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14話 「翼竜襲来」

 大変だ。

 俺の万能知識(スキル)予見(スキル)だが、ここ数日スキルの使い方から応用方法まで色々と試行錯誤していて気付いた事がある。

 これはチートだ。大層なチート技だ。


 今、俺の左目には予見による未来予知された映像が見えている。

 そこに映っているのは、白くてスタイリッシュで格好良い翼竜だ。

 予見通りなら五分後にはここに降り立っているだろう。

 その衝撃でこの食堂は瓦礫の山と化す。

 まぁそれは置いといてーー。

 

 そこに万能知識の上掛けを行うと、なんと翼竜の情報を見る事ができるのだよ!


 万能知識は俺がこの目で見たものの情報を取得する事ができるスキルだ。

 唯一の弱点は、俺がこの目で見ないと情報を取得する事ができないということ。


 だが、予見による未来予知でこの目に映った映像は、万能知識の範疇なのだ。

 つまり! 未来予知をしながらこちらに接近して来るであろう者の情報を見る事が出来ると言う訳だ!


 試しにやってみよう。

 予見によって映し出されたこのスタイリッシュホワイトドラゴン(略してS.H.D)

 このS.H.Dに万能知識を使用してみると……。



 検知結果

  種族名:アイスカーボンドラゴン、又は、カーボンダイオキサイドドラゴン

   備考:無機化合物から生まれた翼竜。

      その鱗の硬さはダイヤモンドと同じく、モース硬度十を誇る。



 ……アイスカーボンドラゴンだって。全然違う名前だったな。

 んまぁ、こういう事なのだよ!

 これは最早チートである! チート以外の何物でもない!

 私は最高の力を手に入れたのだっ!!



 『……ーーーー? ……ーーーーイ? どうしたんだい、ケイ?』

 「……あ? え!? なに?!」


 スキルの発動に意識を集中していた俺は、ユミルが話し掛けてきている事に気付いて驚いた。


 『大丈夫かい? ぼーっとしていた様だけど。

 疲れているならゆっくり休むと良い。』


 あれから二時間。

 客からの料理の追加注文などで働き詰めだった俺を、ユミルは気遣ってくれた。

 勿論、疲れている訳ではないので笑顔で「大丈夫」と答えた。


 そうだ、ユミルは魔物退治の専門家だ。

 今見た翼竜の話をしておいた方が良いかもしれない。


 「ユミル様はアイスカーボンドラゴンという翼竜をご存じですか?」


 俺の問いに、ユミルの表情が曇った様に感じた。

 そして、少し間を置いてからユミルは俺に聞かせてくれた。


 アイスカーボンドラゴンとは、遺跡でユミル達が出会った魔王配下の翼竜だ。

 遺跡ではその撃退に成功したユミルだったが……。

 その後、幾度となく戦ったが、どうしても倒す事が出来ないでいたのだ。

 所謂、因縁の敵ってやつだ。


 『その翼竜がどうかしたのかい?』

 「んー……。例えば、その翼竜がこの街にやって来たとしたら、どうなるんです?」


 スキルの存在を伏せておきたい気持ちから、「その因縁の翼竜がここに来る」だなんて占い師のような台詞が言えず。

 俺は「たられば」の話でユミルに聞いた。


 『それは大丈夫だよ。

 この街の結界は円状に展開していてね。外からは勿論、地中や上空からだって侵入する事はできない。

 対魔物戦でこれ程心強い都市はそうはないだろう』


 ユミルはそう言うがーー。

 流石の予見様も、そこまで的外れな未来予知をするだろうか?

 心配になった俺は再度、予見の映像を確認してみた。


 ふむ……。

 この翼竜、不思議な現れ方をするな。

 上空から白い煙のようなものが風に乗って街の結界の中に入り、それが集まって翼竜の形を形成……。

 気体から物質に変化して、翼竜の身体が出来上がる訳だ。

 でも、例え気体でも魔を纏っているのなら結界をすり抜ける事は不可能ではないのか?


 そう考えた俺はもう一度、万能知識で翼竜の情報を確認した。



 検知結果

  備考:アイスカーボンドラゴンは封魔(スキル)を習得しており、発動の間は魔術結界などを通り抜ける事が可能。だが、自身も魔力を使った攻撃ができなくなる。



 成る程な。

 封魔のスキルで結界内部に侵入してからスキルを解除。

 一度結界をすり抜けてしまえば後は楽だ。無防備な街など一瞬で火の海にできるだろう。

 空飛ぶ蜥蜴の癖になかなか賢い奴じゃーないか。



 ……あれ、これアウトじゃね??

 のんびり料理している場合じゃなくね??


 今まさに、この場に災厄が訪れようとしている事を理解した俺は、店内にいる客達を避難させる為に強硬手段に打って出た。


 「今日は店じまいです! 店内にいるお客様は直ちにお帰り下さい!!」


 俺の言葉にどよめく店内の客達。

 酒と料理で気持ち良くなっているところ大変申し訳ないが、悠長に説明している時間はない。

 俺は自分が出せる限りの凄味と剣幕で、店内にいた客達に「お願い」ではなく「命令」をした。


 「聞こえなかったか? 店じまいと言ったんだ。

 三枚におろされたくなかったらとっとと出て行け! 何なら千切りにしようか!?」


 自分が想像しているよりも恐ろしい形相だったのだろう。

 俺の言葉を聞いた客達は一斉に店から出て行った。

 残ったユミルとドワーフは、突然の事に状況が理解できずに呆気にとられている。


 「ユミル様とドワーフさんも、早くこの店から出て下さい。死にますよ!」


 そう言って俺はタマナの手を引いて店から離れた。

 その後を追うようにユミルとドワーフも付いて来ている。


 『ケイ! 突然どうしたと言うのだ!

 店を出なければ死ぬとはどういう事なのだ!?』


 状況が呑み込めず、言われるがままに店を出たユミルが俺にそう問うた時だった。



 グギャァアアアアーーーー!!!!


 突如けたたましい鳴き声が街中に響き渡ったかと思えば、上空にはいつの間にか白く美しい翼竜が姿を現していた。


 『あの翼竜はーー……! まさか!』


 ユミルの話した通り、あの翼竜はユミルの因縁の相手であったらしい。

 突然姿を現した翼竜に街の住民は何が起こったのか解らず、只々皆一様に、上空を舞う一頭の翼竜に目を奪われていた。


 予見した通り。

 翼竜は先程まで俺達が飲食をしていた店に降り立ち、街中に響き渡るようなけたたましい咆哮を上げた。

 ユミルは「皆逃げろ!」と叫んで剣を抜いた。どうやら彼はこの場を食い止める気の様だ。

 俺の予見では「ユミルが翼竜にやられてしまう」未来は見えない。なので安心して避難する事にしたのだった。



 時を同じくして、教会ではミカンーーもとい、オロンジュ神父が街の異変に逸早く気付いていた。


 『この気配は……。有り得ん事だが街の結界を破られた様だ。

 いや、「すり抜けた」と言った方が正しい……か。』


 王国の中心部に位置するこの教会。

 実は、この国を守る結界の展開・維持を担う役割を持っている。

 この教会を形作る壁、柱、ステンドグラスに至る全ての材料にはマグタイトと呼ばれる特殊な鉱石が練り込まれている。

 そこに魔力を流す事で増幅し、強大な出力の結界を作り出す事が可能なのだ。

 その魔力の源となるのがここの神父、オロンジュその人だった。


 『どのような手段を使ったのかは解らぬが、魔物とは言え策士じゃのう。

 ほっほっほ、許されるなら私も逃げ出したいわ』


 オロンジュ神父が教会を出る事は即ち、結界の消滅を意味する。

 彼が死ぬ事もまた同義である。


 『こんな事なら早く跡継ぎを見付けておくべきだった。

 少しくらい、楽しい人生を送りたかったのう……。』


 幼くして教会にその身を預けられ、結界維持の為に今日まで外に出た事がなかったオロンジュ神父。

 彼は自身の人生を振り返り、そうぼやいた。



 俺は予見で、あの翼竜の目的が教会にある事は解っていた。

 その事情までは解らないが、「意地でも教会を壊してやる」という翼竜の強い意思を感じる。

 今はユミルが抑えていてくれているが、それも時間の問題だった。


 予見による教会の破壊パターンは二つ。

 ユミルの猛攻を耐えつつも、教会まで辿り着いた翼竜に体当たりを食らって倒壊するパターン。

 ユミルの猛攻を鬱陶しく思った翼竜が、遠距離から教会に直接ブレスを放つパターン。


 どっちにしろ積みなのである。


 予見で何度確認しても、その場から逃げようとしないオロンジュ神父の姿が見えた。

 助けたいと思う気持ちはあるが、俺にはユミルのように戦闘ができる身体能力やスキルは持ち合わせていない。

 教会に行ってオロンジュ神父を連れ出す手もあるが、今、俺の元にはタマナがいる。

 危険な行動をとる事はできない。

 せめて、翼竜の情報から何か打開策となる方法が解れば良いのだが……。



 んー??

 先程知り得た翼竜の情報を思い出した俺は、ある事に気付いた。

 あの翼竜、その姿を成形する前は白い煙状のような姿だった。

 それと奴の名前……。

 アイスカーボンドラゴン、又は、カーボンダイオキサイドドラゴン。


 カーボンダイオキサイドとはⅭO2。つまり二酸化炭素だ。

 二酸化炭素が気体から物質に変化した。

 そう仮定するとだ。あいつの本体は今、ドライアイスみたいな事になっているんじゃないのか?

 そう考えた俺は、万能知識で翼竜の身体を構築している物質を調べた。


 ビンゴである。


 あの翼竜は硬い鱗に守られているが、実はその下にある身体はドライアイスだ。

 その身に凍えるような冷気を纏い、硬い鱗に覆われ、どのような攻撃であろうと受け付けない恐ろしい翼竜……。

 だがその正体は、地球温暖化の原因の一つと言われる温室効果ガス、二酸化炭素なのだ!


 それさえ解れば対抗策の一つや二つ、容易に思い浮かぶというもの。



 俺は急ぎユミルに打開策を伝える為、ユミルと翼竜の激しい戦いが繰り広げられている激戦地へと向かった。

 



 カーボン・ダイオキサイド(二酸化炭素)

 実際には気体なので目に映る事はありません。

 ドライアイスが水分に反応して出す白い霧状の様なものは、水が凝固してできた粉末ではないかと言う説があるそうです。


 見えなきゃ話の辻褄が合わないじゃん!

 そう思った私は調べて上記の事を知り、「うん、じゃあそんな感じのテイで」と半ば無理やり彼を作り出しました。

 ほら、空気中って水分あるじゃない? ね??

 身体を成形する過程で何か化学反応とかが起きて……とか。

 ね????

 

 

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