ライカ組の襲撃 その5
時間を少しだけ戻し、ライカ組がちょうどボスの屋敷の庭にたどり着いたところである。
19人は庭に入るなり、大きく深呼吸をしていた。
「やべー、死ぬところだ。やっぱり地球やべー」
「はあぁ、空気がうまぁーい」
「でもちょっと空気薄いよな。これじゃ力が出ないぞ」
口々にライカ組の組員はリゲンが吸えたことを感謝していた。
その姿をコジロウが見ている。庭の中央で気負いもせず、恐怖もせず、19人の敵を見ている。
実に自然体で優雅に立っていた。
「やあやあ、我こそはサーライト家の長男コジロウである。武人と手合わせしたい者からかかって来なさい」
大声でそう言うコジロウをライカ組の組員は目を丸くして見た。
「何だあいつ?」
「サーライト家って言ってたか?」
「おい、武人って言ってたし、あのサーライト家じゃねえのか」
「ちくしょう。あいつ用心棒を雇ってやがった」
ライカ組ががやがやと話している。
コジロウの存在に少し腰が引けていた。
「おい、ビビってんじゃねえ。親父の顔に泥を塗られたんだ。武人だか婦人だか知らねえが、囲んでやっちまえ」
「わかりました、サイガの兄貴」
サイガと言われた男は輪太郎のナイフを簡単に止めた奴である。
サイガが顎を振ると、18人の組員がコジロウを囲んだ。
コジロウから少し距離を取り、輪になっている。
水色の着物姿のコジロウは囲まれながら、軽く困った顔をした。
卵を買いに来たら好きな銘柄が売り切れていたような表情である。
それを囲む強面の男たちは、殺気をピリピリと出し、少しずつコジロウに近づいていく。
コジロウの背丈は180センチで筋肉質な体をしているが、見た感じ明らかに囲んでいる男たちの方がガタイは良い。
2メートルの筋肉力士も二人いる。
地球人だとどんな達人でも喧嘩にもならない状態である。
「いっぺんに来られると手合わせにはならないなあ」
コジロウは自分の頭を軽くなでながらそう言った。
後ろにまとめられた髪は肩下まで来ている。




