を見た村の男たちが、私を攫おうと追跡して来たというのです。な、なぜ?


「身寄りのない、旅をしている女性なんて拐われて売られても文句は言えないのだ。君は美人だしな。高く売れると思われたのだろう」


 ディックに美人と言われて頬が熱くなりますがそれどころではありません。


「ね、狙いは私ということですね」


「そういう事だな」


「で、では私は少なくとも殺されないという事ですね!」


 私が言うと、ディックは鼻白んだような表情になりました。私が一人で生き残ろうと画策していると誤解したのでしょう。


「そうだがな。死んだ方がマシ、というような目には遭わされるぞ」


「違います! 彼らは私を傷付けずに捕らえたいと思っている。ならば私はそれを逆手に取って立ち回ればいいという事ですね!」


 私が言うとディックは唖然としたような顔をしました。そしで歯を見せて微笑みます。


「ずいぶん大胆な事を言い出すのだな。お姫様」


 あれ? 私はディックには身元を明かしていない筈ですけど、どうして私が姫だと分かったのでしょうか?


「分かった。良い覚悟だ。しかし十人だから簡単な敵ではないぞ?」


「分かっていますわ! 二人で無礼者をやっつけますわよ!」


 私とディックは見つめ合い、ニヤッと笑うと拳を打ち合わせたのでした。


 ディックは野営地を決める時、必ず襲撃を警戒して少し高くなった場所を選びます。


 今回も丘になった場所に寝ていましたので、襲撃者は麓から上って来るということになります。


 野盗(おそらく普段は善良な村人)がそろそろと丘を上って来て、そして野営地の焚き火が見える地点まで来たタイミング。


 そのタイミングを見極めて私は一気に飛び出して丘を駆け下りました。


「逃げたぞ!」「女の方だ!」「追え! 捕まえろ!」


 なんて声が聞こえましたね。彼らは細い松明を持っていますから、それで場所が分かります。私は灯は何も持たずに夜の林を駆けます。そのために少し前から目を閉じて目を闇に慣らしたのです、そして、子供の頃から私は木々の中を走るのは得意なのです。


 私は木の間をすり抜け茂みを飛び越え走ります。後ろや横からはガサガサと追っ手が迫る音がします。ですけど矢を撃って来るとか、石を投げて来るとかそういう気配はありません。私を無傷で捕らえたいからでしょう。読み通りです。


 私は野盗を微妙に引きつけつつ走り、ある程度坂を下ったら今度は上ります。下には逃げられないと思って戻ったように見えたでしょう。追っ手は勢い込んで私に迫って来ます。


 そして私が元の野営地に飛び込むと、続いて野盗たちがそのまま焚き火で照らされた空間に雪崩れ込んで来ました。


 そこにディックが剣を構えて待っていたのです。


 ディックの長い剣がブワンと振られると、私に迫っていた三人の野盗の首が一度に飛びました。


「ぐ」「が」「げ?」


 とか間抜けな声を上げて絶命した三人の男の首から血が吹き出します。兎で見慣れているからなんとも思いません。


 その瞬間にはディックはその後ろに現れた野盗に突き掛かっていました。鋭い踏み込みと焚き火に輝く銀色の剣。


 続けて駆け上がって来た三人を、その一突きでまとめて貫きます。もちろん野盗は全員即死です。ディックはそのまま体当たりをして、死体になった三人を坂道から転げ落としました。


 そしてディックは闇の中に飛び込みます。遅れて上がって来ようとしていた残り五人はディックによってあっという間に斬り伏せられたのでした。


 ……私はディックのあまりの手際の良さに驚きましたよ。


「無茶苦茶強いのですね。貴方」


「なに。君が撹乱してくれていたからな。それに君がいなければ弓矢を使われて往生しただろう。君の作戦のおかげだ」


 そう言ってディックは優しく微笑みました。……その彼を見て、私は心が心地良くざわめきました。


 それはまだはっきりとはしない感情でしたけども、なんとなく私は、彼と離れがたい想いを、惹かれる想いをこの頃から感じ始めていたのです。


  ◇◇◇


「ディック。私を連れて行ってはくれないかしら?」


 明日にはハルプクスクの領都に着くという夜。私はディックに持ち掛けました。


 ディックは仰天していましたね。


「何を言い出すのだ」


「だって私は、領都に行ってもその後の展望がないんですもの」


 優しい乳母は匿ってはくれるでしょうけど、その後どうやって生きて行ったらいいか、私には分かりません。


「それなら、このまま貴方と旅をした方が、楽しいかなって」


 気の合う彼と世界中を旅して回る。それは心踊る想像でした。きっと楽しくワクワクする日々になる事でしょう。そして……。


「なんなら、貴方のお嫁さんになってあげてもいいわよ?」


 見も知らぬ伯爵に嫁ぐくらいなら、頼りになって一緒にいて心地よいディックの奥さんになって、このまま一緒に旅が出来たら……。私はそこまで彼を慕うようになっていたのです。


 ですけどディックは顔を赤くしながらも、少し強張った厳しい表情をしたまま、明確な返答はくれませんでした。


 私は不満でしたけど、私は既に彼について行くと決めていましたからね。旅をしながら何回でも求婚して、その内に彼の奥さんにして貰う気でいたのです。


 翌朝、私たちはハルプクスク領都の城門に達しました。石造りの城壁に開けられた巨大な門です。


 そしてその城門をディックと並んで潜った瞬間でした。


 ダダダダっと足音を立てて鎧姿の数十人の兵士が私とディックを囲んだのです。私は驚きに身をすくめディックが私を背に庇うように一歩前に出ます。


「動くな! 抵抗するとタダではおかぬぞ!」


 兵士が叫びます。むむむ、まさか領都で兵士に囲まれるなんて。さすがにこの人数ではディックでも斬り抜けられないでしょう。どうしたものか……。


 すると、兵士の輪から一人の身なりの良い紳士が出てきました。その紳士を見て私は固まります。


「おとなしくせよ! レイリーレ!」


「お、お父様?」


 なんと、私のお父様であるハルプクスク公爵その人でした。なんでこんなところにいるのですか?


「お前を追ってきたに決まっているだろう! レイリーレ! なんという事をしてくれたのだ!」


 お父様は何故か沈痛な表情をそのお顔に浮かべていました。


「王命の結婚を嫌がって出奔するなど! 許されぬ事だ! したがって私はお前を罰せねばならぬ!」


 ……確かに。お父様のお立場ではそうするしかありません。王が命じた事は絶対です。それに逆らえば即座に死刑でもおかしくはありません。王族に連なる公爵家でも、いえ、公爵家であるからこそ、王命には絶対服従が求められるのです。


 よりにもよって公爵家の第一姫が、王命に逆らって出奔したとなれば、当主であるお父様は政治的に難しい立場に追い込まれてしまった事でしょう。それを挽回するには、私を自ら捕らえて罰するしかないのです。


 お父様は必死な目をしていました。私はそれで私がお父様の気持ちを慮っていなかった事に気付いたのです。


「二人とも捕らえて牢に入れよ! 逆らうなら容赦するな!」


 こ、このままでは私のせいでディックまで牢に入れられてしまいます! どうしましょう! なんとか彼だけでも……。私は思わず彼を見上げたのですが、ディックは何故か私の事を見てニコッと笑いました。


 そしてお父様の方をキッと見据えるといきなり大音声を上げたのです。


「あいや、待たれよ! ハルプクスク公爵閣下!」


 その声量に走り寄ろうとしていた兵士は足を止め、お父様も目を丸くしてしまいます。ディックは何故か私の肩を抱き寄せると、朗々とお父様に向かってこう言いました。


「レイリーレ姫は王命に逆らってはおらぬ。これこうして、彼女は私と共にいるのだから!」


 は? と首を傾げたのは私だけではありません。お父様も訝しげに眉を寄せます。


 しかしディックは自信に満ちた表情でなんとこう言い放ったのです。


「このルーデリック・ハルタミヤン伯爵、レイリーレ姫と婚姻の誓いを交わしてハネムーンの最中でござる」


 ……え?


 私は頭が真っ白になりましたけど、お父様の方は名乗りを聞いて愕然としていらっしゃいます。


「お、おおお? 確かにその姿はハルタミヤン伯爵ではないか! こ、これは一体どういう事なのだ?」


 なんですって? ディックが、ハルタミヤン伯爵。つまり王命で私が結婚を命じられた相手ですって? 私はあんぐり口を開けてしまったのですが、ディックはしれっとした顔で懐から何かを取り出しました。そ、それは。


「これこの通り。姫からは誓いの指輪も頂いております。姫の瞳と同じ色の宝石の指輪を」


 護衛の代金として渡したターコイズの指輪です。確かに、ターコイズは私の瞳の色ですけど。


「姫からは私の嫁になるとのお約束も頂いております」


 ……それは昨日の夜の私の話のことなのではないでしょうか?


「ですから、レイリーレ姫は王命に背いてはおりませぬ。誤解でございます。公爵」


 ……嘘ではありませんけど。嘘ではありませんけども、なんでしょう。この納得がいかないこの気持ちは。ディックがハスタミヤン伯爵で、私の婚約者で、私は彼に誓いの指輪を与えて、彼にプロポーズして……。


 お父様が疑問で一杯という風に私に問いました。


「……本当なのか? レイリーレ?」


 ……私は頭がグルグルになり、訳が分からなくなり、なんだかもう何もかも全てどうでもいいような気分になり、ディックに思い切り抱き付きながらこう叫んだのでした。


「ええ! 私はディック、違う。えー、ハルタミヤン伯爵の元にお嫁に参ります! 参りますとも!」


  ◇◇◇


 後からディックに聞いたところによると、私の事を夜会で見かけて一目惚れしていた彼は、戦争の褒賞で私との結婚を求めたものの。


「いくらなんでも君に失礼だった」


 と思い直し、私とお父様に謝罪して婚約を解消するために公爵邸へ向かっている途中だったのだそうです。


 ちなみにディックは十代の頃から最近まで傭兵として放浪していて「伯爵なんて柄ではないからこれも返上しよう」と思っていたのだそう。


 そうしたら偶然、あの村で私の家出を見付けた、という訳ですね。


「音を上げたら公爵邸に引き返そうと思ったのだが、君が意外と逞しくてな」


 結局領都まで送る事になってしまい、その過程で彼も私の事がどんどん好きになってしまったので、領都に着いたら正体を明かして再度プロポーズしようと思っていたのだそうです。


「だから君の方からプロポースしてくれて手間が省けた」


 との事。……一生の不覚でした。そういう事だと知っていたら、あんな事は言いませんでしたのに!


 結局私は王都に戻ってからディック、ルーデリックと正式に婚約。翌年婚儀を挙げて私はハスタミヤン伯爵夫人になりました。


 伯爵と言っても国王陛下の命の恩人として信頼され、将軍としての才覚も非常に高く評価されているルーデリックは既に王国軍の重鎮と言っても過言ではありません。


 そして公爵姫である私が特例で嫁いだのですから、その権勢は更に補強されましたし、私たちの子供の代には侯爵の位が与えられるだろうと言われております。伯爵家は伯爵家でもハスタミヤン家は特別扱いとなり、私も社交界では少なくとも侯爵夫人相当の扱いを受けるようになりましたよ。


 もっともルーデリックは「私は貴族なんて柄じゃないんだけどな」と嘆いて放浪生活を懐かしんでいますけどね。私だって彼と放浪して楽しく世界中を旅する生活に未練がありました。


 ですから私たちは結婚してからも、お屋敷を二人抜け出しては、いろんな所へ旅に出かけました。貴族のお仕事を全部ほっぽってね。お父様とか国王陛下は困っていましたけどね。


 旅が趣味の伯爵夫妻は平民の間でも噂になり、おかげで私とディックは「放浪伯爵」なんて呼ばれて、吟遊詩人が唄うような存在になってしまったみたいですけどね。でも、竜を倒したなんて嘘ですよ。せいぜい熊を狩って食べたくらいですわ。


八月八日、マックガーデン様より「暗殺女帝ベルリュージュ」が発売になります(*゜▽゜)ノイラストは匈歌ハトリ先生が担当して下さいました。素晴らしい本になってますから是非買って下さいね!

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あいや、またれよ、て 駄目だ、最後の伯爵の名乗りあげの口調のせいで歌舞伎にしか思えん。それまでの内容すっとんだ(笑)
ラスト、語り継がれるうちにどこぞの国の皇妃の逸話が混ざっちゃったんでしょうか。(笑) どテンプレ直球の素直な話なのは違いないのに、姫様がうじうじ悩んだりしないし旦那はきっちり護衛に徹しようとしている…
オチがわかっている話をどのように料理するのかは作家様の腕次第ですわね。 嫋やかな姫かと思いきや未来の旦那様を何度も惚れ直させるなんてやりますわね、姫。 姫の冒険が王命に血を通わせたことになりますかしら…
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