第七話;嵐の前の
「うん。翼くんさ、幻影の精度いいね。よく物を観察している証拠。ただ、偏りがあるね、風景は苦手かな?」
「うっ、‥はい。なんか繋ぎ合わせ?みたいなのができなくて、どうしても境目が出来てしまうんです。」
「それが分かっている事がすごいよ。それだったらスケッチブックを持って。絵を描いて見るといいかもしれませんね。それで想像力を養うのよ。」
「!想像力。はい!いこう!チャム!」
魔法を習う生徒達を見てまゆみは素直に凄いと思った。宵月の教え方が的確なのだ。教育はした事がないと言っていたから、才能だろうか。
本当は少し心配もしていたのだ。うちの生徒達は贔屓目に見なくても、とても将来有望な子達が揃ってる。加えて星魔獣のシリウスである。こんな田舎ではあまり話題にはならないが、首都圏では大騒ぎ案件である。だが、心配はすぐに消え去った。
最初警戒していたはずのシリウスもすっかり、普段通りだ。翼の特訓を見つつ近くに生えていた草で遊んでいた。‥いや、殆ど特訓の方は見てないな。あ、鼻に蝶々止まってる。
「一真くん。魔力の制御だけど、押さえつけてしまうとどうしても反発されてしまうんだ。だから、抑えるのではなく魔力を落とす感覚を掴むんだ。‥そうだな。もっと魔法を使おうとする前からイメージしてごらんなさい。」
「魔法を使う前から‥?」
「優くん。君が魔法を怖がるのも分かる。何が出るか分からないっていうのはすごく怖い事だと思う。だから、君はもっと強気になって、魔法に飲まれちゃダメよ。完全に運だとしても、引いて引き続けて自分の魔法を知るのよ。」
「自分の魔法を知る。うん。‥はい!」
教える最中宵月は顔には出さないが驚いていた。子供達の飲み込みが早過ぎるのだ。最初に見た時より、この短時間の間に目に見えて成長していた。
ここの先生は宵月を嬉しそうに見ているが、宵月の手柄ではない。殆どが子供達の潜在能力だ。そして、自分ができる事は、その潜在能力を引き出す為にアドバイスをする事だ。そしてこの子達は。
「(‥この子達は先生に恵まれたな。)」
魔法が上手くいくたびに、先生に駆け寄る子供達。そしてそれを嬉しそうに喜ぶ先生。この関係も子供達の成長に大きく噛んでいるのだろう。
「(最初はゲートの警戒の為だけに来たけど、よし!最後まで頑張ろうかな!)」
こうして、二日間という時間はあっという間に過ぎていった。
その日は雲ひとつない晴天。田舎では遊ぶ場所は多くないが無駄に広い敷地が沢山ある。だからこそやることは、大体が決まっているものだ。
「と!言うわけで!やろうぜ特訓!宵月さんに教わった今ならいけそうな気がする!」
何度も言うが、今日は雲ひとつない晴天。そして時期は夏入り。つまりとても暑いのだ。唯一の救いは前回から学び、木々のある広場へ移動した事だろう。一真は相変わらず元気に翼と優に声をかけた。
「あいあいさー!」
「今日は何するの?」
「今日はな!」
問題が発生しました。直ちに調整します。調整に失敗しました。聖魔力不足です。システムを稼働します。
システムエ#$です。何者かにより干@され#$た。直ちに!@します。排除のためゲート#開き%す。ゲートが地球に@#$$%。干渉元$定^&*@@
一方その頃。大人二人は握手を交わしていた。本日宵月は東京へ帰還するのだ。
「宵月さん今回は本当にありがとうございました。私は魔法があまり使えませんから、子供達も魔法をしっかりと学べて嬉しそうでした。この2日間信じられない程成長したと思います。」
「私も楽しかったです。私の方がなんだか初心を思い出してまって、勉強になりました。それと、子供達の成長は先生のおかげでもあるんですよ。」
二人は朗らかに笑いあった。
『第二次世界恐慌』まであと#$%^。
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