黒ノ少女
星霊の進撃により出動命令が出されたジーク達。自分達ね持ち場についたジーク達だったが…。
『ジャッカジャッカジャッカ・・・』
走るたびに背中に背負った[訓練用魔銃]が鈍い音を立てる。
先の放送後ジーク達は武装を施し街の東口に向かっていた、隣を走るのはギン。
「おい、ジークなんだかわくわくするな!」
笑顔で話しかけてくるギンに振り返るジーク。
「わくわくするって・・・これが初任務なんだぞ?お前、どきどきの間違いじゃねぇーのぉ?」
「いや、これはわくわくだ、間違いないぜ、初任務だからこそだ!訓練とは違うんだぜ?」
「け、そんなんで死んでも知らねぇからな」
笑いながら話していると目の前に巨大な人口の石壁、扉が現れた、東口門に着いたのだ。
元々は各国との戦争のために作られた物だが戦争が無くなった今では星霊を妨げるための新たな役目を担っている。その壁の向こうからは爆発音や銃声が聞こえてくる、すでに壁の向こうでは上級生の戦闘が始まっているようだ。
「おいおい、いよいよって感じだな……なあ?ジー………?」
後ろを見るとそこにはジークの姿は無く、ジークは東門から左の方に向かって歩き始めていた。
「ほら、置いてくぞ、俺達の持ち場はもっと向こうだ」
そう言って歩いて行くジークの後ろをつまらなそうな顔をしたギンがついて行った。
「なあ…何でそんなつまらなそうなんだ?俺達の初任務なんだぞ?もしかしたら星霊を討伐してヒーローになれるかもしれないし、何より自分の強さがわかるじゃねーか」
「へっ、どうせこの城壁を乗り越えて侵入して来る星霊なんてほとんどいないし、仮に侵入できたとしても他の学生が片付けて俺達の出る幕なんてねーよ、それに入って来ない事が一番いいことなんだし」
「はーん、そんなもんかねぇ~。まあ、そうだとしても俺はもう少しお祭り気分を味あわせてもらうよ、俺はね」
「まあ、お前は何でも楽しみながらやる奴だからな、今までそれで上手くやってきたんだから好きにするといいさ。ほらもうすぐで俺達の持ち場だ」
そう言ってギンの方に振り返った時だった。
『ドォオンンン!!……』
城壁の壁が外側から破壊されその爆風にギンが巻き込まれ姿を消した。
「!!!…っギン!!」
「たっく、ジークお前がさっき言ってた事少し信じて油断しちまってたじゃねーか!!」
ギンの声が聞こえて無事を確認し胸を撫で下ろす。
だが爆粉が止んでギンを見た時再び場の空気が固まる。
仰向けに倒れるギンの上にカエルに似た形をした星霊がのしかかりそれをギンがライフル型訓練用魔銃で押し戻そうとしていた。
「ジーク!そこでボケボケして見てないでこいつを何とかしてくれ!!」
「・・・・・・・・・・・・」
「何黙り込んでんだ!早くこいつを・・・・!!、まさか!お前!こいつがカエルに似ているから!!おま!、早く!クソ!死んだら恨んじゃうからな!それでもいいのか!?」
それでも下を見てうつむき続けるジーク、まったく動く気配が無い。
そして、水の星霊が口を開き口内に水を圧縮し始めた、水は圧縮して放出すると恐ろしい切れ味を発生させる、低級のこいつらの水圧でも骨を折る程度の威力は有る、それを直接顔に喰らおうものなら・・・。
もう死を覚悟するほか無かった、そうしてギンは目を硬くつぶった。
「もうだめだ・・・・」
ギンがそう言った時だった。
『バキ!!』
体の上から重さが消えた・・・、目を開けた、そこにはジークが立っていた、だが武器を構えていない。
「ジークお前もしかして・・・殴った?」
ギンがそう聞くとジークは何も言わずにうなずいた。
「ははは・・・星霊を殴るって、てかお前カエルだけど大丈夫なの?」
「は?何が?」
「だってさっき何かすごい怖がって動けなかったんじゃないの?」
「ふははははは!なにを言っているんだい!?俺はただ等身大の大きさになったにっくきカエルに制裁を加えられると喜び、歓喜していただけだぜ?あはははははははははは!!!」
そして笑い、狂喜したジークはっふとんだカエルに殴りかかり上にふっとばし、ショットガン型訓練用魔銃を片手で空に向け発砲した。『ズダァァン!!ズダァアン!!ズダァァン!!』
「まあ、あの子ったら・・・こんなに立派になっちゃて」
ギンがほろりと呟く、
「お前は俺の母さんか」
星霊をかたずけていつの間にか戻ってきていたジークが『ぺちん』と頬を叩いた。
「お、いつの間に・・・お帰り」
「たっく・・・何ニタニタしてるんだ、こっちそれなりに必死だったんだぞ?」
「はははは、悪ぃ悪ぃでもさー、ジーク・・アレ見てみろよ」
そう言ってギンが指さした先を目で追ってみたその先には・・・・。
「マジかよ・・・・たっく・・上級生は何やってんだか」
先の砦の穴から大量の同型の星霊が進入してきている。
「・・・・ジーク・・・行くしかないっしょ!!」
「ああ、そうだな・・・だがその前に一つ言わせてくれ。」
「ん?何だ」
「さっきは嘘言って悪かったな!」
「オウ!気にすんな!」
この言葉を切っ先に二人とも左右に駆け出す。
「さっきはお前たちの同僚にお世話になりましたよっと!!」
そう言ってギンはポケットから青い玉[水晶」を取り出し、握った。
すると手の平が黄土色に一瞬光った、そしてギンが手の平を開くとそこには中に魔法印がえがかれた黄土色の水晶・・・魔石が握られていた。
そしてギンはそれをライフルの持ち手の部分の窪みにはめ込んだ。
「ジーク!上手く当たるなよ!」
「あ?」
ギンの声に振り向いたジークの目に映ったのは地面に銃口を当てているギンの姿だった。
「?・・・・!!、馬鹿郎!!ちょ!おま!待て!それは・・・・」
ジークが言葉を最後まで言い終わる前にギンの指は引き金を引いた。
「さあ!派手にはじけ飛べ!!アースニードル!!」
するとギンの目の前が盛り上がったと思ったら地面が砕け地中から人一人分ぐらいの大量の棘が突き出てきた、そしてそれは星霊の大群・・・・・とジークに向かって地中から突き出しながら進んでいく。
「ちょおばばばばばばばぶべばぶけばぶぅ!!!」意味不明な言葉を発しながら横に飛んだジーク、そして地面に落ちる。
『どしゃぁぁぁあああ・・・』
「て・・・・て・・・て・・・てめえええええええええええええ!!死んだらどうするぅ!!!」
ギンに吠える、だがギンは満面の笑顔でピースをしている。思わずぶん殴りたくなる、だが今はそれどころでは無いと踏みとどまり穴の方に振り向く。
だがそこにはすでに星霊の姿は無かった、いや・・生きている星霊は居なかった、そして攻撃と同時に無数の棘が重なり合い砦の穴を塞いでいた。
穴を塞いだのは見事だと思う、だが避けなければ自分もそこに突き上げられカエルの串刺しの仲間入りしていたと考えると背筋に寒気が走った。
そして再びギンの方に振り向く、ギンは満足そうな顔で。
「うん、27匹って所か、1匹残っちゃたけど」
「だぁれぇが1匹かああああああああ!!」
ジークが立ち上がりギンに向かって走り出す。
「はははは、冗談だよ、だから気にするな。」
「いんや!死にかけたんだぞ!?一発喰らいやがれ!!おらぁ!!」
『ボキュウ!!!』
ジークの一撃はギンの顔の横を通り、ギンの背後に飛びかかろうとしていたカエルを殴り飛ばした。
「この任務終わった後に絶対一撃殴らせろ。」
「いいぜ!・・・逃げるから」
「け、ふざけてる・・・」
「ああ、ふざけてるな、こいつらまだいたのか、しかも囲まれてるしな」
どこから沸いたのかいつの間にか周りを囲まれていた、そしてジークとギンはお互いに身を寄せ合う。
「まっ、おしおきは後だ、ギン。その前にこいつらをなんとかしないとな、」
「さってと、こいつらどうするかねぇ・・・」
「ギン、さっきの魔弾使えるか?」
「使えたらそうしてるよ、駄目だねぇこりゃあぁ、下級の魔石じゃあ俺の一発でも発動したら砕けちまう、それにと・・・、これは不味いかもね。」
「どうした?」
「いやね、魔銃が壊れた・・・。」
ギンの手には銃身が半壊状態の魔銃が握られていた。
「おいおい、少しはそのあふれ出る魔力を加減したらどうなんだ?エレメントの天才さん?」
「これでも加減した方なんだぜ?」
「ふー、じゃあ俺の使え、」
そう言うとジークは自分の魔銃をギンに受け渡した。
ギンもそれを何の躊躇もせず受け取った。
「お、悪いね、ありがたく貰い受けるよ。」
「ま、それで適当にかたずけとけよ。あ、後それ俺のだから絶対に壊すなよ?」
「わかったわかった、じゃ、敵さんも殺意丸出しだしそろそろおっぱじめますか?」
「そうだな、こんな雑魚、エレメントはまるっきりわからんがそんなのは関係ねぇ・・・拳で十分だ!!」
拳で手のひらを叩くジーク。
「きゃー!かっこいー!」
それを冷やかすギン。
「けっ、うっせー。とりあえずと・・・・喧嘩で負ける気がしねー」
そう呟くとジークは星霊に向かって走り出した。
「ゲームスタート!」
ギンもそうつぶやくと魔銃での戦闘を始めた。
銃声と星霊が叩きつけられる音が辺りにこだまする。
「行くぜ!カエル共!!」
ジークが数体の星霊の群れに飛び込んでいく。そして一瞬にして星霊がぶっ飛ぶ。
「ひゅー、かれいだねーこれは僕も負けてらん無いねぇ・・ジークに内緒で少しエレメント使わせてもらうよ」
そう言ったギンの手には緑色の魔石が握られていた。
「魔石装填!。綺麗に育てよ!!」
『パラサイドプラント!!』
銃口からは緑の閃光が発射される、そして数体の星霊に命中した、一見何もないように見えた次の瞬間。星霊が苦しそうな声を上げ体内から大量の植物が生えてきた、そして植物が生長するにつれカエルは干からびそして反比例するようにみずみずしい花をいくつも咲かせた。
「うん!、綺麗に咲いた!」
ギンがそれに満足していると手元から嫌な音がした。
『カラン、・・・カラカラカララン・・・』
「いけね、また壊しちったジークに怒られる、・・・まあ、戦闘で壊れたって事にすればいいか。じゃあ、僕はあとは高みの見物と行こうかね。もう武器ないし・・・後はジークにまかせよと」
そう言いながらも彼に襲い掛かってくる星霊には手にえがいた魔法印で制裁を加えている。
「・・・・?、何であいつ魔銃使ってないんだ?てか俺の銃は?・・・よっと。」
ギンの方を見ながら星霊の攻撃をかわし、反撃を加える。
「何かそろそろ飽きてきたな、後何匹だ?」
辺りを見る限りもういない、目の前に居るのが最後のようだ、それを見たジークは星霊に向かって走り出し、そして飛んだ。
「そっれぇぇぇぇぇぇえ!ラストォォォォォォォオ!!」
『ベゴォォォ!』
カエルが地面に沈む。ジークが立ち上がる。
「ふー、終わったな。てかカエルもう怖くないな、もしかして俺克服した?」
ジークが一人で少し喜んでいると後ろからギンが寄ってきた。
「よ!お疲れさん!見事だったね!」
親指を立てて歩み寄って来るギン。
「おう!お前もな!んで・・・俺の魔銃は?」
「はははっはははははっはははははは!」
「笑ってちゃあわからねぇなぁあ・・・・壊したのか?」
「はははっはははははっはははははは!」
「壊したんだな?じゃあ・・・・」
『こり・・・・・』
「うがあああああああ!」
ジークは満面の笑顔を加をに浮かべギンが突き立てている親指を少し変な方にまげた、少し、と言うのが痛いのだ。叫びながら転げまわるギンを見ればどれくらい痛いかわかる。
「うああああ!いったいいいい!!!早く治癒魔術師おおおお!」
「安心しろ、ちょっと外しただけだここをこう曲げれば・・・てい!」『こき・・・・』
「あばあああああ!!・・・・?…治った?」
指の痛みがなくなり立ち上がる。
「お前立ち直り本とに早いのな、尊敬するわ」
ジークが呆れたようすで呟く。
「まあな!今はそれよりもテンションがやばいだろ?」
「ふはは、それもそうだな、じゃあとりあえず!」
「初任務成功おめでとう!!」
「初任務成功おめでとうだぜ!!」
そして二人で歓喜の言葉を上げ、お互いに手を打ち鳴らそうと手を上げ打ち鳴らした。
『ドオオオオォォォォォォォォ・・・・』
「?」
「あれ?手を打ち鳴らした時の音って『ドオオオオォォォォォォォ・・・・・』だったけ?ジーク」「さあなたぶんこの音は外の上級生の無責任さから生まれた音だろうよ」
砦の方が爆粉で包まれている、そして奥から巨大な影・・・。明らかに人間の形ではない・・・。
爆粉が落ち着き影の主が姿をあらわす。
「ゴーレム!!、何でこんな奴が!?情報にはなっかったろ!こんな上級星霊!」
「来ちまったもんはしょうがないだろ!お前ならどうする!ジーク!逃げるか!?」
「いや、こんだけのデカイ音だ!しばらくすれば上級生達が救援に来るはずだ!それまで持ちこたえるぞ!!」
「そうこなくちゃね!じゃあ生きて帰るぞ!!」「ああ!絶対だ!!」
そして二人でゴーレムに向かって駆け出す、近ずけば近ずくほどゴーレムも巨大さが明白になる、10メートルくらいは有るであろうその巨体に近ずけば近ずくほど威圧感が増していく。
「本当にこれ大丈夫なのかよ・・・」
「やるだけやってみるしかなっいでしょ!!」
ギンはそう言うとポッケトから魔石を持てるだけ取り出した、数個手から転げ落ちた。
「たっく・・・また大量に魔石買い込まなくちゃいけないよ・・・」
はあ・・・と、ため息を吐くと両手に持つ魔石が真紅に輝き始めた。
「魔銃からの射出じゃないからいく分威力が落ちちゃうけど、止めるぐらいなら行けるだろ!」
そしてギンが飛び・・ゴーレムの懐に飛び込み両手をゴーレムの腹に押し付けた、魔石と共に。
すると魔石が砕け、ギンの手を中心に火属性の魔法印が激しい光と共にゴーレムの腹に刻まれた。するとゴーレムが手を横に払ったがギンは間一髪のとこでかわし、後ろに退く。
そしてギンが退くのと入れ違いざまにジークがゴーレムに突っ込んで行く、ジークの手には赤黒い魔術印が刻まれていた。「ジーク!!後は頼んだぜ!!」
「おう!!任された!」
ジークがゴーレムに向かって攻撃をかわしながら駆けて行く、そして、走っていた勢いで地面を蹴り、飛んだ。
「おらぁぁぁぁ!!」
『破壊の焔!!』
手の赤黒い魔術印が光り出す、そしてジークの一撃はギンが刻み込んだ火の魔法印をに直撃したと同時に凄まじい爆炎が発生した。
そしてジークが爆風に吹っ飛ばされる。
「ぶぉあ!!?」
ゴロンゴロンとジークが転がってきた。
「ジーク、大丈夫か?」「へへ、心配してるにしては緊迫感が無い声だな。」
「まあ大丈夫ってわかってたからね、ははは…そのために手に重力の魔法印を刻んでたんだろ?爆発と同時に発動させて自分の周りの空気の重力を変えて炎のベクトルを変えた。そんなとこだろ?」
「ちぇ、もう少し驚けよ、つまらん。」
「たっく、まあ終わったし外も静かになったようだし任務報告にかえ」
「グオオオオァアオオ!!!」
「!!!」
帰ろうと背を向けた二人の背中に雄叫びが投げかけられた。
振り向く二人、だがそこには絶望その物がたたずんでいた。
「嘘だろ?確かに本気だった!本気だったのに……、何で無傷なんだよ!!」
そこには大爆発を受けてもなお無傷でたたずんでいるゴーレムの姿があった。
「ジーク!!逃げるぞ!あいつは俺達の手に負える奴じゃない!」自分の無力さが身にしみる、力がない。それが悔しかった、敵に背を向けて逃げる自分が許せなかった。
「ジーク!!何してんだ!早く行くぞ!」
「あ、ああ…」そう言ってギンの方に駆け出したその時、ギンの足下に亀裂が走った、避けようとしたが間に合わなかった。地面が盛り上がり巨大な影……ゴーレムが姿を表した。
ギンは突き上げられ宙を舞う。ジークの目には時間の流れが遅くなったように感じた、だが次の瞬間ギンの姿が消えた、いや…消えたんじゃない、頭ではわかっていた、だが認めたくなかった、ゴーレムの巨大な拳がギンを襲った。
そして民家に何かが当たって砕ける音がした…聞きたくなかった、認めたくなかった…。
「クソォォオオォォオォォ!!!!」
憎悪と憎しみがこみ上げて来る。
頭より先に体が動く、気ずいた時にはすでにゴーレムに向かって走り出していた。頭ではかなわないと分かっているのに…。
「うわぁぁああぁぁあ!!!!」
『ガッ!』
当たった…でも傷ついてるのは自分だ。
「くそ!!クソ!!糞!!くそがぁぁぁぁ!!」
殴り続けるジークの拳からは血が流れ落ちる。
「おい…ジーク止めろ…そうやってもお前が傷つくだけだ。」
昔ケンカをしてた時にギンに言われた言葉が頭の中に蘇った。
だが、今はもうそれを言ってくれる友人はもういない…奪われたのだ…。
『ギンはもう…』こんな言葉が頭をよぎった…。
体中から力が抜けた、絶望に満たされていく…。
もう全てがどうでも良くなった…。そして体に力が入らなくなり…ひざまずいた。
それを待っていたかのようにゴーレムがジークを持ち上げ、握り潰そうと力を入れ始めた…。
体中に激痛が走る…骨が折れる音がする…。
だがそれらの事全てがどうでも良くなってしまった…。
もう死んでしまえばいっそ楽になる、そう考えていた…。
2体目のゴーレムが近ずいてくるジークを殺す為に。
もはや恐怖さえも感じない中、死を覚悟し、目をつぶった。
「悪いな…ギン、お前と生きて帰るって言ったのにな…」
『ダガン!』
『ズダァァン…』
一発の銃声と何か重い物が倒れる音が突如として辺りに鳴り響いた。
ジークは何が起きたのかと後ろを振り向く。
そこにはジークたちが何をしてもビクともしない強固なゴーレムの胸に風穴が空いて倒れていた…。
自分で目を疑った…、そして追い討ちをかけるように銃弾の雨が降り注ぐ。
『ダガン!ダガン!ダガン!ダガン!ダガン!ダガン!ダガン!ダガン!ダガン!ダガン!ダガン!ダガン!』
ゴーレムが…ただの石ころになった…いや、砕かれたのだ。
ジークは自分が死んで夢でも見ているのではないか、とさえ思えた。
そしてジークの上を一つの影が飛び越え…そして。
ジークを握っているゴーレムの腕にその影は降り立った…。
ジークは今起きている状況にも十分驚いていたが…その影の正体を見て言葉を失った。今この状況を作り出したジークの前に立っている人影は…ジークと差ほど年が離れていない少女なのだ。
年はそんなに変わらないのにここまで力の差があるのかとさえ思った。
そして一瞬見せ顔は綺麗で、色白の肌に金色の目、そして黒くて長い髪、そして揉み上げから長く垂れ下がるその部位だけが白髪の髪が目を引いた。
さらに、彼女が羽織る黒いマント……それはジークを助けるために舞い降りた天使と言うよりも、まさに死二神 と言った方がふさわしいかもしれない。
ジークが彼女の事を見つめていると少し振り向くとまた視線を前に戻すと、マントの腰の辺りに両手を潜らせた…。
そして勢い良く抜いた両手には右手には黒い大型ハンドガン、左手には銀色の大型ハンドガンが握られていた…。すると彼女はジークを掴んでるゴーレムの腕にそれを突き付け、…発砲した。
銃声がこだまする。
それと同時に体が落ちていく感覚に捕らわれた、いや…実際に落ちているのだ。
ゴーレムの腕が途中で砕けて無くなっている…。
少女はあの一撃であの強固な体を砕いたのだ。
そして腕と一緒に落下し体が自由になる、空を見上げるているとゴーレムと少女が目に入る。
少女を殴ろうと腕を振るゴーレム、だがそれをあっけなくかわし…左手のハンドガンが火を吹きゴーレムの腕が落下する。そして少女はゴーレムに左右のハンドガンをゴーレムに向けて乱射した。
『カツ、カッ、カラン…』
薬莢が落ちる音が静かに鳴り響く。
しばしの静寂の中、ゴーレムが倒れ、轟音が鳴り響いた。
これが全部一瞬の出来事だった…そして少女はハンドガンを腰に納めるとジークの方に振り向き、歩み寄ってきた。
色々聞きたい事は有ったし、ギンの事も心配だった…だがこれ以上激痛で意識を保っていられなかった。
そして少女が目の前に立ったとき、意識が途絶えた。
気を失ってしまったジーク。これから何が始まるのか、そして少女の正体は。