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ライカ組の襲撃 その4

「あいつはな。俺のことなんてどうでもいいんだ。俺の子種だけが欲しかったのさ。それだけが目当てで、俺に近づいてきたんだ!」


 そう言いながらトシカは怒っていた。

まあ、確かにそう言う部分もあるのかもと少しトシカに同情した。

地球で言えば『あいつは私の体目的で寄ってきたのよ』と訴える女性のようだ。


「それに俺は、本当はユイのことが好きだったんだ。でも親たちがリョウコと結婚することで進めてて、それでこんな愛のない結婚生活だよ」


 そう言いながらトシカは泣いていた。

しかし、よく泣くやつである。

マヴィス人の年齢はよくわからないが、見たところトシカは18歳くらいに見える。

ユイは15歳でリョウコは20歳だ。

まあ、確かにどっちもあり得るな。

紫プチトマト食べるための時間稼ぎのつもりだったのに、変な流れになってしまった。


「ちなみに京子さんの事はどうも思わなかったの?」


「あいつはヤベー奴だから恋愛対象にはならねえよ」


「ヤベーって何が?」


「そうりゃあ能力に決まってるだろ。あんなに強力な能力のやつはばあさんの代まで遡ってもいねえよ」


 なるほどね。

ユイちゃんくらいが標準の力なのだろうな。

リゲンを吸わずにキルミを5秒も固められていたから、京子さんはやはり規格外のようだ。


「でも僕ならリョウコさんのような美人と結婚出来たら幸せだけどなあ」


「愛のない結婚なんて、相手がどんなに美人だろうと意味がねえよ」


 そう言われて輪太郎は腕組みをして、難しい顔をした。

トシカはなかなか大人な意見を言っている気がする。

適当な本を読んで得た知識で、これまた適当なことを言ってみた。


「愛のないというけど、まずトシカがリョウコさんを愛したらいいんじゃないの? そうすれば片方だけでも愛はあるじゃない」


「だから俺はユイが好きなんだよ」


「でもリョウコさんと結婚したわけだし、外見だけでいうとリョウコさんとユイちゃんは結構似ていると思うんだよね」


「外見ってなんだよ。俺はユイの内面が好きなんだよ」


 トシカはそう熱く言った。

確かにリョウコの考え方と真逆なので少し相性が悪いのかも知れない。


「要するにトシカはまだユイちゃんに未練があるわけだね」


「そうじゃねえけどよ」


「内緒でユイちゃんに告白しちゃえば?」


「は?」


「それでうまくいけばユイちゃんと駆け落ちすればいいし、断られたらリョウコさんとの結婚生活を前向きにやっていけばいいじゃない」


 そう言われてトシカは考え込んでしまっていた。

別に時間稼ぎをしているつもりはないのだが、このまま話してたら20分経ってトシカを倒せるかもしれない。

もうそんなことはどうでも良いのだが。


「でもそんな事したら親戚たちが黙ってねえと思うし」


「だから内緒でやればいいじゃない。本気でその想いを伝えればユイちゃんも正直に答えてくれるさ」


 またトシカは真剣に考えている。

その姿は見ているだけで映画を観ているように錯覚するくらいの美男子だ。


「そうか。そうだよな。俺はユイへの気持ちが忘れられないから余計にこの結婚生活が嫌だったのかも知れない」


 そう言うとトシカは決意のある目で輪太郎を見る。

その時のトシカの表情は神々しいほどイケメンだった。


「わかった。ユイに告白してくるよ」


 トシカは「ありがとう」と言い残すと走り去っていった。


これでユイちゃんが告白を拒絶して、トシカがリョウコさんと仲良くしてくれたら万事解決だ。

まかり間違ってユイちゃんが告白を受けいれて、駆け落ちなんてしてしまったらメッシロ家を滅茶苦茶にしてしまう助言をしたことになってしまうが、トシカの事をユイちゃんは毛嫌いしていたので大丈夫だろう。

うん、たぶん。


さて、怖そうな人たち19人もコジロウさんに任せてしまったけど大丈夫だろうか。


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