第20話 南フォロナ大陸侵攻
帝暦1353年6月1日、西暦2027年6月1日。遂にリフェル帝国は南フォロナ大陸侵攻作戦を開始した。
参加兵力は40万、艦艇317隻、航空機1270機を投入したリフェル帝国史上最大の作戦であった。
海上戦力は仮想敵国の中で最も海軍力が有ると推定される日本に向けて侵攻、陸軍は南フォロナ大陸でも南西部に位置するステアート帝国を上陸地点と決めた。
南フォロナ大陸の殆どの国家が加盟する南フォロナ大陸条約機構でも数少ない非参加国の内の一つがステアート帝国であった。
南フォロナ大陸の南東部は地球で言うマレー半島みたいに大きく出っ張っていた。
その為、南東部に上陸するのは大部隊で無くても良かったのである。
そして何故、ステアート帝国を上陸地点に定めたかと言うと南フォロナ大陸条約機構に参加しておらず他の大陸諸国から離れていたからである。
その為、ステアート帝国はリフェル帝国の餌食となったのである。
南フォロナ大陸 南西部
ステアート帝国 帝都 ステアート
南フォロナ大陸の中でも南西部に位置するステアート帝国は広大な森林地帯の為、他の大陸諸国との交流が薄く、その為条約機構にも参加しなかった。
他の諸国との交流が薄かった分、この国独自の文化が発達しており、地球で言うと地中海風の文化が根付いていた。
そしてステアート帝国の帝都にある城は帝都を見下ろす丘にあり、その城はステアート帝国民の誇りでもあった。
そして今、ステアート帝国民の誇りでもあった王城、そして帝都は一面火の海となっていた。
「直ぐに帝都防空隊を出撃させて、あの魔導航空機を撃墜するんだ!」
「し、しかし既に帝都防空隊の航空基地は敵の魔導航空機によって完全に破壊され、対空砲も全く当たりません。」
魔導航空機を実現したのはリフェル帝国だけではなくステアート帝国も開発に成功したのだが、1年前の事でまだ数が無く、今回も空に上がる事なく、地上撃破されていた。
少なくともリフェル帝国の魔導戦闘機はステアート帝国の魔導戦闘機よりも遥かに高性能に見えた。
実質ステアート帝国の魔導戦闘機は地球で言う第1次大戦初期レベル、リフェル帝国の魔導戦闘機は第2次大戦後半レベルの為、当たり前なのだが。
「て、敵は!敵国は分かったのか?」
「は、はい。外交部に問い合わせた所あの国旗はフォロナ大陸南東部に位置するフォード大陸のリフェル帝国だと判断しました。」
日本みたいに転移してきた国家ならまだしもリフェル帝国は昔から存在していた国家である。
鎖国国家と言えどもリフェル帝国に関しても少なくない資料はある。
「ふ、フォード大陸だと!?バカな、フォード大陸から我が国までどれだけの距離があると思っているんだ!」
「し、しかし既に………」
軍務省長官が現状を報告しようとした。
しかしその時、大広間の扉が開き、軍務局長が飛び込んできた。
「し、失礼します!」
「何事だ、無礼だぞ!」
「し、しかし緊急の報告が。」
「よい!申してみよ。」
本来なら完全に不敬の罪により死罪だが、現在ステアート帝国は他国からの侵攻という非常事態である。
その為、皇帝は多少の不敬を見逃した。
「は、はい!我が海軍艦隊がリフェル帝国海軍と見られる艦隊と遭遇、全滅しました!」
「な、なに!?全滅?そ、それで、敵艦隊は?」
ステアート帝国は国土を森林に囲まれているという、その地理的要因から比較的海軍に力を入れている国家であった。
流石に予算や人員は日本程ではないが、これまでかなりの予算や人員を海軍に注ぎ込んだ筈であった。
しかしその海軍艦隊が全滅した、リフェル帝国海軍が強い事は分かっていたが、何かしらの打撃が欲しかった、しかし。
「最後の報告によりますとサナ海岸に上陸していたようです。」
「サナ海岸だと!?帝都から50kmほどしかないではないか!」
「し、しかし………」
しかしその言葉が続く事は無かった。
何故なら帝都まで侵入したリフェル帝国海軍航空隊の魔導戦闘機により投下された爆弾が数十発、王城に着弾したからである。
この爆発により皇帝を始めステアート帝国の重鎮達は魔導爆弾に焼かれ死亡した。
そしてこの攻撃から4日後、残っていたステアート帝国臨時政府はリフェル帝国に降伏、ステアート帝国はリフェル帝国ステアート地方となったのである。
4日後
リフェル帝国海軍第1艦隊
第1級魔導戦艦【フラクル】艦橋
リフェル帝国海軍の魔導戦艦はその大きさから第1級〜第6級まで格付けされている。
地球の大きさに当てはめると、第1級が主力戦艦、第2級が巡洋戦艦、第3級は特別で航空母艦であり、第5級が巡洋艦、第4級が駆逐艦、第6級が沿岸警備艦程度であった。
そしてその第1級戦艦の中でも最新の魔導戦艦が【ソラリス級魔導戦艦】であった。
【ソラリス級魔導戦艦】は1番艦から4番艦まで就役しており、それぞれリフェル帝国有数の都市名である。
ちなみに2番艦【フラクル】は日本で言うと大阪程のリフェル帝国第2位の都市である、当然ながら日本の都市とは比べるまででもないが。
そんな第1級魔導戦艦を中心に第2級魔導戦艦が3隻、第3級魔導戦艦が4隻、第4級魔導戦艦が6隻、第5級魔導戦艦が18隻、そして後方に第4級魔導戦艦6隻に護衛された輸送艦27隻の計65隻の大艦隊が太平洋(仮)を航行していた。
ちなみにこの中の艦艇のうちミサイルを搭載している艦艇は20隻程度である。
また、これだけではなく、第2次大戦初期のUボートレベルの潜水艦も多数派遣されていた。
「司令、南フォロナ大陸侵攻部隊から連絡です。」
「聞こう。」
「スクアート帝国全域を占領、スクアート地方として組み込んだと。」
「弱いな。経った4日だぞ?」
「仕方がありませんよ。あの彼等達はあの精霊を崇めている蛮族なのですから。」
「ふむ、確かにな。所でお前はどう思う、ニホンの軍事力は?」
「ニホンですか?確かに多少なりとも魔導技術力は高いようですが、我が国には遥かに及ばないと思います。聞くところによればニホンは国力の30年%程度しか軍事にお金を使ってないそうではないですか?本当に国民を守る気があるのか疑問です。」
日本連邦国のGDPは約720兆円であり、国防予算はGDP比2.5%の約18兆円である。
GDP比3%だったのは再軍備時や冷戦時代であり一時はGDP比2.2%だった時もあった。
しかし最近の国際情勢の緊迫の為、微増が続いているのである。
一方のリフェル帝国は国力の1割程度を軍事につぎ込んでいる。
しかしそもそもリフェル帝国にGDPという考えはなく、国力も国家予算という考えであり、国家予算の3割である。
そもそも日本連邦国の国家予算210兆円の3割となればその額は63兆円となる。
そんな割合は現代国家だと不可能な数値でありリフェル帝国が近代国家だという事がこれを見ても分かる。
「そうか、実は私はニホンは魔導戦艦を持っていると考えている。いや、戦争は最悪の想定をするものだからな。だが、その数値は怪しいぞ?国力の2%?我が国でさえ30%程度は金をつぎ込んでいるのだぞ?3%程度では何を揃えるんだ?」
「た、確かに。しかしこれは情報部が。」
「落ち着け、情報部は恐らくニホンの色々な書籍などを解析したんだろうが、そもそも本当の数字を発表しているかどうかも怪しい。まぁ、かと言えばニホンが我が国に勝てるとは思えんがな。」
「そうですね。我が軍にこの魔導戦艦と航空機運用戦艦、そしてこのミサイルがいる限り負ける事は有りません。」
「気を抜くなよ。戦争はいつ始まるか分からん。」
「ええ、当然です。」




