巨大コンピュータ『ヴィオラ』
それは、真っ暗な廊下を歩き進めその先に光が見え始めたころだった。奥のほうから聞こえてくる電子音がぼくの耳に届いてくる。
発信源に近づくにつれ、聞こえてくる電子音は次第に大きくなっていく。やがてぼくは、電子音鳴り響く部屋へと辿り着く。
地下深くに広がる大きな円形の空間。そこは舞台劇や模擬戦などが行えるくらい広さでありながら空間の中央には、はるか高い天井まで届くほど巨大なコンピュータが設置されている。
コンピュータの周りを展開されている数枚のディスプレイが回転している。外があんな状態になったって言うのにコイツは呑気に•••
ぱっと見、問題なく正常に稼働しているコンピュータへ向け、思わず愚痴が出る。ぼくは、そんなコンピュータにゆっくりと近づいていく。
「よう、ヴィオラ」
巨大コンピュータを見上げ、ぼくはそれに挨拶する。
「こんにちはウォロン。19時間20分ぶりですね」
「おう!にしても毎度毎度細かいな、お前は」
「そうでしょうか?もっと細かくお伝えすることも可能ですが•••」
「いや、いい•••」
そう言いぼくは、コンピュータからの申し出を丁重にお断りした。一度経験済みだから知っている。コイツが細かくと言ったらマジで細かく伝えてくる。あの時はそれ聞いたおかげで頭痛になって、ソッコー地上に戻ったからな〜。そんな数ヶ月前のことが、ふと頭の中を過ぎる。
「そんなことより、随分やられましたね」
十数時間前のぼくの状態と異なることを認識したヴィオラが、話し切り出す。というか、そんなことよりって、お前がそれ言うのか⁉︎
切り出そうと思った話を先に言われ、ぼくは頭の中でもヴィオラにツッコミを入れる。ま、話が早くて助かるから良いか。
「ああ、まぁな。ヴィオラ!早速で悪いがバイタルチェックを頼む」
「了解」
ぼくは早速、ヴィオラに自分たちの状態を確認して貰うよう頼んだ。それを聞いたヴィオラは端末から緑色の電子線を伸ばし、それをぼくに向け、電子線を上から下に動かしスキャンを開始した。