第24話 SFCTO安全保障理事会
統一歴1819. 5.20 16:27 現地時刻
南フォロナ大陸中部 アースレイト連邦国
南フォロナ大陸条約機構本部 会議場
南フォロナ大陸条約機構の本部があるアースレイト連邦国の副首都であるセイラにある巨大な建物、それがSFCTO、南フォロナ大陸条約機構の本部であった。
SFCTOは南フォロナ大陸条約機構(South Forona Continental Treaty Organization)の略である。
アースレイト連邦国には条約機構の本部がある為、各国大使は非常時の時の国の全権大使となる。
29ヶ国が加盟している南フォロナ大陸条約機構だが、そんな数で話し合っても議論が纏まらない為、地球の国際連合と同じように強い権限がある常任理事国がある。
これまで常任理事国は4ヶ国であったが、新たに日本が南フォロナ大陸条約機構の常任理事国となった。
そしてその常任理事国の安全保障理事会の議場の中心部分に日本連邦国大使を含め常任理事国の大使と司会役の1人合わせて6名が座っている。
そしてそのステージ化している周りには常任理事国では無い加盟国の大使達が囲むようにして座っていた。
「では、これより南フォロナ大陸条約機構安全保障理事会を開催する。常任理事国である貴国達大使は既にご存知の通り、フォーグ大陸の覇者であるリフェル帝国が南フォロナ大陸に侵攻を開始した。既に非加盟国であるステアート帝国が落とされ、リフェル帝国陸軍30万が進駐している。既に決まってる通り条約機構軍の派兵が決定した、その為常任理事国である貴国達には参戦条項が生じた。派兵する戦力の編成をお聞かせ願いたい。」
「では、まず我が国から。我がテスタニア王国は7万5000の兵力を派遣、魔法師団も2500名派遣します。残念ながら付近に戦闘機の離発着が可能な飛行場がない為、航空戦力の派遣には時間が掛かります。」
「では、続いて我がアーセナル共和国は60隻の航空魔導戦闘艦を派遣し、地上部隊を支援します。地上部隊が派遣できない事についてはお許し下さい。」
航空魔導戦闘艦とは飛行用の魔導機関を搭載した空飛ぶ戦艦の事である。
こう言った艦艇は各国も少ながらず保有しているが、ここまで纏まった数はアーセナル共和国のみである。
ちなみに日本も現在飛行型の航空母艦の研究•開発を行なっている。
「我がリーベル王国は大河を使用し、2個艦隊の装甲艦を派遣します。更に地上部隊として6万の兵力を派遣、他国軍と連携し、敵を殲滅します。」
「我々リースレイト連邦国も6万の兵力を派遣、1個艦隊の装甲艦を大河を使用して派遣します。」
日本とは違い大河の河川沿岸国の為、艦艇を河川で派遣する事にそこまでの抵抗は無い。
更に日本の数千tクラスの艦艇と違い小型の艦艇しか保有していない為、座礁などの危険性も少ない。
「我々日本連邦国は2個師団約3万の兵力を派遣、更に80機程の戦闘機を付近の航空基地に派遣し、航空支援にあたります。」
「なに?経った3万だと!貴国には常任理事国としての責任があるはずでは無いのか!!」
基本的に常任理事国は有事の際その強大な軍事力を提供するのが普通である。
3万の兵力は現代国家としては比較的多い部類に入るが、日本以外は近代国家であり兵士1人辺りの攻撃力なども段違いとなる。
この世界に来て3年程が経つが、未だに日本の力を知らない国家も多数存在する為、加盟国でも怒号を発する人と頭を抱える人の2種類に分かれるのである。
「貴国軍は総兵力42万と聞きますが、3万とは随分やる気の無い派兵ですね。」
次々と常任理事国以外の加盟国の大使から日本連邦国大使に対して怒号が飛んでくるが、日本連邦国軍の実力を知っている常任理事国や他の加盟国の大使は頭を抱えていた。
「何故、他の常任理事国大使は何も言わないんだ!そんな国を常任理事国にしたのは貴国達であろう!」
「常任理事国としての責任感は無いのか!!」
遂に、加盟国大使の怒りが日本連邦国大使だけでは無く、日本連邦国を常任理事国に推薦した他の常任理事国大使にも向かってきた。
「静粛に!!!」
そんな中司会進行役でもあるリースレイト連邦国の大使が机を叩き他の加盟国大使達を睨みつけた。
リースレイト連邦国は南フォロナ大陸一の大国であり(日本連邦国が転移するまで)、そんな国の怒りはどの国も買いたく無かった為、怒号が飛び交っていた議場は一瞬で静かになった。
「今は日本連邦国大使が説明している途中だ、貴国達大使はその辺りの礼儀もわきまえ無い国家なのか?」
「その通り、ここにいる日本以外の常任理事国が束になってかかっても軽く捻り潰すだけの軍事力を日本は保有している。そんな国の大使にそんな言葉を吹っかけて良いのか?」
アーセナル共和国大使の言葉に怒りを露わにしていた加盟国大使は戦慄した。
日本以外の常任理事国が束になって掛かっても軽く捻り潰すだけの軍事力を保有する国家、直ぐに理解したのか顔が蒼ざめていった。
「誠に申し訳ない。続けて下さい。」
「いえ、お気になさらずに。我が国の南方海上にリフェル帝国海軍の大艦隊が出現した為、それに戦力を割かなければならずにこの程度の派遣となってしまった事は謝罪する。」
それを聞いた他の加盟国大使は先程発言した自分の無礼な行いについて深く反省していた。
ステアート帝国を軽く捻り潰すだけの技術力を有しているリフェル帝国の海軍が弱いはずがなかった。
実際には彼らの想像以上にリフェル帝国海軍は強いのだが、ここにいる人中でその事をわかってる人間は日本連邦国大使のみであった。
「リフェル帝国海軍の大艦隊とはどのような規模ですか?」
「60隻程の艦隊だ。貴国の航空魔導戦闘艦の数倍程度の大きさの艦艇のな。」
その言葉で質問したアーセナル共和国大使は蒼ざめた。
アーセナル共和国も異世界からの転移国家であり、技術力はそれなりに高かった。
だが自国が誇る航空魔導戦闘艦より巨大な艦艇と言われるとその自身が崩れ去っていった。
「!?そんな艦隊が。」
「なるほど、失礼しました。ところで貴国は航空支援を行うと言われましたが、付近に飛行場は無かった筈では?」
「テスタ王国とフィラント王国にそれぞれ我が国が建設した飛行場があります。そこから支援にあたります。」
テスタ王国とフィラント王国は比較的前線よりの国家であるが、前線国家では無い。
各国もその2ヶ国に日本が造った飛行場がある事は知っていたが、航続距離の観点から使えるとは思えなかった。
「え?」
「し、失礼ですかテスタ王国は800km、フィラント王国は1200km程離れています。戦闘機の航続距離では支援は不可能かと思われますが?」
日本やリフェル帝国以外の国家の航空機の航続距離は1000km程度であり、行って戦闘して帰ってくる事を考えるとそんなに離れていると使えなかった。
日本と違い空中給油という考えや装備が無いのもその理由であった。
「我が国の戦闘機は少なくても3000km程の航続距離を有していますのでご心配なく。」
「なんだと?戦闘機が3000kmも?」
日本連邦国空軍で1番航続距離が短い近代改修前のF-2A戦闘機は航続距離が3200kmほどであり、近代改修後のF-2C戦闘機の3900kmより短い。
戦闘行動半径に直すとそれぞれ1410kmと1760kmになるが、この世界の基準では考えられなかった。
「嘘だろ?」
「どんな国なんだ日本は?」
「なるほど、失礼しました。それだけの技術力を有しているのなら当然ですね。日本連邦国軍派遣部隊には鉄道の優先的使用権を与えましょう。」
その言葉に参加国にどよめきが広がった。
南フォロナ大陸には各国を分断する鉄道が走っており、その鉄道幅は日本の狭軌では無く標準軌であった。
だが、鉄道は各国が部隊を送る為に使用したい輸送手段であり、その鉄道の保有国であるアーセナル共和国がその鉄道の使用を日本に認めたという事はそれだけ日本連邦国軍が強いという事の表れでもあった。
「なに!?鉄道の。」
「そうですか、それは有難く思います。車両はこちらで準備してもよろしいですか?」
鉄道は使用出来てもその上を走る車両は魔導機関を搭載した魔車であり、その速度は30〜40km/hと日本基準からすれば非常に遅かった。
その為、日本本土から車両(電線が無い為、水素動力の牽引車)を持ち込む事になった。
日本としても戦車や車両などの重量物を運んでくれるのはありがたかった、ちなみにヘリコプターなどはテスタ王国やフィラント王国の飛行場に輸送機で運ぶ予定である。
「ええ、問題有りません。」
こうして日本は今回の戦争に地上部隊を派遣する事になったのだが、未だに日本の軍事力に半信半疑な国家もその実力を知るのは直ぐだった。




