妻であり、娘であり
2度目の季節が終わりを迎えるころに、隣の玉座で幼い妻がふっと漏らした微笑がハーデスの目に留まった。
こちらを見るハーデスに気がついたペルセフォネーはその柔らかな視線を受け止めて、さらに深い笑みで返した。春の花々のさわやかな香気を髣髴とさせる、匂い立つような笑顔だった。
花のかんばせの瑞々しい唇が言葉を形作る
。
「母は私を決してペルセフォネーとは呼びません」
「ああ、そうだね」
「あの人にとって私はいつまでもコレーなのです」
「ああ」
2度目の地下の季節のなかで彼女が少しばかりなじんだように思うのは、自分のうぬぼれなのだろうか?帰りたいとは一度も泣かず、こうして笑いかけてすらくれるようになったのだから。
「使いのものがそろそろ来るでしょう。私は地上に戻らねばなりません」
「行っておいでペルセフォネー。そしてまた帰っておいで」
遠くでサンダルの羽音が聞こえるのは気のせいではないのだろう。ペルセフォネーは玉座から立ち上がりハーデスのすぐそばまで近づくと彼の玉座に置かれた手に手を重ねて首をかしげた。
「私が帰る場所はどちらなのでしょう?」
ここと言えばこの幼い妻は嫌がるだろうか?彼女が二つの世界に属さざるを得なかったことに少しばかりの後ろめたさがよみがえる。けれどもその背徳感さえもたやすく乗り越えるほど彼女がほしかった。
「お前の心のままに」
「母は決してそんな風には言いません。きっと母は地上こそ帰る場所だと私を叱るでしょうね」
「・・・・」
その言葉には何の非難も込められてはいなかった。ただそれだけで穏やかな気持ちになれるというのに、彼女はそれ以上に笑顔すらくれた。目を見開いてしまうほどの驚きの言葉とともに。
「伯父上、私はあなたのその寛大さを愛しています。たぶん」
「・・・・・・・・うれしいことを言う。ならばせめて伯父ではなく夫と呼んでくれないか?愛しい人」
重ねた手をそのままにもう片方の手を伸ばして彼女の頬をなでると、驚いたことにその手に彼女の手が重なった。
「次にあいまみえる時にそう呼びますわ、愛しい伯父様。それまでごきげんよう」
さらり、と髪が揺れて、唇が重なった。彼女の触れた唇は遠い昔に忘れた薔薇の花の香りを思い出させた。
その唇が離れたのとヘルメスの来訪を告げる声が響いたのはほぼ同時だった。
父親に許されたとはいえ、伯父様(32歳)に拉致られたうえ、結婚せざるを得なかったけれど意外に夫は優しいし、冥界も快適っぽい。と言うわけでいろいろたくましくなっていくペルセフォネーたん若干16歳(年令はあくまでイメージ)
な、感じ
ダブルスコアってイメージがずいぶん昔からあるんだよね