劣等紋の超越ヒーラー 〜「お前の回復魔法が必要なんだ」と頼んできてももう遅い〜
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「おい給料泥棒、早くこっちを治せ」
「ああ、今行く。でもアルク、いいかげんちゃんと名前で呼んでくれ。俺にはユージって名前があるんだし」
冒険者に怪我は付き物。
戦闘中の怪我はもちろん、戦闘後も目立った外傷以外に損耗した筋肉や骨にはヒールが必要になる。
回復術士としてパーティメンバーの生命力・魔力の管理と戦闘後のケアをするのが俺の仕事になっている。
高度なスキルが必要とされるため尊敬される存在なのが回復術士だが、俺はとある理由でパーティからぞんざいな扱いを受けていた。
でも、それに不満はない。
俺は大切なパーティメンバーが元気に明日を迎えられればそれでいい。名誉になんて興味がないし、やりたい仕事に誇りを持ってできているので気にしないことにしている。
「へっ、劣等紋が偉そうに人間面してんじゃねーぞ。うちはSランクパーティだ。そしてこの俺は次期サブリーダー有力候補! 劣等紋を、それもヒーラー待遇で入れてやってることに毎日感謝しろっ!」
「わかってるつもりだよ。薬草で回復するよりも安くヒールを提供するのが務めだ。でも、俺だって頑張ってるんだから給料泥棒は酷いと思うな」
俺は左手の甲に浮かぶ紋章を眺めた。
この世界には七つの紋章があり、どれか一種類の紋章と生涯付き合うことになる。
『火の紋章』『水の紋章』『地の紋章』『風の紋章』『聖の紋章』『闇の紋章』……そして、俺が持つ『無の紋章』——通称劣等紋である。
それぞれの属性ごとに特徴があるのだが、『無の紋章』は特徴がないということが特徴になる。
全ての属性に特化する反面、他の紋章と比べて成長限界がかなり低いのだ。
「劣等紋をSランクパーティに入れてやってるのはうちくらいのもんだ! どう頑張っても劣等紋じゃBランクが限界。それを俺たちアタッカーの腕でカバーし、古参だからと守ってやってる。その自覚があんのか? ああ?」
劣等紋が良く思われていないことは重々承知しているが、何もこんな言い方をしなくていいんじゃないか?
こいつは後輩なんだし、さすがにカチンとくる。
俺はこのパーティがEランクだった時からずっと務めてきたのだ。
それに——いや、べつに話す必要はないか。そもそも信じてくれるかわからない。
わざわざアピールしなくても、日々のパフォーマンスを見ていればきっとみんなわかってくれるはずだ。
「俺だって紋章を言い訳にせず、コツコツ技術を磨いてきたんだ。能力以上に技術がモノを言う職業だし、その結果がSランクパーティで回復術士をやれていることだと思っている。じゃあ、他にもヒールしなきゃいけないメンバーがいるから、これ以上何かあるなら後で言ってくれ」
◇
全員の治療を終えて村に戻ると、パーティリーダーのゼネストが今日の依頼だった五十体の魔物討伐案件をギルドに報告した。いつもこの後は報酬の分配が行われる。
冒険者は命がけだし、俺の場合は嫌味を言われることもあって苦労の多い仕事である。それだけにいつもこの時間は本当に幸せな気持ちだ。
まあ、分配金は他のメンバーに比べると雀の涙だけど……。
「ほれ、ユージの分だ」
ドサっと置かれた麻袋。
「ありがとう。って……あれ? いつもより多いような?」
「うむ、これまでご苦労だったな」
にっこりと微笑むゼネスト。
もしかして、俺を拾ってくれたこの人だけはアレに気づいたのだろうか。
そうだとすれば、かなり見る目があると思う。
「もしかしてリーダー……」
「その通り、本日付でユージとはお別れだ。ギルド規定の退職金が入っている。あー、寂しいもんだな」
「……………………え?」
「聞こえなかったか? 周りくどい言い方をしたが、要するにお前はお払い箱。追放するってことだ」
頭が真っ白になった。
十二歳の頃からだから、三年もこのパーティに貢献し、一緒に成長してきた。
なのに……どうして?
「ははははは! 次期サブリーダー有力のこの俺に歯向かうからこうなるんだ! ざまあ見やがれ!」
「は……?」
「おい、アルクちょっと黙ってろ。……ということだ、ちなみに厳正なる検討の上でお前の進退を決した。誰かの意見を聞いたわけではない。前から決めていたことだ」
どう考えても嘘だろ。
……いや、そんなこと言っても無駄か。
「俺をパーティから追い出すって、本気で言ってるのか?」
ゼネストのこめかみにピクッと青筋が浮かんだ。
「てめえ何様のつもりだ? 本来Sランクパーティは劣等紋とはご縁がない場所だ。古参だということで慈悲深くここまで面倒を見てやってきた。お前のヒールは薬草より確かに安い。だが、これからは真っ当な回復術士を招き、より高単価の依頼を狙いに行く。もはや劣等紋の居場所はない!」
「いや……俺はただみんなの心配をしていただけなんだ。追い出すっていうのなら、俺は潔く引き下がるよ。っていうか、俺もそろそろ潮時かなと思っていたんだ」
俺もこのパーティが自分の実力に見合っていないということには気づいていた。
それでもここに拘って続けていたのは、ここまで育ててもらった恩があったから。もうお役御免だというなら無理に頭を下げる必要もない。
「いやぁユージに心配されるとは思わなかったぜ……。まあいい。さあ出て行け給料泥棒」
「ああ、今まで世話になったな。今後俺はパーティとは無関係だ」
俺は退職金としては少ない麻袋を握り締めて、その場を後にした。
引き止めるもの、擁護する者は誰一人としていなかった。アルクとゼネスト以外にも六人のメンバーがいるのだが、皆が揃いも揃って俺に侮蔑の目を向けている。
ああ……がっかりだよ。
さようなら。
◇
翌日。
パーティを追い出された俺は所属なし——つまりソロ冒険者になった。
これまではパーティ所属の冒険者として活動していたから、組織から最低限の福利厚生が与えられていたのだが、ソロになった以上は宿泊費から移動費まで全てのことが自腹になる。
一応は退職金を貰えたわけだが——
「少ないな……。金貨に直すとたった三枚か」
銅貨、銀貨、金貨の順に価値が高くなり、銅貨十枚→銀貨一枚。銀貨十枚→金貨一枚のレートで取引される。
たくさん入っていると思いきや銅貨と銀貨ばかりで、これじゃ三日で底を尽きそうだ。
「仕事しないとな……」
ということで訪れたのは、冒険者ギルド。既に昨日のうちにパーティの脱退処理は行われており、今日からソロで依頼を受けられるようになる。
掲示板に貼られているソロ向けの依頼書を確認して、めぼしいものを探していく。
高単価な依頼ならなんでもいい。
適当に選んで、受付へ持って行った。
「あの……紋章的に厳しいので止めた方が良いかと。採集の依頼とか、荷物運びの依頼もありますし」
「問題ない。受けさせてくれ」
「問題あるから言ってるんです。全くこれだから劣等紋……あっ、じゃなくて無の紋章は……」
ニヤニヤ笑いを堪える受付嬢。今までは自分で依頼なんて受けたことがなかったから気付かなかったが、ギルドですら差別されているのか……。
「命をかけるのは冒険者である俺だ。受けさせてくれ」
「まあ……そこまで言うなら発注しますけどね。……でも、恨まないでくださいね。劣等紋の、それも回復術士がソロで魔物と戦うなんて自殺行為ですから」
俺だって本当は一人で戦いたくなんかない。
でも今から地道にパーティメンバーを集めている余裕はないし、そもそも劣等紋であると言うだけで加入を渋られることがほとんどだ。
「おい、あいつ劣等紋だってよ」
「うえっ、一緒の空間にいたら劣等紋が感染る!」
「なにそれ怖ーい」
俺と受付嬢の会話を聞いていた周りの冒険者がヒソヒソと話しているのが聞こえてきた。
……劣等紋はウイルス扱いかよ。
まあ、見知らぬ他人にどんなことを言われようとノーダメージだけどな。
俺は、濁った空気を入れ替えるような気持ちでギルドの出口扉を開いた。
冒険者は実力主義。
残念ながら元パーティメンバーは誰一人として俺の実力を見抜けなかったようだが、実は秘密にしていたことがある。
まだ誰も知らない。
劣等紋は、とんでもない力を秘めていたということを——
◇
依頼のため俺がやってきたのは、サンヴィル丘陵。現在拠点にしているサンヴィル村から近い場所にある、なだらかな丘が並ぶソロ冒険者御用達の狩場だ。
ソロ向けと言っても、パーティ向けの強力な魔物も稀に現れるので注意が必要だが、見通しが良いので慣れていれば簡単に回避できる。
まばらに点在する牛のような魔物——アンテロープに狙いを定めた。
今日の依頼はこいつを三十匹倒すこと。報酬も割が良く一週間分の資金が手に入る。
回復術士はヒールに特化するので強力な攻撃スキルを持たない——とするのが通説だ。
だが、あの日から俺は変わった。
回復魔法は、自然界の魔力を感じとる能力が人一倍必要だ。だから、『探知』ができる。
回復魔法は、患者に流れる魔力に干渉する。だから、『解析』ができる。
回復魔法は、超高度な魔力操作を必要とする。だから、『身体強化』ができる
背後から気付かれないようサッと近づき、携帯用ナイフで——
ザクッ!
ということができる。
アンテロープを倒したら、討伐の証明のため角を回収する。この繰り返しだ。
初めてだったのでかなり慎重な立ち回りになったが、この手応えならもう少し肩の力を抜いてもなんとかなりそうだ。
これは劣等紋のハンデを技術でなんとかできないかと工夫してできるようになったことだ。
ただし、これだけではアンテロープといえどソロでワンパンというのは難しい。
決定的だったのは、今から半年前——天の声が聞こえたことだ。
あの日から、回復魔法・攻撃魔法・身体能力ともに劇的に向上したのだ。
あの時は精神的にも肉体的にも参っていたからよく覚えていないが、言葉だけははっきり覚えている。
《回復術士から回復術師へクラスアップに成功しました! 成長限界が解除されました!》
その瞬間から魔力の質が明らかに変わったことがわかった。
回復魔法も格段に強力になり、あのパーティでは持て余すほどになっていた。
ゼネストが多少無茶な依頼を受けても、俺の回復魔法でサポートすることでクリアすることができるようになり、パーティはメキメキとランクを上げていったのだ。
それを、彼らは自らの実力が上がったのだと勘違いしてしまった。
俺の回復魔法が上達したことに、最後まで気づくことはなかった。
実のところ、あのパーティはBランク相当だ。俺が抜けてしまった後でどうなってしまうかを心配してもう少し残ろうと思っていたのだが……元気にやっているだろうか。
まあ、追い出されたパーティのことを思い出して黄昏れていても仕方ない。
俺は俺で、第二の人生を楽しく愉快に生きて行けばいいだけなんだからな!
◇
「三十体——」
だんだんとソロのペースを掴み、たったの三十分ほどで依頼を終えることができた。
これで金貨七枚ならパーティ所属よりかなり実入りがいいな……。
普通は二〜三日かけてじっくりこなす種類の依頼らしいが、早く終われるに越したことはない。
さて、帰ろうか——
と思っていたその時だった。
「きゃああああああ! 助けて————!」
少し離れた向こうの丘から一人の女の子の叫び声が聞こえてきた。
『探知』で周囲を確認すると、三体のアンテロープに追いかけられているらしい。
見通しが良い場所だから複数体との戦闘を避けるのは簡単なはずだが、あまり戦闘に慣れていないと視野が狭くなってしまい近くの魔物の接近に気が付かないことがある。
しかし妙だな。この辺の魔物を倒せるレベルならそのくらいの力は身についているはずなんだが……。
いや、そんなことはどうでもいい。助けに行こう。
冒険者——特にソロは誰からの保護も受けられない。
ピンチの時はお互い様の精神が大切だ。
思い切り大地を蹴り、風を切って叫び声の元へ駆けつける。
「痛っ……!」
ちょうどその頃、叫び声の主は高低差で躓き、地面を這いつくばっていた。
立ち上がろうとするも足がすくんで上手く動かないらしい。
俺の足元に少女の物と思しき剣が落ちているし、少女は何も武器を持っていない。
——絶体絶命というわけだ。
俺がたまたまここにいなかったらかなら危なかったな……。
「ちょっと剣借りるぞ」
「ふぇ!?」
さっきまで使っていた携帯用ナイフでは守りきれない。返事を待たずに、剣を片手に魔物に向かった。
俺は回復術士である前に劣等紋——無の紋章の持ち主なのだ。
全ての紋章の特徴に特化しているので、当然回復魔法だけでなく剣も扱うことができる。
ザンッ!
剣を一振り——
問題なく三体のアンテロープを真っ二つに斬ることができた。
イメージ通り上手くいったのでなかなか気分が良い。
俺はぽけーっとしている少女に目を向けた。
金髪碧眼の美少女。歳は俺と同じくらいだから……十五歳くらいか。
やはりベテラン冒険者という感じではなさそうだが、完全な初心者というわけでもなさそうな雰囲気。
胸は大きく、ウエストは引き締まっているし、男性冒険者からは人気が出そうだな。
「大丈夫か? あっ、剣返しておくよ」
「え……あの……ありがとうございます! まさか凄腕の剣士さんに助けてもらえるなんて……!」
「ん……? 俺は剣士じゃないぞ」
「え、ええええ!? じゃあ一体……」
まあ、一般的には剣を実戦レベルで扱えるのは剣士のみだから、驚くのも無理はない。
でも話すと長くなるんだよなぁ。
「あ、その前に足を擦り剥いてるな。ちょっと待っててくれ」
さっき躓いた時に怪我をしてしまったらしい。
怪我の治療は俺の専門分野だ。
手をかざし、魔力の流れを読み取り、回復魔法をかける。
少女の膝が淡い光に包まれる。
痛々しかった傷口がみるみるうちに塞がり、傷一つ残さず完治した。
「すごい……もしかしてこれってヒール……ですか?」
「自己紹介が遅れたが、そういうことだ。色々できるけど、一応俺は回復術士……いや、回復術師かな」
「回復術士なのにあんなに強いなんてすごすぎます……! 何から何まで、本当に助かりました。私、リーナって言います」
「俺はユージだ。冒険者は助け合いが基本だし、危ない時はお互い様だよ。それより、訳ありか? あまりソロに向いてなさそうだが……」
「実は私、付与術士で……パーティを追い出されちゃったんです。行くところもないしお金が必要なので一人で働こうと思いました。でも向いてないのかもしれません」
付与術士といえば、数年前まで各パーティから引っ張りだこだった存在だ。
強化魔法一つでワンランク上の狩場を楽々攻略できるようになるし、誰でもできるというわけではなく才能が必要なのだ。俺も『身体強化』で似たようなことはできるが、自分に対してのみで他人に付与することはできない。
しかし、強化ポーションの出現で付与術士を取り巻く環境は大きく変わった。
付与術士が行える強化魔法の全てをポーションで賄えるようになってしまったのだ。値段が高かったうちはまだ良かったが、広く普及して値段が落ち着くと付与術士は安い報酬で働かざるを得なくなった。
付与術士は剣士や魔法士ほど戦闘に優れていないし、劣等紋を除く回復術士のように薬草に勝るスキルを持っているわけでもない。お払い箱にされるのは時間の問題だった。
正直、ついにこの時がきたか——という感想だ。
「それに、私……劣等紋なんです。ただでさえ役に立たない付与術士なのに、紋章もダメだとどうしようもなくて……」
「大変だったな。劣等紋にとって付与術士は憧れで、唯一例外的に人権が認められる特別な存在だったし……」
「分かってもらえるんですか……? もちろん私も、何か付与魔法で他にできることはないかと思って必死にもがいたんです。やっとの思いで魔物の弱体化魔法を使えるようになったんですけど……『そんなのなくても支障はない!』と言われてしまったんです。もう何をしてもダメなんでしょうか……」
深刻につらつらと話すリーナ。
どれだけ辛かったか痛いほどよくわかるのだが、一点すごく気になることがあった。
「弱体化魔法ってどういうことだ……? 詳しく教えてくれないか」
◇
「こんな風にして、強化魔法と反対の魔法を魔物に付与するんです」
弱体化魔法が気になったので、近くにいたアンテロープで実演してもらっていた。
付与魔法というのは、強化魔法のことを指すというのが常識だ。
パーティメンバーの力を引き上げることでポテンシャル以上の能力を引き出すもの。だが、リーナの言う弱体化魔法は、味方を強化するのではなくその逆——魔物のポテンシャルを下げる効果を持つ。
ザクッ!
携帯用ナイフでアンテロープをワンパンする。
さっき剣を借りて咄嗟に攻撃した時には気にしていなかったが、確かに比べるとよくわかる。
「明らかに魔物が弱くなってる……。これはすごいな」
味方を強化するのも、敵を弱体化させるのも、結果は同じ。
この魔法があれば、付与術士はまったく捨てたものじゃない。それに加えて、強化ポーションにまったくお金がかからなくなるわけだ。
特に強敵になればなるほど弱体化魔法は効果を発揮するようになるだろう。
魔法の構造を見る限り、もっと工夫することで通常の強化魔法並みのバリエーションを揃えることもできる。
リーナと、リーナの元パーティメンバーは気付いていないみたいだが、この魔法はとんでもなくヤバい。
全ての付与術士に同じことができるのかどうかはわからない。
でも、こんな人材を黙って放っておけない。
それに、ただ優秀だからというわけではない。
「リーナ、よく聞いてくれ」
「なんでしょう……?」
「実は、俺も劣等紋なんだ。リーナの気持ちはよくわかる」
俺は左手の紋章を見せた。偽ることのできない、生まれながれの落ちこぼれである証拠。
「信じられないです……! ユージが私と同じ無の紋章なんて……」
「その上でもしよければ、俺とパーティを組んでくれないか? 俺なら、リーナの弱体化魔法を生かすことができるし、ぞんざいな扱いをすることは絶対にない」
「こんな私を拾ってくれるんですか……?」
「拾うなんてとんでもない。招待してるんだ。リーナが思ってるより、リーナは凄いし、貴重な存在なんだぞ」
リーナはうるうると蒼い瞳に涙を浮かべた。
今までの辛い思い出が蘇ったのか、存在価値を認められたのが嬉しかったのか、それとも別の理由かはわからない。
一筋の涙が溢れた後、リーナは俺の左手——劣等紋をギュッと握った。
そして——
「私でよければ、よろしくお願いします。……ぜひ入れてください!」
「ああ、よろしく。本当にありがとう」
この時、確信した。
まだパーティメンバーは俺を合わせて二人だが、いずれ既存のSランクパーティなんて比べ物にならないモンスターパーティーに成長することを——
◇
その頃、ユージの元所属していたパーティでは、正式に新たな回復術士を招くことに成功し、一行は酒を浴びるように飲んでいた。
ユージに支払っていたのが報酬の1%に対して、新たに招いた凄腕の回復術士の契約は報酬の20%。
他のパーティメンバーたちの取り分は少なくなるわけだが、誰一人として気にするものはいなかった。
「ゼネストの兄貴! 劣等紋がいなくなってスッキリしましたね!」
「いやぁ全くだアルク。これまではSランクの中でも簡単な依頼しか受けてこなかったが、こうしてまともな回復術士が来たのだ、そろそろレイドを狙うか」
「レイドですか……! それはもうお宝がザクザクでしょうな。本当に新しい回復術士を入れて良かった!」
「このくらいの依頼をこなせぬようなら特別待遇で回復術士を入れた理由がないからな。ユージの二十倍は働いてもらわんと割に合わん! まあ、その心配はいらないだろうがな! グハハハハ!」
「今のうちに使い道を考えておいた方が良さそうですな、ゼネストの兄貴!」
「ああその通りだ!」
こんな調子で皮算用する二人だが、この二人を含めパーティの全員が知らない。
自らの力がSランクで通用するほどのものではなかったということを。
ユージの代わりになるほどの回復術士など存在しないことを。
あまりの弱さに新たな回復術士に愛想を尽かされてしまうことを。
呼び戻そうとした時には既にユージは新たなパーティを発足し、少数精鋭にもかかわらずゼネスト率いるパーティなど眼中にないほど遠い存在となっていることを知る由もなく、ただただ浮かれ続けたのだった。
連載候補短編になります。
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という場合でも星1などつけていただけると参考にさせていただきます。
【追記】
たくさんの応援ありがとうございます!
本作の連載化が決定しました!
連載版の投稿は10/17(土)の予定です。
開始後速やかにこちらのページでもお知らせいたしますが、作者ページをお気に入り登録していただけますとスムーズにご覧いただけるかと思います!
【さらに追記】
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