ライカ組の襲撃 その6
「うおお」と誰かの叫び声と共に、一斉に組員が殴りかかった。
と言ってもコジロウを入れて19人がごちゃごちゃに戦えるわけもなく、初めに飛び出したのは5人である。
一人はコジロウの顔面をパンチ、二人はコジロウの背中にキック、左右の横からパンチとキックがコジロウに向かう。
コジロウはするっと後ろに移動し、後ろから蹴ってきた一人、筋肉力士の足を持つとグルンッと回り、人をバットのようにして他の四人を吹き飛ばしていた。
そのまま筋肉力士の両足を持ち、今度は大きく振り回して残りの13人にぶつけていく。
勢いそのままで筋肉力士を庭の外まで木の棒でも投げるように気軽に投げ飛ばしてしまった。
マヴィスの人の体重は重い。
リゲンを含んだ肉体は重くなり、京子も地球人で言うと見た目は50キロ前後だが、100キロは超えている。
大体、地球人の2倍の重さだと思っていい。
逆に言い換えれば2倍しかないのである。
リゲンをエネルギーに変えるマヴィス人は地球人に筋力をはるかに超える。
個体差が大きいため何倍という表現は難しい。
輪太郎で言うとムサシスナック棒でドーピングをすると、100キロほどを片手で持てるようになる。
バーベルなど持ちやすい物ならもっと重くても持てるだろう。
ドーピングしても最弱な輪太郎ですら3倍から4倍の筋力になっている。
マヴィス人であり武人であるコジロウの筋力は地球人の感覚では計り知れないだろう。
「なるほど。ここの空気だとこんなものか」
初めに掛かってきた5人はピクリとも動かなくなっていたが、残りの13人はまだ元気そうだ。
しかし、闘争心はほとんど消えているように見えた。
この少しの間に勝てないと理解してしまったようだ。
「もういい。俺がやる」
そう言ってサイガがにらみを効かし、コジロウに近づいた。
サイガは身長170センチで、マヴィス人だと低い方になる。
目つきは鋭く、あえてだろうか狂気を発している。おでこから右の瞼まですっと古傷があった。




