第14話 北対馬奪還作戦3
2025.1.21 09:05JST
日本連邦国 全土 NHK
『日本連邦国政府は本日、対馬で行われていた韓国軍の掃討を完了したと発表しました。ミストテリアスに現れた韓国海軍鬱陵艦隊8隻は壊滅、全ての艦艇が対馬沖の海に沈みました。そして北対馬に上陸した韓国海兵隊員は現地陸軍部隊と九州の陸軍部隊により掃討され対馬に平穏が戻りました。』
NHKのアナウンサーが先日まで対馬で行われていた掃討作戦の完了を伝えた。
今回の軍事出動に関してはいきなり韓国海軍艦隊が攻撃してきた為、国民は概ね軍事出動に容認的であった。
『長谷部内閣は昨日開かれた臨時国会にて700億円の対馬復興予算を与野党全会一致で承認しました。今回の戦争で日本連邦国軍の隊員12名が殉職し、29名が重軽傷を負いました。防衛総省は来月1日に殉職した隊員に対して慰霊祭を行うと発表しました。』
今回の戦闘で非公表だが、韓国側は4870名が戦死し、日本側は12名が戦死した。
日本側と韓国側の戦死者数に開きがあるのは韓国側の戦死者の殆どが艦艇に搭乗し、対艦誘導弾でまとめてやられたからである。
陸上戦闘では、海からの砲撃と空からの空爆、そして戦闘ヘリなどの装備をフルに発揮し追い込んでいった日本連邦国軍の地理的有利などである。
『日本政府は南北対馬に出されていた避難命令を解除すると発表、南北対馬に増員されていた隊員も通常状態に戻ると発表されました。また防衛総省は台湾北部海域に大陸を発見したと発表しました。今後、派遣部隊が編成され派遣される予定です。』
戦闘前に澎湖諸島の基地から離陸したP-3C対潜哨戒機が発見した陸地はその後の調査で大陸である事が判明し、人工物がある事も判明している。
政府はまず保安省の海上保安庁巡視船を派遣し、その後防衛総省の艦艇を派遣する予定である。
『続いて経済です。転移による貿易の停止などにより失業率が転移前の0.8%から2.3%まで上昇した事を経済産業省が発表しました。しかし専門家によると本来今年度は核戦争の予想であった為、本来の想定と違うが、予想された通りであり、対策は行われていると発表しています。』
日本連邦国の人口は1億5600万人であるが、史実同様に人手不足が深刻化しつつある。
最近はロボットの導入のオートメーション装置による完全無人工場などもあるが、やはり労働者不足は深刻であった。
『実際に働いているサラリーマンにインタビューしたところ「本来ならみんな死ぬ筈だったんだから生きているだけマシだよ。」と笑いながらインタビューに答えました。』
地球に残ってたなら日本は核戦争に巻き込まれて死んでいたのである。
それがミストテリアスに転移してきて無事であったのだ、日本国民皆が女神レミアスに感謝しているのである。
『政府与党である日本改進党の党幹部は来年度の予算は国債に依存しないといけない事を記者の取材に対して答えました。一説には30兆円ほどの大型国債発行も必要との試算があるほど税収の減少は避けられない見通しです。また消費税増税はあるかとの質問に対し「今のところその予定はない。」と答えました。』
日本改進党は道州制の導入と議員定数の削減などの身を切る政策による財政の健全化を進めてきた政党であった。
その為、国民に対して増税に対する理解も得やすく、現在の消費税は軽減税率を採用している。
軽減税率は5%•8%•10%•12%の4段階があるが、日用品は5%か8%であり、国民の負担は多くない。
19:37JST
日本連邦国 首都東京特別区
霞ヶ関 総理官邸 会議室
「やっと、対馬侵攻の事後処理も終わらせましたし、いよいよ文明との接触ですね。」
そう言う長谷川総理の目元にはクマができていた。
ここ数ヶ月は今までで一番忙しい数ヶ月であった。
「ええ、ようやくですね。対馬侵攻でうやむやになってましたが、台湾の北部に大陸を発見したみたいですね。」
「中国大陸と同じ位置にありますね。」
「だが、朝鮮半島は無く、地球より500km以上離れている。それに形も違っている。」
東シナ海が2倍、日本海が4倍と史実より遥かに広くなっているのである。
獲れる魚の種類は地球と同じ種類もあるが、全く違う魚も多い。
「人工衛星の映像を見ても変わった形ですね。この大陸を分断しているのは海峡か?それとも大河か?」
対馬侵攻時の1月20日、九州種子島にあるJAXA種子島宇宙センターからH-4Aロケットが打ち上げに成功した。
打ち上げられたのは情報収集衛星2基とGPS衛星1基、気象衛星1基の計4基である。
「最狭部でも100kmほどで最広部は600kmほどになります。」
「………デカイな。」
「はい、この大河の中にある島は台湾島の半分もあります。」
「レミアス様、この大陸ってなんていう名前なんですか?」
数秒前に光の粒子と共に現れた女神レミアスに聞いた。
もう流石に突然の登場に慣れたのか、誰も驚かなくなった。
「フォロナ大陸よ。一応、大河から南側が南フォロナ、北側が北フォロナとなっているわね。南フォロナ大陸は土地が肥沃で、豊かな国が多いわ。北フォロナ大陸は今は混沌としているわね。」
「混沌としている?何かあったんですか?」
「北フォロナ大陸全土を支配していたグリム帝国が圧政と重税で反乱を起こされて滅んだのよ。それで反乱に成功した組織も内部分裂などで今は、アフリカの内戦みたいな状況ね。」
その言葉でなんとなく北フォロナ大陸の情勢が大体分かった。
そんな所に日本がノコノコ出て行ったら面倒な事に巻き込まれるのは間違いなかった。
「…………とりあえず、南フォロナ大陸の国家と国交を結ぶという事で話を進めていきましょう。」
「ええ、そうですね。その方向で行きましょう。」
その方向で話がまとまった時、女神レミアスが突然ある国について話し始めた。
「……貴方達には伝えておくべき事は一応伝えておくわ。まだ日本と接触する事は無いだろうけど接触するのなら用心する国が1つあるわ。」
「用心する国?」
「リフェル共和国よ。」
「リフェル共和国?共和制なんですか?」
基本的に〜共和国と付いている国は議会がある共和制国家である。
その言葉を聞いて少し近代国家に期待をした人が何名かいた。
「ええ、そうよ。フォロナ大陸より南東にある、地球で言うオーストリア大陸の位置関係にある大陸にある国家よ。女神リフェルと言う居もしない女神を信仰するリフェル教を国教にしている宗教国家ね。」
「宗教国家ですか……」
佐山外務大臣は宗教国家と聞いて嫌な予感しか無かった。
日本も国家神道を国教としている国家であるが、宗教の選択は自由であり、政教分離は行われている。
「ええ、リフェル共和国があるフォーグ大陸には他にも国があるけど、全てリフェル共和国の植民地ね。第一次世界大戦の世界観のヨーロッパと考えて貰った方が分かりやすいかしら。」
「それは、また、流石異世界ですね。」
「ええ、まぁね。現在フォーグ大陸には精霊や妖精はこの世界で唯一居ないわ。」
そう聞いて、フォーグ大陸は異世界から転移してきた国家かな?という想像が一瞬閃いた。
「唯一?それはまた何故ですか?」
「リフェル共和国は30年ほど前にこの星とは違う異世界から転移してきた国家なの。リフェル共和国があるフォーグ大陸ごとね、その転移は日本とは違い自然現象による転移よ。そしてリフェル共和国が国教としているリフェル教にとって精霊は神になり損ねた者として排除対象なのよ。」
「……なんでそんな教義になっているのやら。」
そう聞いて会議参加者は絶句した。
女神レミアスがそう言うのだから、皆が想像している以上に酷い宗教なのだろうと想像出来た。
「政府と教会が癒着したと言えばいいかしら。まぁそれでね、前はまだ良かったのよ。だけど10年前、リフェル教軍部が新兵器の開発を行ったわ。貴方達で言うNBC兵器?と言う破壊兵器よ。ちなみに毒ガス系ね。」
「NBC兵器!?」
そう聞いて参加者達が思い付いたのは第二次大戦中のドイツにアメリカが落とした核爆弾である。
1945年2月に投下された3発の核爆弾は50万人を核の炎で焼き尽くし、ドイツが降伏する理由ともなった爆弾である。
「ええ、毒ガス爆弾の開発に成功したリフェル共和国はその後、当時フォーグ大陸で唯一リフェル共和国に反抗していたエルスタイン連邦国に1発の毒ガス兵器を爆発させたわ。爆発した毒ガスが入った爆弾は爆発した半径500m程の人々は死亡させ、それによってエルスタイン連邦軍は壊滅、エルスタイン連邦国はリフェル共和国に併合されたのよ。」
「地球の爆弾と同じような物なのですね。」
「ええ、毒ガスの詳しい内容は知らないけど日本で使用された場合もそれなりの被害があるわね。」
最初、核爆弾みたいなものかと想像していた彼等だったが、ある意味で核爆弾より厄介な毒ガスに頭を悩ませた。
更にそれなりの知識や技術を知っている日本ではなく全く知らない他国に使用されたらその被害は壊滅的である事が簡単に想像がついた。
「という事は現在リフェル共和国に複数発の毒ガス兵器が貯蔵されている。という事ですか?」
「ええ、そうよ。それで毒ガス兵器を使った彼等を見限り精霊と妖精はフォーグ大陸から精霊界に帰っていったのよ。」
「聞く限りそのフォロナ共和国は技術力が高そうですね。」
「別に高くは無いわ。やろうとしたら貴方達だって簡単に出来る事よ。それは彼等は一度毒ガス兵器を使ってしまったら時が経たないと元に戻せないけど日本の技術力なら戻せると思うわ。」
流石に誰でもという訳ではないがそれなりの経済力がある企業なら可能であり、それなりの研究施設があれば日本だと直ぐに出来る。
やる事は間違いなく無いだろうが。
「そんな効果が限定的な爆弾作るぐらいならミサイルの飽和攻撃した方が断然良いですからね。」
「まぁ、魔法と科学技術があるから第二次大戦レベル越えの軍事力を彼等は持っているわ。銃や戦闘機、まぁライフル銃やレシプロ戦闘機、一部はジェット機かしら?それに1950年代レベルの戦艦など。空母も持ってるわ。滅ぼしても良いわよ。」
「結構です。防衛大臣、彼等は日本の脅威になると思うか?」
総理はリフェル共和国が日本に侵攻してきた場合日本は勝てるのかと防衛大臣に聞いた。
「私から言わせてみれば、どんな装備を持とうがそれに殺傷能力がある以上脅威にはなる、ですね。」
「なるほど、位置的にはここか、当分接触する事は無さそうだが、万が一接触する時には最新の注意を払うように外交官に要請してくれ。」
日本の外交官が行ったら間違いなく殺されるのは目に見えていた。
その為、そうならないように外務省に強く言い聞かせるように言った。
「かしこまりました。」
「では、まず南フォロナ大陸の各国と国交を結ぶぞ。」
「「「了解しました。」」」
「ふふふ、まぁ、日本ならなんとかしてくれると信じてるわ。なんかあったら私も力を貸すからね。」
女神レミアスが力を試したさそうな感じで行ってくるが、もし女神が力を出したら、こんな星一瞬で滅びる事は誰でも想像出来た。
その為、長谷川総理は引きつった笑顔を返す事しか出来なかった。
「ありがとうございます。」