二人の門番
「身分証を見せて下さい」
中央都市に足を踏み入れるぼくらを門番の兵士が止める。
キチッとした身嗜みに、相手に怖さを当て得るような帽子の被り方、有事があった際に対応するための長槍、門を中央にその両翼に立つ二人の兵士。
彼らは門番と入国管理官を兼任しているらしく都市に入ろうととするぼくらの足を止め、入国してもよい人物なのか品定めするため身分証の提示を要求する。
ぼくは服の内ポケットから身分証2枚を取り出し、それを兵士に渡した。
「都市に来た目的は?」
身分証を確認しながらここに来た目的を質問する兵士。
「仕事を探しにギルドへ」
質問の返しを耳にしつつ身分証の写真とぼくらの顔を照らし合わせる兵士たち。時折、首を傾げる素振りを見せる。
「……はい、確認出来ました」
兵士はそう言って、預かっていた身分証をぼくに返す。
「ありがとうございます」
返ってきた身分証を内ポケットに仕舞い直し、ぼくらは門を抜け都市内部へ入った。
*
「なぁ、」
中央都市にやって来た人たちをちょうど送った時、一緒に門番をやっている同僚から声をかけらる。
「なに?」
たった今見送った男女二人組、その女の子のほうを指差す。
「あの女の子、第三王女に似てなかったか?」
「ちゃんと見てないから知らん」
考え顔を見せる同僚の言葉を興味無さそうに一言で一掃するもう一人の門番。
「第一俺は、大人でかっこいい女性がタイプなんだ。お子様には興味ない。それに……」
一瞬、言葉を詰まらせる門番。
「例の第三王女なら第一王子が始末したって噂だが」
その門番の口から飛び出た言葉に恐怖を感じたのか?同僚の門番がもう一人の門番の口を塞ぐ。
「バカ野郎!それを口にすんじゃね。何処で誰が聞いてるか分かんねぇだぞ」
これでもかと門番の口を手で押さえながら辺りに目を配る同僚。
「んん……ッ、ハーハー。殺す気か⁉︎」
息苦しさに耐えかねた門番が、自分の口に張り付いている同僚の手を力強く引き剥がす。
「殺されんだよ!こっちが。誰かに聞かれて告げ口されてみろ、おれら速攻で打首だよ」
冷静な門番に対して、怒りで声を荒げる同僚の門番。
「今の国政に不満がある奴がどうなった。お前も知ってるだろ」
「……悪い。さすがに口を滑らせ過ぎた」
「まったくだぜ。これらは気をつけろよ」
同僚の怒りを前に門番は、さすがに自分が悪いと感じたのか?一言、彼に謝った。
「んじゃ、仕事に戻ろうぜ」
そう言うと同僚は所定の位置、門の左翼に位置する場所へ戻っていった。
戻る同僚の後ろ姿を前に、ふと門の奥に視線が移る門番。
もう誰も通っていないその道をジッと見つめながらも何事も無かったように門番は、自身の定位置である門の右翼へと戻っていった。
*