第四話;止められてるんでしょ?
雲ひとつない晴天。田舎では遊ぶ場所は少ないが、無駄に広い敷地が沢山ある。だからこそやることは、大体が決まっているものだ。
「と!言うわけで!やろうぜ特訓!」
何度も言うが、今日は雲ひとつない晴天。そして時期は夏入り。つまりとても暑いのだ。八重凪 一真はそれを感じさせない程の元気で、翼と優に声をかけた。
田舎は幼馴染という概念があまり存在しない。なんせ人口が少ないのだ。年が近いもの全員が幼馴染だ。しかし、この3人は家が連なっており年齢も同じ事から特に仲が良い。
「あいあいさー!!」
「うーん。一真、特訓って何するの?」
「決まってんだろ。魔法を上手く使えるようになる!だって『風』なんだぜ!使えるようになったらちょーすげーじゃん!」
「あれ、でも一真っておばさん達に禁止されてなかった?魔力の制御ができないからって。」
一真は、持てば職には困らないと言われる自然系の魔法の持ち主だ。しかも一般家庭の生まれにも関わらず、魔力量が非常に多い。一般人の平均レベルの倍もあり扱いきれないという現状にあった。
【八重凪 一真(10歳)現在。
職業;未定 魔法;風魔法 属性;風 魔力;200/999】
「急に冷静になるんじゃねーよ。翼。だから特訓すんだって!3人で考えれば使えるようになるかもしれんだろ??」
「‥はぁ。やめた方が良い。おれ、第一魔法あんま使えないし、制御する段階じゃない。何が出るかわからないんだ。」
一真を止めた優も魔法が使えない理由があった。魔力量は一般の平均レベルより多いが、子供でも少しずつ慣れていけば、扱えないレベルのものではない。それでは何故かというと、優は隔離遺伝が影響していた。
自身の使える魔法は『カード』。カードには様々な事象や現象が描かれており、自身にも何を引いてしまうか分からない博打のような魔法なのだ。以前魔法の練習で竜巻のカードを引いてしまい、村全体を巻き込む大事件にまで発展してしまった。
【大地 優(10歳)
職業;未定 魔法;カード 属性;光 魔力;120/999】
「俺もチャムいないと攻撃も防御も何もできないからなー。」
「アンッ!」
今日も相変わらずチャムは元気で可愛い。
「優はわかるけどよ、翼俺たちの中で1番魔法の使い方うまいじゃん!」
「‥わかるけどって。」
分かると言われ落ち込む優を横目に翼は考えるが、そもそも誰か講師に習ったわけでもないのだ。あえて言うなればずっと前に己の父が教えてくれてそれっきりだ。
「俺は想像が結構大事かなって思ったよ。」
「想像?」
「うん。う〜ん。そうだ、例えばここにりんごがあります。」
翼は一真と優に差し出すように“何もない掌”をさし出した。するとオレンジ色の魔方陣が浮かび上がり、気づけば『りんご』が掌にのっていた。
「おーやっぱすげーなぁ。」
「うん。本当に。本物にしか見えないよ。」
高峰 翼の魔法は『幻影』だ。まだ小さな範囲にしかできないが、それでも完成度は高く、どこから見ても手のひらの上にはりんごがのっていた。
【高峰 翼(10歳)
職業;未定 魔法;幻影 属性;闇 魔力;80/999】
「想像力って言ったのは俺の場合なんだけど、よく観察して思い浮かべないと本物に見えないんだよ。」
「確かに!スッゲー本物だもん!よーし俺もやるぞー!」
「だから止められてるんでしょ?怒られるよ。」
「分かってる!想像で魔法使うから!」
「それってただの妄想になりそう、、。」
少し強引な所もあるが、ちゃんと言うことを聞く一真は可愛い。本人に言ったら凄い怒るから言わないが。今日もほのぼのとした長い一日の始まりだ。
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