第15話 2年後
――2年後――
日本連邦国は転移してから2年が経過したがなんとかこの世界で順調に歩んでいた。
当初は韓国海軍艦隊の対馬侵攻などあったが、日本連邦国軍の活躍などにより韓国海軍艦隊を全滅させ、大陸へと乗り出して行った。
そして、日本が最初に接触に成功したのがリーベル王国である。
西の大陸、フォロナ大陸の最東端の国家であり、国土の8割が海に囲まれている事から漁業が盛んな海洋国家であった。
多少の紆余曲折もありながら、最終的には両国は国交を樹立し、平和的な関係を築き上げる事に成功した。
そしてリーベル王国の仲介の下、同じく南フォロナ大陸東部の国であるリースレイト連邦とアーセナル共和国とも国交を樹立する。
そしてその後も様々な国家と国交を樹立し、南フォロナ大陸圏の国家全てと国交を樹立、彼等が入っている同盟である南フォロナ条約機構に日本も参加する事になった。
当時、南フォロナ大陸圏国家は深刻な悩みを抱えていた。
フォロナ大陸は大河を挟んで南側の土地が肥沃で昔から農業が盛んに行われていた。
逆に北側は工業が盛んで南北で巨大な物流ルートが完成していたのである。
しかし50年ほど前、北フォロナ大陸を支配していた国家で反乱が発生、北フォロナ全土が戦火に包まれた。
そこで南フォロナ圏国家は農作物や資源の輸出先と、工業製品の輸入の為、ある大陸圏国家と貿易を始めたのである。
その大陸はフォーグ大陸であり、数年で貿易は軌道に乗り出して全ては順調に思えた。
だが、しかしフォーグ大陸最大の国家リフェル共和国が侵攻を開始、精霊爆弾などの軍事力で瞬く間に全フォーグ大陸を占領、自国に取り込んだのである。
その為、南フォロナ大陸圏国家はまたピンチに陥った。
農作物は捨てるほどなるのだが、工業力が無く、店の棚から瞬く間に商品は無くなり、軍は武器弾薬の製造にも事を書く始末であった。
リフェル共和国が支配しているフォーグ大陸から南フォロナ大陸まで3000kmほどあるが、いつリフェル共和国が攻めてきてもおかしくない。
その為、各国は軍事力をあげないといけないのに、弾薬不足で逆に軍事力はみるみる低下していった。
そこに現れたのが日本連邦国であった。
幸いにも南フォロナ大陸には日本が必要とするもの全てが揃っていた。
石油から天然ガスに鉄鉱石•ボーキサイト•レアメタル•リン、そして自給率が70%前後しかない食料も南フォロナ大陸には捨てるほどあったのである。
日本はこの世界に来てから直ぐ様技術流出防止法を制定、過度な技術の国外流出を禁止した。
しかしそれでも日本の製品はそれまでの北フォロナ大陸製やフォーグ大陸製と比べて格段に品質が良かったのである。
日本から工業製品やインフラなどを輸出、南フォロナ大陸圏国家から食料や資源を輸入するサイクルが出来上がったのである。
彼等の南フォロナ大陸圏国家の技術レベルは1700年代であったが、魔法がその差を埋めており総合的に判断すると1800年代後半ほどの技術レベルがあった。
日本は南フォロナ大陸圏国家にインフラを輸出、それまでフォロナ大陸に無かった継ぎ目のない道路や各国家の首都を結ぶ鉄道などを建設した。
ここに来て驚いたのが、南フォロナ大陸圏国家には地球で言うEUのシェンゲン協定なるものがあり、南フォロナ条約機構参加国は国境が無いのである。
しかし日本は島国という事もあり、国内世論が譲らなかった事もあり国境や入国審査は地球と同じである。
女神レミアスが日本の為に太平洋沖に作った島は秋津島と命名された。
秋津島は小笠原諸島沖に作られその大きさは淡路島ほどである。
秋津島には日本が使う資源の殆どが揃っていた、石油•石炭•天然ガスなどの化石燃料の他レアメタルや鉄鉱石•ボーキサイト•リンなども全て存在していた。
秋津島は転移後20年の2045年までミストテリアスに存在する予定と女神レミアスに言われており、消滅後にはは別の諸島に交代する予定だ。
その為、秋津島に植物は全く生えておらず、開発もしやすい。
既に掘削リグや露天掘り鉱山などが作られており、日本への供給も始まっている。
転移当初は日本の景気が悪化し、失業率が5%に達していたが、南フォロナ大陸圏国家との貿易が軌道に乗り始めると段々と上向いていった。
転移から2年後の現在の失業率は0.71%であり、GDP成長率は3.4%、GDPは714兆円となった。
リフェル共和国の脅威がある南フォロナ大陸各国から技術力が極めて高い日本に兵器の売却案が出ているが、日本は南フォロナ大陸圏国家が扱えないとして全て拒否している。
その代わり、現代の技術で製造し、発射速度、射程、威力を落としたライフル銃を各国に売却している。
そのライフル銃を凄い勢いで各国が購入していく為、ライフル銃の製造元である豊和工業は南フォロナ大陸一の銃器メーカーに成長したのである。
何せ各国、1丁8万円(当然だが、南フォロナ大陸圏国家の方が物価は格段に安い)のライフル銃を数万丁や数十万丁単位で購入していくのである。
日本連邦国軍の20式どころか猟銃より低いレベルなのだが、それでもリフェル共和国が使用している銃より高いレベルなのだから技術格差は恐ろしい。
南フォロナ大陸圏各国は女神レミアスを主神とするレミアス教を信仰しており、リフェル共和国のリフェル教と違って精霊は女神レミアスの使徒という位置付けである。
精霊は自然そのものという国家神道と似たような教えが普通の日本と似たような宗教であった。
中には精霊を聖霊と呼んでいる国家も南フォロナ大陸にはあり、彼等からすればリフェル教の教えはあり得なかった。
そして日本がその女神レミアスとその使徒である精霊に導かれてこの世界ミストテリアスにやってきたと知るや否や、日本を聖域と崇める宗教も出てくる始末であった。
長谷川総理がその事について女神レミアスに相談した所、「聖域か、いいわね。」と逆に気に入られ、あと一歩の所で危うく聖域になる所であったほどである。
また、日本連邦国海軍では【長門型】多任務巡洋艦の2番艦【陸奥】が2027年に就役、これで大湊を母港とする第5艦隊の定数が満たされた。
日本連邦国海軍では第1艦隊群〜第4艦隊群は各4隻で構成される3個艦隊12隻で構成されており、第5艦隊は2個艦隊8隻で構成される事となった。
他にもコルベット艦や沿岸戦闘艦艇•ミサイル艇など4隻が配備されている地方隊が8個艦隊ある。
2027年現在の日本連邦国海軍の艦艇保有数は航空母艦4隻•ヘリ空母2隻•多目的揚陸艦4隻•輸送艦4隻•ミサイル巡洋艦10隻•多任務巡洋艦2隻•イージス駆逐艦10隻•汎用駆逐艦36隻•ミサイル艇8隻•沿岸戦闘艦艇8隻•コルベット艦16隻•潜水艦42隻の主要艦艇のみで146隻保有している。
転移前でもアメリカに続き世界第2位の海軍国家であり3位のロシアとは隔絶した力を持っていた。
2019年からF-15J戦闘機•F-2A戦闘機の後継として調達が始まったF-6A/Bが2027年には累計調達数が170機を突破した。
またF-4EJ戦闘機の後継として2017年から調達が始まったF-35JB戦闘機はB型46機の調達を終えた。
ちなみにF-3A/B戦闘機は近代化改修を行う予定である。
日本連邦国空軍は日本全国に12ヶ所の主要基地と10ヶ所の副航空基地の計22ヶ所の空軍基地と32ヶ所の防空レーダーを設置•運用している。
戦闘機は2027年現在F-15J/DJ戦闘機を142機、F-2A/B多用途戦闘機を212機、F-35JB戦闘機を46機、F-3A/B戦闘機を128機、F-6A/B多用途機を175機の計703機保有している。
海軍と違い陸軍はPKOやPKFなど国際派遣する事は1980年代まで無く、その兵員編成は守り主体であった。
海軍はハワイ沖で毎年開催されているRMPAC(環太平洋合同演習)に艦艇を派遣しているのだが陸軍は基本的に派遣してこなかった。
しかし1990年に発生した湾岸戦争に陸上戦力を派遣しなかった日本は国内外から様々な批判があった。
そして2005年に陸軍の再編計画で14個普通科師団、2個機甲師団、2個海兵遠征旅団から8個普通科師団、2個機甲師団、2個外征師団、4個機動旅団、2個海兵遠征旅団へと改編したのである。
戦車は2027年、現在90式と10式の2種類があるのだが、90式戦車270両、10式戦車350両の計620両保有している。
しかし、90式戦車も導入から40年近くが経ち現在次期主力戦車の開発が行われている。