サメ探し その6
海岸に着くと、輪太郎は記憶を頼りに、カルガとお母さんが出てきた辺りを指さした。
空中なので高低のはっきりとした場所はわからない。
「確かあの辺でした。2メートルくらいの高さから落ちてきたように思います」
輪太郎が指さしたところをボスはじっと凝視していた。
「そこで間違えないな」
「はい。黒芋虫が出てきたためここの砂はだいぶ柔らかくなっています。西に見えた御池田畑灯台がちょうどその光で隠れたのでそこら辺で間違えはないと思います」
「ふむ」とボスは言うと懐から皮の袋を取り出していた。
その袋には赤い粉が入っており、その粉をボスは手に持つとフッと息を吹きかけ飛ばした。
きらきらと赤い粉は空に浮かび、そして引っかかるように宙に浮いたままの粉が赤い線を引いている。
「確かに亀裂がある」
ボスはそう言うと、手を開いて前に突き出していた。
初めてボスが少し力を入れているように見える。
するとボスの十本の指先が黒く変色し始めた。
ボスはトンと飛ぶと、十メートルは先にある赤い亀裂にふらりと舞い降り、その赤い線に十本の指を突き刺し、左右に引き裂いた。
引き裂かれた亀裂は光だし、カルガが出てきた稲妻のようにみえた。
「お前たちも付いて来い」
ボスはそう言うとその光に包まれ消えていく。
ラスは助走をつけてジャンプして、その光に入って行く。
京子も同じように優雅に飛び込む。
輪太郎は急いで脱兎アメを舐めて、海に入り、思いっきりジャンプして、何とか亀裂の裂け目に入ることが出来た。
靴がびしょびしょで気持ちが悪い。
気が付くと、景色が全く変わっていた。
天を突くような大木が辺りに生えている。
まるで小人になったような気分だった。
地面は砂地で雑草も生えておらず、ところどころ木々の根が見えるだけで、大木がなければ地球の砂漠のような景色である。
「わあ、何か凄いところだね」と京子が驚いている。
「ラス。ここのリゲンの濃度を調べてみろ」とボスが言った。
「はい、少々お待ちくださいな」とラスは懐から小瓶を出して、その蓋を開けていた。
中に透明な液体が入っているようだが、その液体は見る見る変化し、今まで見た事のないほど真っ黒になった。
まるで光が全て吸い込まれているようだ。
「えらく濃い場所ですな。ここはどこやろ?」
「ふむ。新しい世界の可能性があるな」
ボスのその発言にラスは「え?」と間の抜けた返事をした。
2月になっても病は治らぬ。ぐっと薬を飲む。




