第22話 戦闘開始
「何だ!!一体何が起こった!?」
「く、クリストフ機とネルダフ機が撃墜されたぞ!」
しかし、部下からの無線の反応は無い。
突如として爆散したクリストフ機とネルダフ機ら翼が折れる程の爆発は、故障では無く、明らかに攻撃と判断した。
「て、敵は何処にいる!」
「あ、あれは何だ?」
彼が見た物は自分の愛機であるアントレア艦上戦闘機の丁度前方からもの凄い速さでこっちに向かってくる光の矢であった。
「ぜ、前方から高速飛行物体が接近中です!!」
「か、回避しろ!」
そう言い隊長機はマニュアル通りの回避行動に入った。
もう既に自分を含め6機いた戦闘機は自分の愛機と隊長機のみとなっていた。
『司令部!!司令部!!我、攻撃を受けつつあり!!我、攻撃を受けつつあり!!残りは自分と隊長 • • • • • •あぁ!?隊長機がやられた!!残りは自分の機のみ!!』
司令部に最後の報告を終えた機もすぐさま光の矢、SM-2艦対空誘導弾の攻撃を受け爆散した。
しかし、彼は最後まで自分の使命を全うした。
リフェル帝国 対日本派遣艦隊
空母【ダスター】航空司令室
「何が • • • • • • • • 何が起こった!!」
偵察に出したアントレア艦上戦闘機6機の全滅。
日本領台湾まで残り2000kmを切った為、日本海軍の艦艇が現れる頃だろうと考え早期発見の為に出した偵察隊の全滅。
空母を含め艦隊所属の艦艇のレーダーは半径100km程度しか探知距離が無い。
その為の偵察隊であったが、先程その偵察隊のうちの1機から全滅したとの報告があったのである。
もうすぐそこまで敵が来ている。
航空司令官であるバードは瞬時にそう判断した。
6機のアントレア艦上戦闘機でも敵わないほどの航空機を出してきた、事前の情報で日本に航空機がある事は判明しており、その為、空母を2隻も派遣艦隊にねじ込んだのである。
正規空母【ダスター】は4万t程の排水量を持つ戦艦の次に大きい艦艇である。
戦闘機であるアントレア艦上戦闘機を含め60機程の魔導航空機を搭載しており、統一戦争では多大な貢献をしてくれた艦艇である。
「わ、分かりません!敵の攻撃だと思われます。」
「くそ!直ぐに1次攻撃隊の発艦準備を始めろ!」
「はっ!」
そう言うとすぐさま20機のアントレア艦上戦闘機が発艦準備に取り掛かった。
そしてもう1隻ある空母【ドール】でも急遽、第1次攻撃隊の発艦準備が行われ、艦隊全体が戦闘状態に入った。
「くそっ!日本軍め。」
航空司令官であるバードは敵を発見出来ない苛立ちから悪態を吐く事しか出来なかった。
90分前
日本連邦国 台湾州 高雄市
日本連邦国空軍 高雄空軍基地
台湾島高雄市は台湾併合時から軍がその好立地な場所に目をつけ軍事基地の街として発展してきた街である。
今や南台湾地方の中でも最大規模を誇る都市であり、台湾州政府の行政機関が多く設置されている。
陸海空軍の全ての基地•駐屯地が置かれている全国でも珍しい場所でもある。
そんな基地の一つが高雄空軍基地であり、2700m級の滑走路を備える基地である。
高雄市には空港が多く、民間の高雄国際空港、プライベートジェット機などを運用する空港、海上保安庁が対潜哨戒機などを運用する空港、そして高雄空軍基地と4ヶ所もの空港•基地がある。
そんな一つの高雄空軍基地では4機のスタイリッシュなデザインの機体が離陸しようとしていた。
『リコン01より管制塔。離陸許可を願う。』
『管制塔よりリコン01へ。離陸を許可する。繰り返す。離陸を許可する。検討を祈る。』
管制塔から離陸許可を得るとその機体は4機続けて滑走路に侵入し、2700mある滑走路の半分近くを使ってタービンエンジンの独特な音を響かせて離陸して行った。
滑走路から離陸したその機体の名前はB-4J爆撃機、2008年に開発が完了した日米共同開発のステルス爆撃機である。
形はB-1爆撃機ランサーを模した形をしており、可変翼の採用によりM2.0もの飛行速度を誇る。
航続距離は1万kmを超え、アメリカは高価過ぎたB-2の補充、日本はB-1の後継としてそれぞれ導入した。
B-4の日本版であるB-4Jはアメリカ版と違い核弾頭の搭載能力がない代わりにASM-4空対艦誘導弾を格納庫内に最大18発搭載出来る。
ASM-4はASM-3の後継空対艦誘導弾として2019年に開発が終了した新型空対艦誘導であり、その飛翔速度はM4.0を超える。
ただし、今回は弾薬の在庫の関係からASM-3を搭載している。
「機長、海保の巡視船は無事でしょうかね?」
「ん?【最上型】フリゲートがいるんだろ?第二次大戦レベルの戦闘機なら直ぐに撃ち落とすさ。」
実際には【最上型】フリゲート艦のSM-2艦対空誘導弾により6機全機撃ち落としたのだが、この時点ではまだ情報は入って来ていない。
「でも、この世界って魔法があるんでしょ?」
「そうだな、大砲の射程は2倍くらいに延びてるらしいな。命中精度は分からんが。」
リフェル帝国海軍の最新鋭砲塔である40cm3連装砲塔だとその最大飛翔距離は70kmに及び【大和型】戦艦の46cm3連装砲塔の47kmを遥かに超える。
更に魔導レーダーなる物を備えている為、命中精度は第二次大戦を超えるレベルである。
「ひぇ〜、大砲の砲弾なんてまともにくらったらこの機体なんか木っ端微塵じゃ無いか。」
「馬鹿か、24000ftを飛行中の機体に命中できる艦砲がどこにあるんだよ。魔法はあくまで補助らしいからな。馬鹿な事言ってないで仕事しろ。あと2時間程度だ。」
24000ftはメートルに直すと8000mであり、地上からの視認はほぼ不可能であり、いくら第二次大戦以上の命中精度だからってその高度を亜音速飛行するB-4Jを揺れている艦艇に搭載している砲で撃ち落とすなど不可能である。
只でさえB-4爆撃機は高いステルス性能を誇っており、対空ミサイルでも命中させるのは難しいのに大砲の砲弾が当たる確率など皆無に等しい。
「了解です。」
2時間後
「リコン01よりアマテラス04へ。目標地点付近到達。攻撃許可を願う。」
アマテラスはE-767早期警戒管制機の事である。
04と呼んでいる為、この機体は6機調達された中の4番目に調達された機体である。
E-767早期警戒管制機は3機づつ浜松空軍基地と嘉手納空軍基地に配備されており、この機体は嘉手納空軍基地より進出してきた機体である。
『アマテラス04より、リコン隊へ。攻撃を一時中止していつでも撃てる体制を取れ。』
「なに?どういう事だ?」
『敵艦隊より多数の機影を確認した。攻撃は敵機の対処が終わってからだ。』
B-4Jは爆撃機であり最大速度M2.0を誇るが、流石に第二次大戦レベルとは言え戦闘機を相手にするのは不可能である。
現在地は台湾島から南に1500km地点であり、空母がいない今は戦闘機などの支援を受けるのも不可能であった。
「敵機の対処はどうするんだ?」
『第3艦隊及び第12艦隊が敵機の対処を行う。』
第12艦隊は呉を母港とする第2艦隊群所属の3つの艦隊のうちの一つである。
第11艦隊以降の番号は全ての艦艇が汎用駆逐艦で編成されており、この第12艦隊もその中の一つである。
汎用駆逐艦【不知火】【照月】【旗風】【朝霧】の4隻は対艦戦闘•対空戦闘•対潜戦闘とマルチにこなせる艦艇である。
「第12艦隊もいたのか。リコン01、了解。」
そう言い4機のB-4J戦闘爆撃機は高度30000ftまで上昇し、敵戦闘機の対処が終わるまで付近を遊弋する事となった。




