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5話 「迫る危険」

 次の日の朝。

 俺はアビゴル達、盗賊集団の元へ戻る為、世話になったタマナとカンランにお礼を言い、村を後にした。

 出会ってたった一日しか経っていなかったが、タマナは涙ながらに俺を見送ってくれた。

 子供にそんな顔で見送られると、後ろ髪を引かれる気持ちになってしまうのだが……。

 だから、「また遊びに来る」と、俺はタマナと約束を交わしたのだった。


 さって、確か、村に来た時は二時間近くもかかったっけ?

 行きは体力のない俺を、ダンが背負ってくれたけど、帰りは俺一人だ。

 無理せず、ペース配分をしないとな。

 まったく。転生したての、生まれたばかりのバンビちゃんとは言え、もう少しマシなステータスにはならなかったのか。これじゃあ、自立云々以前の問題だ。

 体力アップの筋トレ……ファンタジー世界では「レベル上げ」か。

 まずはそこから始める必要があるな、こりゃ。


 そうぼやきながら歩みを進めていくと、向かう道の先から、複数人の男の声が聞こえてきた。

 トゥゾックダン達か……? いや、違う! そう感じた俺は、咄嗟に近くの物陰に身を潜めた。

 男達の声がこちらに近づいて来る。人数は五人。

 どうやら、俺の存在には気付いていないようだ。

 男達の身なりの様子から見るに、恐らく盗賊……。それも、アビゴル達、盗賊団とはまた違う、別の盗賊団だろう。俺はこんな連中を見た事がない。


 『本当にあの村を襲うのか? 畑ばっかの貧乏村だろう? あんな村、襲ったって大した金目の物なんて無さそうだがな』

 『ばっか! あんなしけた村に金目の物なんかある訳ねーだろ』

 『あん? じゃあ、どうするんでぇ』

 『端から目的は物じゃねーよ。女子供搔っ攫って、そいつら売って金にするんだよ。その方が断然儲かるだろ!

 それに、しばらく様子を見ていたが、警備の見張りもいねぇ上、年寄りが多い。

 魔法なんて大層なものも、扱える人間なんていねぇだろ。

 だから狙うんだよ! あの程度の村なら、俺らだけで十分だ!』


 そう話しながら、盗賊と思われる男達は、カンラン達の住む村の方へと去って行った。


 ……でっすよねー? 盗賊って普通、こうあるべきですよねー?

 いや、ダメだよ? 犯罪は絶対にダメだよ? でも……これが本来あるべき盗賊の姿なのではなかろうか。

 やはりアビゴル達は盗賊としておかしいのだ。「盗賊のやり方」が全然解っていない上に、優しい。

 なんだその盗賊、聞いたことがねえ!!

 これは、俺がそれと無く「チミ達って盗賊向いてないね(笑)」と諭してやった方が良いのではなかろうか……!?


 おっと、話が逸れてしまった……。

 どうやら、あの不届き者どもはカンラン達の村を狙っているらしい。


 ふっふっふ、今までは「か弱い少女の振り」をしていたが、どうやら私の力を見せつける時が来たようだ! 悪党どもめ、目に物を見せてくれよう!! 俺は拳を握り、闘志を燃やした。


 私の力……そう! 今こそ、魔法スキル習得の時だ!


 その方法はいたって簡単だ。目を閉じて、心の中で「ステータス」と唱える。

 すると、自身のステータスや魔法スキルの情報が視覚で確認できるようになるのだ。例えるなら、「内蔵型タブレット」とでも言おうか。

 そこから覚えたい魔法スキルを選択して、決定するだけで、あら不思議! 可愛い魔法少女の爆誕である!


 今回、習得するのは攻撃魔法だな。

 威力は「小・中・大・特大・災厄」と表記が曖昧なので、強さの度合いがイマイチ解らない。「小」威力なら、相手の命を奪う心配もないか?

 そう思った俺は、初級魔法を「カート」に入れて、支払い手続きに進んだ。……何だろう、これは「魔法を覚える」と言うより、「ネットショッピング」と言った方が正しいのではなかろうか。


 (ブブーッ!! 購入に必要な残高がありません)


 購入手続きを完了しようとした瞬間、クイズ番組で不正解だった時に鳴る効果音と共に、エラーが表示された。

 えっ? どうして?


 (ブブーッ!! 購入に必要な残高がありません)


 (ブブーッ!! 購入に必要な残高がありません)


 何度やっても表示されるエラー。

 何故だ?残高はまだ十分にあったはず。高価だったとは言え、俺はスキル「万能知識」以外に購入したものなどないはずだ。なのに、何故……!?

 ……ブッフゥ!!?


 残高の表示を見て俺は吹き出した。

 残高が、ほとんど残ってないだと……!? どうして?! 俺、何か詐欺にでも合ったか?!

 ……あ? 考えを巡らせていた俺に、一つの疑問が浮かんだ。

 この、俺の容姿。一体……いくらしたんだ?有り得ない……まさか、そんな事は……。

 そう願いつつ、俺は購入履歴の照会を行った。


 ぶっふぅーー!!!!


 思わず吹き出したその理由……それは、このアバターにかかった金額である。

 俺のスキル「万能知識」は、その習得に有り金の半分を費やした。

 普通の魔法スキルなら、そこまで高額ではない。単に「万能知識」が超レアスキルなのだ。

 そして、この容姿を形成しているアバター各種、その一つ一つが、とんでもなく高値だった!

 俺の残高は、こいつのせいでスッカラカンなのである。


 そっんなバナナ!!

 「ネタが古い」とか、自分で突っ込みを入れている場合ではない!

 これではタマナ達、村の住民を助ける事ができない……! このまま行っても、ただ捕まってしまうだけだ!

 何か、何かないのか! 少ない残高で習得できる魔法やスキルは……!!


 そう思った時だ。

 俺は、自身が習得しているスキルに「万能知識」以外のものが、複数存在する事に気付いた。

 説明を読むに、どうやらこれはアバターの固有スキルらしい。各アバターのパーツには、「ユニークスキル」が付与されていたのだ。

 実は、俺の容姿となる、このアバターの価格が高い理由はここにあった。


 だが、肝心のスキルの効果だが……何故か表記されていない!

 せめて「火が出る」とか「風が吹く」とか、簡単な説明くらいあってもいいだろう!

 容姿がコレな上に、スキル内容が不明とか、ふざけているにも程がある!!


 だが、もう悩んでいる時間はない……。

 俺がこうしている間にも、盗賊どもが村に行き、タマナ達に危害が及んでいるかもしれない。


 意を決するよりも先に、俺の足は村に向かって走り出していた。

 アバターのパーツに付属効果を付けるとするなら、どのパーツが最適でしょう?

 「目」なら石化! みたいな感じで色々とシックリきます。

 あとは装備、衣服とかも付属効果があるイメージが湧きますね。

 他には…?


 肌? 口? 眉毛? 鼻? 髪?

 そこに付属効果があるとか、どんなだって思ってしまう。

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