表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界日本連邦国  作者: F-3
30/30

第27話 先手

 


 2027.6.2 20:15JST

 日本連邦国 台湾島沖1500km

 リフェル帝国海軍 日本侵攻艦隊

 旗艦兼戦艦【フラクル】


「む〜う。」


 現代日本人が見たらアメリカ海軍の【アイオワ級戦艦】や【ミズーリ級戦艦】などの欧米戦艦を連想させるような設計のこの艦艇はリフェル帝国海軍自慢の戦艦【フラクル】である。

 そして現在この【フラクル】の中央指揮所でリフェル帝国海軍第1艦隊司令のストリーム司令官はここ最近不機嫌であった。


「司令!戦艦【カイザル】【ロストール】、両艦艇の機関修理が完了したそうです。」


 ストリーム司令官の機嫌が悪い原因が無くなったとなれば機嫌が良くなるのも当然であった。

 ちなみに地球の戦艦と違いリフェル帝国の戦艦の機関は艦全ての電源を担っている最重要機関である。

 つまり機関が故障したという事は推進力のみならず主砲も副砲も艦の灯も全てが止まる事を意味していた。


「ようやくか。全く2週間も停泊する羽目になったでは無いか。」


 最も、その2艦に付き合わされた他の艦艇の乗員は停泊中の間、警戒監視という任務があったが、一先ずの時を味わっていた。


「ニホンの一地域で有るタイワン島まで約1500kmと思われます。現在20機程の戦闘機が両空母より発艦しており、付近の敵艦隊を索敵しています。」


 空母に搭載している艦載機の戦闘行動半径は約1000kmであり、日本側の航空機もそのくらいと推測していた。

 その為、陸地から1500km程離れていたら敵の戦闘機からの攻撃は防げると判断していたのである。

 更にもし敵が空母を引っ張ってきて艦載機が攻撃してきてもこちらも空母から艦載機を発艦させ十分迎撃できると判断していたのである。


「うむ、敵艦隊を発見したら直ぐさま誘導魔導弾を発射しろ。発射してしまえばこちらの勝ちだ!」


「はっ!」


「司令!付近索敵に出ていた艦載機より北部海域240km地点にニホンと見られる艦艇3隻を発見しました!」


 その艦隊はリフェル帝国海軍に誘導弾を打たせて性能試験する為に選抜された対空特化艦隊である。

 当然ながらリフェル帝国海軍艦隊の位置も向かってくる艦載機の位置も艦に搭載されている対空レーダーによって把握していたが、今の段階でリフェル帝国海軍艦隊はその事を知らない。


「よしっ!敵艦艇の特徴は?」


「いずれも小口径の砲塔が1基、5000〜1万tの軽巡洋艦と見られます!」


 日本艦艇を含める現代艦艇にとって砲塔は補助目的に過ぎないのだが、砲が何よりの主兵装である彼らにしてみれば艦の中央部分にある8本の丸い筒や艦艇の前部や後部にある四角いマス目はわからない。


「間違い無いな。ニホン海軍の哨戒艦隊だ!直ぐさま誘導弾の発射準備を行え。」


「現在、敵艦艇の位置座標を入力中です。」


「ふふふ、ニホン海軍め。我が偉大なるリフェル帝国海軍自慢のヘルカーナ誘導弾を食らうが良い!」


 ヘルカーナ誘導弾は10年前に開発を終えたリフェル帝国海軍初の誘導弾である。

 その能力は初期型ミサイルと同等の性能でありロシア艦艇みたいに艦に後付けされた筒状の発射機から発射される。

 比較的大型であり、その最大射程は350kmにも及ぶ。


「司令!敵艦艇を発見した偵察機との連絡が途絶しました。恐らく撃墜されたかと。」


「ふむ、ニホン海軍め。敵ながら中々やるではないか。なるほど、敵の小口径の砲塔は対空砲だったか。しかし偵察機を撃墜するとは中々高度な技術を持っているな。」


 ストリーム司令の読みは当たっており、レールガンを除く日本連邦国海軍艦隊の砲塔はイタリア製の127mm砲かアメリカ製の5インチ砲のどちらかである。

 そしてその用途は主に対空戦闘であり、射程延長弾やGPS誘導弾などの弾種を使用すれば対地戦闘も行える。


「司令、もしかして誘導弾が迎撃されるなんて事は?」


「ははは、心配し過ぎたよ君。幾ら航空機の中でも速いといえ誘導弾とはレベルが違う。それに1隻辺り4発の計48発の誘導弾を発射するんだ。敵艦艇は終わりだろう。」


 実際にはM1.0程の速度しか出せなく、かなり大型のヘルカーナ誘導弾は高性能SPIと連動した3艦(愛宕•秋月•不知火)のMk.45.5inch砲なら問題無く撃墜できる。

 最も最大射程が30km程度しかない砲塔よりそれぞれに搭載されているSM-6艦対空誘導弾の方が射程も命中精度も良い為、そっちが使われるであろうが。


「そうですね、失礼しました。」


「構わんよ。」


 ここ最近の不機嫌の種であった艦艇機関の修理も終わり、更に敵艦隊も発見した事により司令官は上機嫌であった。

 少なくとも今はまだ。


「敵艦艇の座標入力完了!ヘルカーナ誘導弾の発射準備が整いました。」


「よ〜し、撃てーーー!!」


 そしてヘルカーナ誘導弾を搭載している12隻の艦艇に付いている各4本の計48本の円形状の筒から誘導弾がゴォォォォォ!!という音を立てて同じ方向へと向かっていった。

 対艦誘導弾の迎撃は困難である、少なくともリフェル帝国海軍では対艦誘導弾の迎撃は現状の技術では現実的では無いと考えられていた。

 故に先制攻撃を行えた時点でストリーム司令を含め日本侵攻艦隊のリフェル帝国海軍将兵は勝った気になってしまったのだ。


 しかし発射から僅か数分後に悲鳴じみた報告が上がる。


「て、敵艦隊の方向よりレーダー反応多数!」


「なんだと!?対艦誘導弾か!?」


 ストリーム司令は驚愕の声を上げた。

 敵の偵察機を見つけたという報告はなく、敵艦隊が此方を捕捉出来るはずがない、そうストリーム司令は考えていた。


「いえ、そんな・・・・速すぎます!飛翔物の速度は音速を遥かに超えているとしか・・・・」


 実際にヘルカーナ艦対艦誘導弾を迎撃しているのは【愛宕】【秋月】【不知火】の3艦に搭載されているSM-6艦対空誘導弾である。

 SM-6艦対空誘導弾の飛翔速度はM6.0程で音速の約6倍、リフェル帝国軍のレーダーではヘルカーナ艦対艦誘導弾より速いという事しか分からなかった。


「なんだそれは・・・・。砲弾か何かか?」


「・・・・不明です。飛翔物、我が方のミサイルと交差・・・・」


 その時レーダー士官は信じられない物を見る事になる。


「き、消えました!!敵ミサイルにヘルカーナ対艦誘導弾が迎撃されています!」


 レーダーに映っていたヘルカーナ対艦誘導弾と敵艦隊が発射した誘導弾が交差した瞬間ミサイルを示すグリップが消え始めたのである。


「な、なんだと!?ミサイルを迎撃だと?」


 リフェル帝国ではミサイルの迎撃についての研究が進んでいるが、まだ対空誘導弾さえも開発中の段階である。

 陸海空軍が手を取り合って共同開発すれば可能なのだろうが、不仲が原因でまだ開発できていないのである。


「・・・此方が放ったミサイル反応・・・全てで消失・・・・・・。」


 中央管制室は一瞬のうちに静まり返った。

 元々部屋が部屋なだけに騒がしい場所ではなかったのだが、今は話し声さえも聞こえず機械音のみが部屋に木霊していた。

 

「全弾発射だ。」


「はい?」


 部下は一瞬ストリーム司令の言っている意味が分からなかった。

 当然の事ながら最新鋭のミサイルと言う物は砲弾よりも遥かに高く補給が効かない侵攻で全てを使う訳にはいかなかった。


「全弾発射しろって言ったんだ!!直ぐさま僚艦に打電しろ!」


「し、司令。お待ち下さい!敵は我がミサイルを迎撃する技術を保有しています。闇雲に撃っても迎撃されるだけです!」


「うるさい!!ミサイルを迎撃するミサイルなどそんな大量に載せているわけがない!敵艦隊の処理能力を弾数で上回るんだ!」


「ここは一時撤退すべきです!敵がミサイルを迎撃できるミサイルを保有するのならば此方の艦隊を攻撃するミサイルも必ず保有しています。」


 日本艦艇に搭載されている17式艦対艦誘導弾の最大射程は約400kmであり、この侵攻艦隊は防空特化艦隊の射程圏内にあった。


「くどい!敵艦隊は大型の駆逐艦か軽巡洋艦しかいない!そんな艦艇にヘルカーナが1発でも当たればそれだけで敵艦艇は沈む!逆に此方は戦艦だ!数発当たったところで沈む事は無い。これ以上言わせるな!」


 ストリーム司令の考え方はある意味正解であった。

 確かに日本艦艇に対艦誘導弾が1発でも命中すればたちまち戦闘不能になりそのまま沈没する可能性も少なくなかった。

 逆に戦艦に対艦誘導弾が命中しても数発程度なら耐えられた。


「か、かしこまりました。残弾全てを使用し敵艦隊に攻撃します。」


「・・・直ぐさまやりたまえ。」


 そして艦隊は残存誘導弾による攻撃を行う事を決定した。

 最も、その攻撃が行われる事は無かったのだが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白く読み入ってしまった [一言] 投稿が急に止まったのだがどうした
[一言] つ、次はまだかのぅ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ