使者
「で、どうしますか」
ランベル、フィーンとの話し合いを終えたぼくは部屋のベッドで横になっていた。
「……ヴィオラはどう考える?」
「ワタシはなにも。ウォロンの決めたことに従うだけです」
「……そうか」
「ただ……ワタシとしては彼ら意見に同意ですかね」
「王族との話し合いは無駄か」
「はい……」
ランベルたちからこの都市にここを統治する王族たちの現状。
外を知らない住民。外を知り得ながらもそれを口にすれば抹殺される都市のシステム。そうまでしたい王族の狙いは……たぶんそう言うことなのだろう。
そんな連中と話し合いなんて成立するはずもない。高性能AIであるヴィオラは現実的な結論としてランベルたちの考えに同意すると意思を決定している。
ぼくは……自分の住んでた村がどうして焼かれたのかを知りたい。
予想はついている。あとはこれが正解か?どうかを確認したい。そのためには……
「ヴィオラ。やっぱりぼくは話し合いを選ぶよ」
話し合いするしないしろ、王族たちに会わなくちゃ始まらないのは同じだ。
「明日には王族からの使者が来る。そこから中枢へのパイプを繋いでいこう」
「了解。して彼女はどうします?」
ヴィオラの音声にぼくの眼は反対のベッドで眠るティアを写す。
「場合によっては襲撃。そんな状況で彼女は足手纏な存在になります」
「ああ、ティアはここに置いて行く。あんな痛みや悲しみをもう味わって欲しくはない」
それを口にするぼくの脳裏にはティアと初めて会った。あの灰色の世界が浮かんでいた。
翌日
ぼくとティアは昨日同様、機兵倉庫で量産機の解体作業に取り掛かっていた。
ある程度作業を進めていた二機目も問題無く午前中に解体作業を終えたぼくらは、倉庫内で少し早めの昼休憩に入っていた。
「おいし〜!」
両手で掴んだチキンサンドを豪快に頬張るティア。
そんなティアの傍でぼくは紅茶を口にする。
頑張って仕事して、疲れたら休んで、お腹が空いたらご飯を食べる。そんな平凡な日々がこの都市に住む人達の当たり前だ。そう思うと夜中に決めたことが少しばかり揺らぎそうになった。
「ねぇ、ティア」
ぼくの呼びかけにティアはチキンサンドを持つ手とそれを頬張ろうとした口を止める。
「ここに来て、なにか思い出したこととかある?気になったこととか?」
ぼくの問にティアは少し考えるような素振りを見せるも……
「ううん。なにも思い出せない」
ティアはそう答えた。
「……そっか」
「ごめんなさい」
「どうして謝るの?」
「思い出せてないから怒ってるのかと思って……」
さきほどまでの元気な笑顔とは裏腹にティアはその瞳に涙を浮かべいた。
どうやらティアの返答に対するぼくの表情がよくなかったぽい。確かに自分でも少し暗かったかも。
「いや、別に怒ってるとかじゃないから。ごめんね。紛らわしかったね」
「……うん」
頷くも既に遅く、ぽろぽろとティアは涙を流していた。
「ごめんね。ほらチキンサンド食べな」
「……うん」
促すままティアは涙を流しながらも両手で掴むチキンサンドを食べ直す。
流石にタイミングをミスったな〜。そう思いつつぼくも自分の分のチキンサンドに手を付けようとした時、
「おーい、ウォロンさん。ちょっといいかな?」
扉のほうからぼくを呼ぶ声がした。
声のしたほうに視線を向けると、倉庫の責任者ルセットさんともう一人は……見覚えのない人がいた。
「例の使者ですね」
「ああ、」
聞こえてくるヴィオラの音声にぼくは小さく零す。
「呼ばれたからちょっと行ってくるね。ゆっくり食べてて」
ティアのそう言い、ぼくはルセットさんたちがいる扉へ駆ける。
「すいません。お待たせしました」
到着したぼくはルセットさんともう一人に会釈する。
「すいません、ウォロンさんにお客さんです」
「初めまして、わたくしエルベラ都市民管理局局員デリア・ミューリュと申します」
「どうも、ウォロン・エルユです」
陽の光差すゆったりとした昼時、彼らの言う通りその使者はぼくらの元にやってきた。




