第12話 北対馬奪還作戦1
2025.1.19 06:20JST
日本連邦国 九州 南対馬
日本連邦国陸軍 対馬駐屯地
日本連邦国陸軍対馬駐屯地は南対馬地域にある陸軍の駐屯地である。
1個連隊規模1800名が駐留しており、他にも戦闘ヘリコプター小隊や対艦•対空誘導弾中隊などが南対馬駐屯地には配備されていた。
北対馬は占領されたが、南対馬は普通科部隊の特科隊に配備されているMH70.155mm榴弾砲の砲撃やミサイル攻撃の難を逃れたOH-2多用途ヘリコプターなどにより南対馬への侵攻を抑えていた。
そして先程、北対馬奪還部隊として2個連隊規模3600名の応援部隊を載せた船が対馬港へと到着した。
他にも14式機動戦闘車やAH-64E戦闘ヘリコプターなどが南対馬に移送され、これに海軍の艦砲射撃と空軍の空爆支援が入る予定である。
懸念されていた8隻の敵海軍艦隊だが、10時間程前に九州からの12式艦対艦誘導弾の攻撃により5隻を撃沈、4時間前のF-6Aの攻撃により3隻を撃沈し、韓国海軍艦隊は壊滅していた。
本来ならもっと早く攻撃出来たのだが、急遽敵部隊への攻撃が殲滅へと強化された為、攻撃部隊強化の為、時間を取られたのである。
「司令官、北対馬奪還作戦の準備が整いました!」
「海軍第2艦隊との連携は?」
海軍第9艦隊は佐世保海軍基地を母港とする第3艦隊群所属の艦隊である。
今回の北対馬奪還作戦は陸海空軍の統合作戦である。
海軍の艦砲射撃と空軍の空爆、そして陸軍の地上部隊で掃討する作戦である。
「予定通り06:40から07:00までEco24からtango19までを艦砲射撃します。」
「住民の避難は?」
「北対馬は既に完了しており、南対馬に関しても先程最後の避難船が博多港に向け出航しました。」
韓国海軍の攻撃が開始された後すぐの11:00には防衛出動が発令され、また同時に対馬全域に避難命令が発令された。
元々対馬は島民の90%が南部に住んでおり、北部はほとんど無人であり、空軍のレーダーサイトがあるくらいであった。
そのレーダーサイトが空母【ソウル】の艦載機に破壊され、北対馬の制空権は一時韓国側に渡った。
しかしその後の攻撃で空母を撃沈し、日本が制空権を取り戻した。
「付近の漁船は?」
「海上保安庁第8管区より問題無しとの連絡がありました。」
「そうか、北東部海域の天候異常はどうなっている?」
対馬北東部海域での天候異常は天気を知り尽くしている人からしてみても異常であった。
韓国海軍艦隊がいる30kmほどが嵐状態であったが、その他の海域は至って平穏であった。
誰かが天候操作している、と言われても不思議ではない程の異常であった。
「敵艦隊の全艦撃沈と共に通常状態となりました。恐らく精霊が原因かと。本省(防衛総省)からもそのような通告が。」
「はぁ、本省も大変だな。しかし精霊か、おとぎ話程度に思っていたが、本当に存在するみたいだな。」
「はい。転移後各地で精霊の目撃情報が相次いでいるみたいですね。」
1月1日の転移時の記者会見以降、全国で精霊を見たとの報告や画像•映像が内閣府に届いている。
動画サイトでも精霊の目撃映像が大量にアップされており、総理の記者会見を嘘だと決めつける人はもう居なかった。
「まぁ、自然が味方に付いていてくれると思う。予定通り06:30に北対馬奪還作戦を決行する。上からの指示通り降伏は認めん!敵部隊を殲滅せよ!」
「了解しました!」
06:30JST
対馬沖海上
日本連邦国海軍第2艦隊
ミサイル巡洋艦【那智】
対馬沖海上では、日本海にいた日本連邦国海軍第2艦隊のうちの3隻が今回の事態を受け急遽、急行してきたのである。
ミサイル巡洋艦【那智】、汎用駆逐艦【村雨】【秋月】の3隻はこれから北対馬の敵部隊予想場所に向かって主砲による艦砲射撃を行おうとしていた。
「対馬北東部海域の天候異常が回復しました。」
「あぁ、分かった。作戦通りに砲撃を開始してくれ。」
「了解しました。」
《五十嵐航海長、何故艦長は機嫌が悪いんですか?》
そう聞いてきたのはこの艦、ミサイル巡洋艦【那智】の擬人化AIである那智であった。
那智はこの艦艇の全てのシステムを掌握しており、艦の大きさに比べて遥かに少ない人数で艦を運用する事が可能である。
擬人化AIはミサイル巡洋艦と多用途巡洋艦の計6隻に設置されており、今後新造される全ての艦艇に搭載する予定である。
「向井艦長は対馬の出身だからだよ。自分の故郷を攻撃したんだからね。」
《な、なるほど、そうでしたか。》
「五十嵐航海長、今は作戦中だ。私語は慎みたまえ。」
五十嵐航海長と那智は小声で話していたのだが、地獄耳を持っている向井艦長の耳は誤魔化せなかったようである。
「り、了解しました。」
「艦のシステムはどうだ?那智。」
《オールグリーンです、艦長。》
艦のシステムを全て掌握している那智は艦の異常があれば直ぐに判明出来る。
「そうか。砲雷長、時間だ。攻撃を開始せよ。」
「了解しました。方位2-2-5。弾数20。弾種通常弾。前部155mm砲。砲撃準備よし!」
ミサイル巡洋艦【那智】には2つの砲が搭載されている。
艦前部に搭載されている155mmレールガンと艦後部のヘリ格納庫上部に搭載されてる127mm単装砲である。
その内艦前部にある155mmレールガンが砲塔を北対馬へと向けた。
《砲撃システム、オールグリーン。》
「砲撃開始まで3……2……1……0、砲撃を開始せよ。」
「砲撃開始。」
そう言うとディスプレイにある射撃ボタンを押した。
すると北対馬に砲を向けた155mmレールガンの射撃が開始された。
同時刻
北対馬南部 上空1500ft
日本連邦国陸軍第8ヘリコプター団
戦闘中の北対馬上空を4機編隊で飛行するヘリコプターがあった。
AH-64E戦闘ヘリコプター、アメリカのボーイング社が開発したアパッチ戦闘ヘリコプターの最終形態である。
日本連邦国陸軍は80機のAH-64Dを2001年に導入する事を決定したが、その後のコスト上昇などにより結局23機の導入に留まった。
史実ではライセンス生産だったが、この世界では完成品購入であり、富士重工の控訴は発生しなかった。
その後2009年、AH-64の最終形態型であるAH-64Eを事故で失った1機を除いた22機と合わせて80機体制にする為、58機導入する事が決定した。
そして2023年にAH-64E58機の導入と22機のAH-64Dの全機E型への近代化改修が完了した。
「機長、海軍さんからの砲撃が始まりましたよ。」
「あぁ、見えてるよ。2時の方向に敵歩兵部隊。」
「了解しました。機銃で攻撃します。」
そう言うとガンナーはAH-64Eの機首下部にある30mmチェーンガンによる射撃を開始した。
「ぐわぁーー!」
「勝てるんじゃなかったのか!うわぁー!」
4機のAH-64Eから発射された30mm弾を受けた韓国海兵隊は断末魔の悲鳴を上げながら事切れていった。
「ん?おい、死んだ韓国兵、消えてないか?」
「あぁ、死体が残ってないな。まぁ、気が楽だろ。」
戦後に死体の処理をする事を考えると死体が無い方が色々な意味で楽である。
特に死体処理をする人にとったら気持ちの問題でも非常にありがたい事である。
「まぁ、そうだけど……。」
『地上部隊より支援部隊へ。R-14エリアに敵戦車を発見、掃討せよ。』
「敵戦車、K-2か?まぁいい。ヘルファイアの準備しろ。」
K-2戦車は2012年大韓民国が開発した第3.5世代型の戦車である。
韓国海兵隊が保有している戦車でもあり、日本の90式戦車と同等のスペック値がある。
しかし歩兵にとっては戦車は驚異であり破壊しなければならない。
「了解。フソウ01より地上部隊へ。これより掃討に向かう、退避されたし。」
『こちら地上部隊、了解。』
そう通信で地上部隊へと伝えると機長でもある操縦士はAH-64Eを戦車発見場所へと向かっていった。
「敵戦車発見!」
「了解、ヘルファイア、発射!」
そう言いガンナーのスティックにある赤ボタンを押すとAH-64Eの脇に搭載されている8発のヘルファイア対戦車ミサイルのうち2発が発射された。
発射された2発のヘルファイアは2両のK-2戦車に各1発ずつ向かっていった。
そして戦車の防御力が弱い上部に命中したヘルファイア対戦車ミサイルはK-2戦車上部で弾頭を爆発させた。
命中した2両のK-2戦車は完全に破壊され、行動不能となった。