サメ探し その2
広大な海を京子は嬉しそうに見ている。
海を見慣れている輪太郎も海上から見る景色は新鮮で見入ってしまう。
「それでどうやってサメを捜すんですか?」と輪太郎がラスに聞いた。
「そうやなあ。どうすれば見つかるんやろうな」
「あれ? 何か作戦あるんじゃないんですか?」
「ないで。船が届いたから出てるだけやで」
すごい行き当たりばったりだなと輪太郎は思った。
水平線が広がる海上にサメの気配は感じられない。
釣り糸を垂らしてのんびりしていても仕事をしていることになるから楽だけど、せっかくなのでサメを捕まえてみたい。
ここ一週間の目撃情報はほとんど御池田畑海岸でサーフィンをしていた人が見ている。
そのため今はサメ注意勧告が出て、サーファーはいなくなっていた。
探すなら御池田畑の海岸沿いだろう。
ひとまず御池田畑の海岸が見える場所まで移動してもらい、停船してもらった。
「いつも歩いている海岸を船から見るのって不思議な感じ」
そう言うと京子ははしゃいでいた。
停船して一時間、何の変化もなかった。
たまに飛んでいる海鳥を見たり、跳ねた魚を見て釣り竿が欲しくなったりしたが、サメは現れる気配がない。
待つだけではなく呼び出せないだろうか。
地球のサメは血の匂いに敏感で寄ってくるという。
匂いと言えばウエストポーチのそこでずっと使われないアイテムがあったな。
試しにやってみるかと輪太郎はイチコロチーズを食べてみた。
濃厚で深みのある味わいだ。もちもちとしているが食べ終わりは爽やかであり、精も付いた気がする。
やはりマヴィスのものは旨い。
「クッサ!」とラスが叫んでいた。
「何や。何が臭いんや。この腐った臭いは何や!」
ラスが怒っている。京子が不満顔で鼻をつまんでいた。
「あの、ちょっとイチコロチーズを食べてみたんですけど」
おずおずと輪太郎が言う。
「あほ、部屋の中で食べるな。しかし、地球人が食べると臭いが格別やな」
そう言われたので、輪太郎は急いでデッキに出た。
怒られちゃったと輪太郎は少し凹んだ。
他のドーピングアイテムは最長で30分ほど持続するがこれはどうだろうか。
臭いが消えるまで誰も話しかけてくれなさそうだ。寂しい。
一人で寂し気に海を眺めていると、不意に白い棒が海に立っていた。
何だろうと思っているとその棒は猛スピードでこちらに近づいていた。
そう言えば今回のサメには角があるという情報を思い出す。
そして事実そいつはサメだった。
トビウオも真っ青になる高さまで飛び跳ね、直接輪太郎に飛びついてきたのだ。
体調不良のため何日か休むかも知れません。帯状疱疹になっています。




