第五話;私は先生だもの
制御できない魔法の使用はとても危険だ。優は慎重な性格であるから、大丈夫だと思っていたが、基本的に子供は試したい盛りだ。一真が魔法を使うような事があれば止めようと密かに見守っていたものが一人。
「元気なのはいい事です!」
まゆみ先生は、にっこりと微笑み足元に目を向ける。
「本格的に彼らに魔法を学ぶ機会があった方が良いと先生は思うの。‥どう?チャムくん。」
「アンッ!」
「あら賛成してくれるのね!」
まゆみに気づいたチャムがひょっこりと顔を覗かせていたのだ。オレンジ色の瞳はキラキラとまゆみ先生を見つめる。可愛いものだ。可愛いものを見つめると癒されるのは何故だろう?
「ねえ、チャムくん。この間の授業覚えてる?星魔獣に関して教えたでしょ?」
「アンッ!」
「ふふ。チャムくんには私がどういう風に見えてるのかしら?」
頭を撫でると、思った以上にふわふわしている。尻尾を振って、気持ちよさそうに目を細める姿に印象悪くは見えてなさそうだと自己解釈をすることにする。
するとぴっくりと反応するとチャムは耳をピンとはり3人のいる方角を眺める。耳を澄ますと遠くでチャムがいないことに気づいたであろう翼の、チャムを探す声がしていた。よく聞こえるものだ。
「もう時間ね。‥ねえチャムくん。翼くんの事、いやできればあの3人の事お願いできる?」
「わふ?」
「ふふ。私の感なんだけどね、このまま行けばあの子達は村を出るわ。恐らく一緒に。その時に力になってほしいの。」
「アンッ!」
「ふふ。でもチャムくんも無理はダメよ!あなたは優しいから無理しちゃいそう。」
「わふ?」
「不思議そうな顔。分かるわよ。先生だもの。あなたは優しい子。‥それから無茶な契約はしてないって事とね!‥あぁ、引き止めちゃってごめんなさいね。皆んな呼んでるわね。」
「アンッ!」
元気よく駆け出していくチャムを見送り、3人の子供達は大丈夫だろうと先生は帰宅すべく、足を一歩踏み出した。
【チャム
種;星魔獣シリウス 契約者;高峰翼
魔法;炎 属性;火 魔力;800/999】
【小鳥遊 まゆみ(29)
職業;教師 魔法;感知 属性;無 魔力;20/999】
「早く講師を見つけないと、最近なんか嫌な予感がする。」
その呟きは誰にも聞かれることなく周囲に溶け込んだ。そしてその感は正しかった。最悪の恐怖は既に隣を歩いていたのだ。
『第二次魔界恐慌』まであと72時間。
ありがとうございました。本日は初めてだったので一気に投稿しました。しばらくは一日一話更新で後ほどゆっくりペースになると思います。
少しでも気になるって思ってくれたら嬉しいです。