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灰色世界に命の雫を  作者: 白馬 鏡
プロローグ ep1~ep13
10/37

その名は『ティア』

 「はじめまして。ぼくは、ウォロン•エルユ」

 あまり怖がらせ無いよう注意を払いつつ、まだ現状を知らない少女にぼくは名を名乗る。

 「ウォロン……さん?ウォロンさんは、何者なの?」

 耳にしたぼくの名前を復唱する少女。

 ぼくが何者なのか?質問する少女の震える瞳に、ぼくの姿が映っている。

 「ぼくは破壊屋をやってるんだ」

 「破壊屋……」

 「うん。古くなった建物を壊したり、危ない物を撤去をしたり、他にも色々、次に繋がることのために日々何かを壊す仕事だよ!」

 指折りながら破壊屋について説明する。説明を聞く少女の瞳から震えは、徐々に収まっていく。

 「大変?」

 破壊屋に興味を持ったのか?少女は続けて質問する。

 「う〜ん。まぁまぁ大変かな」

 少女からの質問に仕事風景を振り返るも自己流がすぎること思い出したぼくは、苦笑いを浮かべる。(一般的には破砕車を使用するが、ぼくの場合バスター(ガン)で一撃で破壊して、後に散らばった破片を回収している。この破片回収が少々大変なのだ)

 「それじゃ、次はぼくから質問。自分の名前は分かる?」

 自分の自己紹介である程度、少女の不安感や警戒心を解けたところで、改めて記憶に異常があるか確認する形でぼくは少女へ質問した。

 「……分からない」

 少し思い出そうとする様子を窺わせるも少女が口にした答えは変わらなかった。

 「他に覚えてることはある?」

 「何も覚えてない。ごめんなさい」

 質問に上手く返せなかったせいか。明るくなりつつあった少女の顔色がまた暗く落ち込む。

 「謝らなくて大丈夫だよ!むしろごめんね。起きたばっかりなのに色々聞いちゃって」

 少女の前でぼくは、気にしてないよ。と仕草を見せる。それでも少女は落ち込んでいく一方だ。

 実際、答えられなかったことには気にしてないのかもしれない。けど少女自身、何も覚えていないことに不安を感じているのだろう。

 「大丈夫だよ。ティア」

 落ち込み続ける少女にぼくは、そう声を掛ける。

 「ティア?」

 ふと顔を上げた少女が耳にしたその言葉を不思議そうに口にする。

 「うん、君の名前。記憶が戻るまで、そう呼んでいいかい?ティア」

 もう一度、ぼくはその名前で少女に呼びかける。

 「ティア……」

 「あ、もしかして気に入らないかな?だったら他のを考えないと、え~とルージュ、メラ、あとラール。他には……」

 少女の反応を見て、気に入らなかったのかな?と感じたぼくは、他の名前の候補を読み上げていく。

 「うん!わたしはティア」

 ハッキリとその名を名乗る少女の声が考え込むぼくの耳に流れる。

 「え、良いの⁉他にもいい名前あるよ」

 なんの不安からか?ティアという名を受け入れた少女に、ぼくは変な質問をする。

 「ううん、この名前気に入った。だから大丈夫だよ、ウォロンさん」

 元気にその名を名乗るティアの声が、心配そうにティアを見るぼくの心の不安を勢いよく払うのだった。

 ティア。少女に送ったその名前は、ぼくが昔、誰かを呼ぶためにとっさに思いついた初めての名前だった。

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