無音の影
「急になん……」
「静かに!動かないで」
何かあったのか?ヴィオラに聞こうとするもヴィオラは危機感のある音声でぼくの言葉を封じた。
理解しきれぬままヴィオラの指示に従い動かないでいることにしたが、流石に暇なのでぼくは目の前で鮮明になっていく視界を眺めることにした。
真っ暗で月明かりが差しづらい森の中。左から右に辺りを観察して見るとある事に気づいた。
あ〜そういうことか
真っ暗な森その奥で動く大きな影が二つ、いや三つか。ぼくの目に複数の影が確認出来た。ぼくはそいつらから僅かに視線を逸らしつつそいつらの動向を観察していく。
目的を達成したのか?そいつらは、暫くするとこの森を後に何処かへ移動して行った。
「……行ったか?」
「……みたいですね」
この場を離れて行くやつらを横目にヴィオラに声をかける。
「はぁー」
「ハァー」
居なくなったの確かに目にした後、ぼくとヴィオラは揃って喉の奥に詰まっていた息を吐き出す。
「ヴィオラ、よく気づいたな」
「奴らから発せられた索敵信号をキャッチしたので」
「やつらは気づいて無いのか?」
「信号をキャッチしてすぐ、スーツのインビジブルを起動させたので大丈夫です」
「流石、スーパーコンピュータだな」
「それほどでも」
人間の眼で認識出来ないモノをいち早く認識し、その後の出来事へ繋げないための対処を行う。「流石」と褒めるもぼくの言葉にヴィオラは、なんて事無いと淡々と発する。
「にしてもあの機体、少し変だったな。距離があるにしても駆動音一つ聞こえて来なかった」
「気づきましたか」
顎に手を当て考え込むぼくの耳にヴィオラ音声が入る。音声から察するにヴィオラも分かっているのだろう。
「機体の足音が無かった。恐らくだがホバータイプのモノ、加えてそのホバーによる音も無し」
「索敵を感知しましたが、それらによって齎される音も無かったです」
「てことは、その機体は結構な高性能機で、それを所持しているのは……」
「件の国ですね」
「はぁー、ったく何考えてんだが?」
ヴィオラと合わせていく情報の先に見える答えにぼくは思わず頭を掻く。