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母と息子のショートコント

作者: あいうえお.

【息子11歳編】




母、息子「「ショートコント、賑やかな朝」」


母「起きろ! ジャーーーン!! 起きろ! ジャーン!!」


息子「かーちゃん、朝っぱらから銅鑼(どら)を盛大に鳴らすのやめてくれよ! おかげで俺、学校で『銅鑼息子』って呼ばれてんだよ!!」





母、息子「「ショートコント、授業参観」」


母「おかえり」


息子「かーちゃん何だよ、今日のカッコ! 授業参観だからって張り切りすぎなんだよ!」


母「そうかしら? コンセプトは『フランス王妃』だったんだけど……」


息子「おかげで俺のあだ名、今度は『太陽王』になっちまったよ!」





母、息子「「ショートコント、こだわりのひと手間」」


息子「かーちゃん、雑巾(ぞうきん)縫ってくれたのはありがたいけどさ、何だよこれ!」


母「文句言わないの! 小花の散った繊細なレースを周囲にぐるりと縁取るの、苦労したんだから」


息子「はなはだ使いづらいよ! 雑巾に必要なのは繊細さやエレガンスではなく、実用性なんだよ!」





母、息子「「ショートコント、達成感」」


母「明日は家庭訪問ね。家中掃除もしたし、お茶も買ったし、完璧ね!」


息子「去年みたいに先生を家の隅々まで案内するの、絶対にやめてくれよ!」


母「だって誰かに見て欲しいし……」


息子「先生もコメントに困って『キッチンもキチンと片付いて、実に見事です』って言ってて痛々しかったよ! 誰も得をしないんだよ!」





母、息子「「ショートコント、将来設計」」


息子「今日、調理実習で肉じゃが作ったんだよ、ほら!」


母「どれどれ……うーん、ちょっと味が濃いわね」


息子「味付けはさっちゃんがやったんだよ」


母「あぁ、幼馴染の……今度うちに連れて来なさい。料理のいろはを骨の髄まで叩き込んでやるから」


息子「遠い将来を見据えた小細工はやめてくれよ! 早すぎる嫁姑戦争と言う名の、無益な戦いの火種が生まれるだけだよ!」





母、息子「「ショートコント、世間知らず」」


息子「今年の修学旅行、京都に決まったよ」


母「あら、それじゃ飛行機に乗るわよね……パスポート、急いで申請しなきゃ!」


息子「たかが国内旅行でパスポートは不要だよ! 遠方への旅行経験がないかーちゃん、なんだか不憫(ふびん)だよ!」





母、息子「「ショートコント、弱点」」


息子「俺、リレーの選手に選ばれたよ!」


母「あらすごい! 私の遺伝子を受け継いだのね。何しろ昔、『韋駄天の疾風アキレス腱』って呼ばれてたからね」


息子「何だよその二つ名! 欲張り過ぎて逆に貧弱になってるよ! 何事もほどほどが一番だよ!」





母、息子「「ショートコント、決めゼリフ」」


母「あら、どうしたのよその傷!」


息子「コウイチ君に背中押されたの。大丈夫、擦りむいただけだから」


母「あのガキャァ! 待ってなさい、八つ裂きにして来るから!」


息子「だから大丈夫だって!」


母「やったらやり返す! 半返しだ!!……半沢の名にかけて!!」


息子「いろいろ間違ってるよ! どうせ使うなら正しく使用した方が、聞いてる方も気持ちが良いよ!」





母、息子「「ショートコント、未知なるジャンル」」


母「欲しがってた本、買ってきてやったわよ。意外ね。こんな分厚い小説が読みたいなんて」


息子「何だよこれ! 『キャベツの涙と三温糖(さんおんとう)』って! 俺は『鬼滅の刃の単行本』が欲しいって言ったんだよ! 何をどう聞き間違えたんだよ!」


母「まぁまぁ、せっかく買ってきたんだから……なになに? 『トマト三兄弟から緑黄色野菜でない事を馬鹿にされた泣き虫キャベツ君が、幻の調味料・三温糖を求めて旅をする。果たして絶品のロールキャベツとして、人間の舌の上でとろーりとろける事が出来るのか⁈ ビタミンUの底力、見せてやれ! エイエイオー!!』ですって」


息子「なんだよその荒唐無稽なストーリーは! 悔しいけどちょっと興味出てきちゃったよ!」





【息子18歳編】




母、息子「「ショートコント、ドゥ・イット・ユアセルフ」」


息子「ついに俺も一人暮らしか。楽しみだなぁ」


母「いいこと? 部屋の間取りや壁紙が気に入らないからって、勝手に大掛かりな改装をほどこしちゃダメよ。……取り返しのつかない事態に陥るってこと、母さんは知ってるのよ……」


息子「それ、賃貸物件を借りるに当たっての大前提だろうが。昔何をやらかしたんだよ……」





母、息子「「ショートコント、産後の恨み」」


母「懐かしいわぁ」


息子「何見てんの?」


母「育児日記よ。もう20年近くも前になるのねぇ……」


息子「どんな事書いてあんの?」


母「某年某月某日。3ヶ月と1週間。やっと首が座る。縦抱きしてやるとすごく喜んで笑って可愛い。……なのに現在夜の10時、父親はまだ帰って来ない……また午前様か。


某月某日。5ヶ月と2週間。離乳食を始めるが、顔を背けて食べてくれない。それもまた可愛い。……愚かな父親はこの顔を見るよりも飲み会を選んだ。後々後悔するであろう」


息子「最後がいちいち切ないよ。いっそ墓場まで持って行ってくれよ……」





母、息子「「ショートコント、イヤイヤ期」」


母「2歳のページにはこう書いてあるわ。『最近は耳へのこだわりが強い』」


息子「耳?」


母「『朝起きて『耳!』、歯磨きしようとしても『耳!』、お風呂に入ろうと言っても『耳!』。一体どういう事だろう』だって」


息子「それ、『イヤー!』って言ってたんじゃないの? 2歳児のカタコトを、強引に和訳しなくていいんだよ!」





母、息子「「ショートコント、デッドスペース」」


息子「明日はバイトの面接だ。緊張するなぁ」


母「面接の練習してあげるわ。私が面接官ね。えーと……帰省した時あなたの部屋に、お母さんの洋服箪笥が移動していたらどう思いますか?」


息子「直接聞きにくいのかよ! いいよ別に、倉庫としてじゃんじゃん活用してくれても!」





母、息子「「ありがとうございました」」

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