初飛行は安全に
天高く輝く太陽の下、青く広がる上空を飛行する戦闘機ディルバトス。しかし外からその姿を観測することは出来ない。
ディルバトスで空に羽ばたいてすぐ、ぼくはこの機体に備わっている機能の一つ【インビジブル】を起動させた。この機能は、その名の通り機体を透明化させ外からの視認を防ぐものだ。
破壊屋の仕事を始めてから気づいたことだが、この世界でこう言った飛行機に乗るのは特別なことで、王族や貴族の中でも所持しているのはごく一部らしい。
ま、そんなモノが襲撃された町から出たなんて発覚した日には周りは黙って無いだろうからね。
「ヴィオラ、正常に機能しているか?」
「インビジブルは、問題なく機能しております」
ぼくの質問に合わせて、操縦席のモニターに映る顔文字が動きを見せる。
「ティアは、大丈夫?」
ヴィオラからの報告を耳に受付つつぼくは後部座席に座るティアに声を掛けた。多分だけどティアはこういうのに乗るの始めてだと思う。
「うん!大丈夫だよ」
不安なんか感じさせないくらいの元気なティアの声が操縦席に帰ってきた。
ふと後ろを振り返ると、ティアの視線はコックピット窓の先に広がる景色に向いてた。
ティアはその大きな瞳に輝きを浮かべ空の下に広がる大地やそこから無数に伸びる木々にどこまでも続く大海を見渡している。
楽しげなティアの表情を眼にふと笑みが溢れる。そんなティアの様子を確認したぼくはその視線を再び前へ向けた。
それから飛行を続けること数時間、青かった空模様は段々と赤色を染まり始めていた。
「ヴィオラ、エルベラまでは後どれくらいだ?」
「まだ先ですね。あと二時間はあります」
「結構あるな」
「まぁ、海を越えますのでそれくらいは仕方ないかと」
ため息を落とすような顔文字をモニターに表示するヴィオラ。確かにコイツの言う通りだ。数時間の飛行を行っているとはいえ、ぼくらのいたあの町ニューからエルベラまでは海を越えなければ行けないほどの距離がある。
操縦しているこの機体“ディルバトス”であれば本来ここまでの時間はかからないのだが、それをしてしまうとインビジブルの効果が弱くなり誰かに見られてしまう可能性も出てくる。
あるのに使えないというのは厄介なものだ。
「仕方ない、ここいらで一晩待つか。ヴィオラ、機体を降ろせる場所を探してくれ」
「了解」
数秒後、ヴィオラから提示された近くの森にぼくはディルバトスを着陸させることにした。