無くても決めたこと
ぼくはその依頼書を掲示板から引き剥がし、記されている情報に目を通す。
“機兵解体の依頼”
王城機兵倉庫で行う旧式の機兵解体に伴う人員募集
募集役職
・破壊屋
・機兵整備士
場所:王城機兵倉庫
報酬:金貨五枚
“機兵”十数年前からこの世界で開発・運用されている人型兵器。建設用、発掘用、そして戦争用、これまで様々な型が製造されたいる。ぼく自身製造に関わってことはないが、解体なら何度か行ったことがある。それこそ一人で出来るくらいには、
依頼内容としては個人的に問題ない。現場は王城関係、内部について何かしらの情報が得られるだろう。……問題は、
依頼書に向けていた目をぼくは、自分の後ろに立つ彼女・ティアの方に落とした。
物珍しそうにギルド内を見渡しているティア。ふとぼくから向けられる視線に気付いたのか?ティアは、ぼくのことを見上げる。
「どうしたんですか?」
ティアは、その透き通る声と共に可愛いらしく首を傾げる。
ティアは、ぼくが持つ依頼書が目にすると「あ、依頼決まったんですか?」と少し楽しそうな声色で聞いてきた。
「あ、うん、見つたんだ。けど……」
ティアの反応に、ぼくは歯切れの悪い返しをする。
「けど?」
歯切れの悪いぼくの返しを復唱するティア。
ティアとぼくとの間で一瞬、無の時間が生まれる。
……ダメだ。自分が経験者だからって決める訳にはいかないな。
この解体作業、ティアでも出来ることはある。けれどそれ以上に危険もある。国の内部情報を得られる絶好のチャンスだが、今回は見送るか。
そう思いぼくは、持っている依頼書を掲示板に貼り直すことにした。
その時!?ぼくの手から依頼書が勢いよく引っ張られた。
「見せて下さい」
依頼書を取り上げたのは、ティアだった。そう言って彼女はぼくから依頼書を奪うと、それに記されている内容を読み始めた。
読み終えたのか?暫くするとティアの目がぼくに向いていた。
「破壊屋を募集してるんですよね。これ、何がダメなんですか?」
依頼人が破壊屋を募集をしていることを知り、それでなぜ止めるのかを聞くティア。
「ティア。破壊屋の仕事は危険が多い上、この機兵解体はその中でも特に危険な作業なんだ」
命の危険を伴う仕事。その重さを理解してもらうためにぼくは目線をティアに合わせ、きちんと説明する。
「破壊屋の仕事を手伝ってくれるとは言ってくれたけど、初めてのがこれは……ティアにはまだ……」
そう言いかけた時、ティアはぼくの言葉を遮って「手伝う!」と口にした。
「……でも」
「ウォロンさん、わたしには記憶がありません。……だけど、幼くもありません!」
依頼書を両手で強く握り締めるティアが、真っ直ぐぼくを見つめる。
「……わかった。この依頼受けよう」
真剣なティアの顔に負け、この依頼を受けることにした。心配な気持ちがあるぼくとは別に、ティアは初めての仕事に「やったー!」と声をあげている。
まぁ、ティアには比較的安全な作業について貰えるよう相手方に言っておこう。
先が思いやられる不安感と内部の情報が知れるかもという好機。そんな二つの感情を抱えながらぼくは、依頼書を受付に提示するのだった。




