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日照り、悪魔、宇宙船

 宇宙船から飛び降りる夢を見た。

 何を言っているのかわからないか。ぼくもわからない。

 ある夜、寝付けないなあ、と思っていたら、いつの間にか空を飛んで宇宙にいたんだ。

 そこに銀色に輝く宇宙船があって、気が付いたらぼくはその中にいた。

 ぼくは操縦席に座っていて、ゴー、というと、宇宙船は前に進み出す。

 最初は何もない真っ暗だ。

 星も見えなかった。宇宙なのに。

 まあ、夢だし、と途中で気が付いて、ぼんやりとしていたら、そこでうっすらと一度目が覚めた。

 でもすぐにぼくは宇宙船に戻っていた。

 宇宙船の中で、ぼくはまっすぐに光る星に向かって進んでいた。

 やがてその星がだんだんと近づいてきて、ぼくはその星を眺める。

 そして気が付いたら、ぼくは宇宙船から飛び出して、その星へと飛び降りていた。

 星の表面には何もなかった。

 すごい日照りで、一面が荒野だった。

 だけど、ぼくは全然暑くない。

 夢だからね。

 そこで、ぼくの体はまた浮かんだ。

 でも今度は好きな方に行くことができた。

 夢だ、と思うと、あっち行ってみよう、とか、こっち行ってみようとか、好きなように動けた。

 後から思うと、明晰夢っていうやつなんだろう。

 昔からたまに見ていたやつだ。

 そうしているうちに、ぽつん、と立っている影を見つけて、ぼくはそこに下りて行った。

 その前に立った。


「・・・・・・ところで、目が覚めてさ」

「あら? そこで終わりですか?」

「うん。たぶん、はなさんだった、気がするんだけど、はっきりとは分からないかなあ」

「まあ、わたしがサンの夢に出たんですか・・・・・・」

 たぶんね、と頷くと、はなさんは、ふふふ、と笑っている。

「でも、宇宙船から飛び降りるとか、奇想天外ですね。宇宙だったら、そのまま浮かんでいるでしょうに」

「本当にね。でもその時は飛び降りたんだよ。ぐんぐん地面が迫ってきてさあ・・・・・・。ちょっと怖かった」

「へえ」

 高いところから飛び降りる夢を見ることは結構ある。

 まあ、夢を見るからと言って、夢占いなんかをしたことはないけれど。

「でも、日照りの荒野、ですか」

「うん。たぶん、寝る前に見てたアニメが原因だね。・・・・・・主人公が荒野を旅してたから」

「ああ。寝る前に見ていたものに影響されるとか、よく聞きますね」

「そうそう。なんかつばの広いぼうしをかぶったアウトローなやつだった」

「へえ。今度教えてください。わたしも見てみます」

「宇宙船は、宇宙船を戦わせるソシャゲをやりながらアニメ見てたからかなあ?」

「ながらでやってたんですか? 器用ですねえ」

 ソシャゲ、といいながら、はなさんは自分のスマホを取り出す。

「わたし、ソシャゲとかやらないんですよね。課金とか、お金の無駄遣いですし」

「・・・・・・その言葉は、すごく痛いね」

 ガチャはいけない、とそう思う。

 一回目は百円でも、二回目からは千円になり、こっちの方が効率いいから、と一万円でばかり課金するようになる。

「・・・・・・はたから見てると、アホの所業だとは思うんだけどなあ」

 自分でやるとやめられない、それがソシャゲの課金。

「課金にお金使うくらいなら、貯金しましょうね?」

「そうだね」

「それか、わたしとデートでもして使いましょう。あとには残らなくても、そっちの方がずっと有意義です」

「・・・・・・思い出位は残るしね」

「まったくです」

 はなさんは嬉しそうに言いながら、スマホをすいすいと操作した。

 ぼくのスマホに着信が入る。

『というわけで、今週末はデートですよ?』

「直接言いなよ。目の前にいるんだから」

『こっちだと、ログが残りますから。あとで読み返すのとか、結構好きなんです』

 ふふふ、と笑っているスタンプが来た。

「・・・・・・むう」

 ぼくも、スマホを操作する。

『でも、デート』

 手で打つときに、妙な気恥ずかしさを感じつつも、続けて打つ。

『ってどこ行くの?』

『気になっている映画があります。続き物ではないので、どんな映画か実はよくわからないんですが』

『なんの映画?』

『戦争ものの洋画です』

 あれかな、と思い浮かんだタイトルを入れると、

『それです』

 ふむ、と考える。

「戦争ものとか、あんまり見たことないなあ・・・・・・」

 口に出して言うと、はなさんはスマホを置いて、

「だったら、二人で見に行ってみましょう」

「そうだね。誘われないと、行かなさそうだし」

「サンは、あんまり映画館とか行かないんですか?」

「家でネット使って見たほうが楽だからね。トイレ行きたいときか、好きに止められるし」

「わたしは映画館の方が好きですけどね」

「そうなの? やっぱり画面が大きいから?」

「いえ。わたし盛り上がってくると心の準備するのに、一時停止しちゃうくせがありまして」

「え、何それ?」

 はなさんはちょっと言いにくそうに、

「ほら、わたし、物語にのめりこむと、自分だったら、とか考えちゃうんです」

「うん」

「そうすると、キャラの行動とか納得できないときに、わたしだったら、って考えるために止めちゃったりして」

「へえ、そんなことするんだ」

 ぼくは基本的に一度流したら、トイレでもない限り止めないので、そういう意見はちょっと新鮮だ。

「止めずに見るほうが好きなんですけど、どうしても止めちゃうんです・・・・・・」

 はなさんがうなだれている。

 よしよし、と頭を撫でてあげた。

「映画館なら、絶対に止まりませんからね。映画に集中せざるを得ないわけでして」

「あ~。なるほど」

 確かに、集中したいなら、映画館だ。

「はなさん、変なくせあるんだね」

「いや、お恥ずかしい」

「ううん。かわいいと思う」

「あはは・・・・・・」

 苦笑いしながら、はなさんは、スマホを手に取った。

 そのまますいすい、と操作して、

「お昼前に終わるのがいいですね。映画の後にお昼ご飯食べましょう」

「いいね。そうしよう」

 はなさんと映画、はなさんと食事。

 週末は楽しそうだと思う。

「・・・・・・あとで、時間調べて送っておきます」

「うん」

「遅刻厳禁、ですよ?」

「大丈夫。ぼく、遠足の前の日とか熟睡する性質だから」

「・・・・・・うん?」

「楽しみだと、よく眠れるんだ」

「そうですか」

 はなさんが、なんかほほえましいものを見る目でぼくを見ている。

「・・・・・・はなさんこそ、大丈夫なの?」

「わたし、基本的にいつも決まった時間に起きますので」

「さすが、規則正しいんだね」

「健康にもいいですから」

「ぼくにはまねできない」

 夜更かしとか当たり前だからなあ。

「肌荒れする上に太りますよ?」

「まあ、まだ若いから」

 そんなこと言って、とはなさんは怒るけど、ぼくは夜更かしが大好きです。


 その夜。

 今度は悪魔のコスプレしたはなさんがぼくを起こしに来る夢を見た。

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