Al使いと都市の謎
「あらためて、俺はランベル・エスカ。よろしく!」
席から立ち、自身の名を名乗るとともにその手をぼくへ伸ばす。
伸びるその手を前に、ぼくの喉を行き場の無い唾が通る。
「まぁ、警戒すんのも無理ないか。一応言っとく、俺はあんたの敵じゃない」
手を握らぬぼくに、ランベルは苦笑しつつも真っ直ぐな目を向ける。
「ウォロン・エルユ」
「おう!よろしく。ウォロン」
握手を交わすぼくの手をランベルは、大きく上下に振る。
冷静な面持ちの割に元気な人なんだな〜。ぼくは感じた。
「で、そっちのAIは?」
ぼくの手を離すランベルは、その目をぼくの袖口に移す。
「はぁ〜。私の音声はウォロンにしか聞こえてないはずなんですが……。ヴィオラです。どうぞよろしく」
音声が聞こえてるという理解出来ない現象にため息を流し、ランベルに対し挨拶をするヴィオラ。
「ヴィオラね〜。ヴィオラ……、ヴィオラ……、Vか。てことはお前が七番目か」
「それも知っているってことは、貴方のAI……」
七番目。その単語にヴィオラが反応を示すと、その声はヴィオラの音声を遮る。
「ええ、お察しの通り。私ですよV。いえ、今はヴィオラでしたね」
ぼくらの背後。振り返ると一人の女性が立っていた。
ぼくはその女性に驚きを隠せなかった。ウエイトレス姿の彼女は、部屋を借りる時に対応してくれたその人だったのだから。
「F。やっぱり貴女でしたか」
「いいえ。今の私の名前はフィーン。これからはそう呼んで欲しいわ。私も貴女をヴィオラと呼ぶから」
「はぁ〜。お好きにどうぞ」
「妹の相変わらずの反応に、お姉ちゃん悲しい」
そう言って、両手で目元を擦るフィーンさん。
……え、妹!?
「ヴィオラ?」
「なんですかウォロン」
「お前……女だったのか?」
「……正気ですか?気づいて無かったんですか」
驚愕しているのが分かるヴィオラの音声に、ぼくは自分の手元に「うん」と頷く。
「あ、いや、AIだから性別なんて無いもんだと思ってたから……」
「まぁ、どっちかと言われたら女ってだけなんでお気になさらず」
「……すまん」
さすがに無頓着だったか?
気にするな。というヴィオラにそう思ったぼくは一言謝った。
「それでランベルさんはぼくに何の用が、」
フィーンさんとの挨拶も終え、ぼくは自分の手元を見ていた目でランベルさんを見る。
同じAI持ちだからか?投げた質問が帰ってくるまでの間、ぼくは頭の中でその答えを予測する。
「ああ、お前外の大陸出身なんだろ。どこから来たんだ?」
「……ここから南、結構離れた島にあるニューって名前の街からだ」
ニュー。その単語を耳にしたランベルの眉が僅かに反応を示す。
「てことはウォロン。目的はこの国の王族か?」
ランベルは一度でぼくの目的を言い当てる。
「ああ、」
その言葉をぼくはただ肯定する。
「悪いことは言わねえ、やめとけ。ただ個人を相手にするならいざ知らず、国相手はそもそも戦いにすらならねえ」
「何もいきなり殴り込んだりなんかしないよ。ぼくはただ事実を知るために話がしたいんだ」
ランベルの警告にぼくは臆すること無く目的を提示する。
「話……か。アイツら相手じゃ天地がひっくり返っても無理だな」
「なぜ、そう断言できるのですか?」
無理と言い切るランベルにヴィオラがその理由を聞く。
「……お前らに聞く。この都市を住民を見て何を思った?」
「街の人はみんな笑顔で、メシも美味かった。聞いてた話と違って、争いの知らない平和な感じだった。……けど」
「違い過ぎるせいか?余計何かあるのでは……と」
ぼくとヴィオラは揃って、ランベルにそれを説明した。
「なるほど。……お前ら。今から俺が口にする事はここにいる四人以外には他言無用で頼む」
そう言いながらランベルは手招きをし、ぼくに近くにくるように指示した。
「よく聞けよ。この都市に住む人たちは、海の向こう側にある他の大陸を知らない」




