ライカ組の襲撃 その3
「トシカ、僕と勝負しろ」
「あ? 何言ってんだ」
言い終わった瞬間にトシカのパンチが飛んできていた。
そのパンチを頬にくらい、世界が溶けて回る。
脳がクラクラとして認識がおかしい。
トシカのパンチは一瞬見えた。
見えたが速すぎて避けることは出来なかった。
奥歯が二本折れて舌の上に乗っているのを感じた。
口の中が血でぐじゅぐじゅだ。
ペッと歯と血を吐き出した。
「まだ僕は死んでいないぞ」
「あ? そうかよ、死にてえんだな」
トシカの手を見ていたら避けられない。
呼吸や気配で、顔を動かす。
今度は直撃せずにほほをかすめる。
だがすぐさま腹に膝蹴りを食らわされた。
衝撃と痛みが来る前に、右手を動かし、チュッパナイフでトシカの肩を切り付けた。
その後に悶絶し、地面を転がりながら胃液を吐き出す。
腹にジェットコースターがぶつかったように痛い。
苦しみながらもわかったことがある。
案外、トシカは優しい。
転がっている僕にとどめを刺そうとしてこない。
本当に殺そうとはしていないのである。
地球人としては何度も殺されるような攻撃を受けてはいるが、マヴィス人同士の基準で考えればただの喧嘩に収まっている。
そしてトシカぐらいの実力のマヴィス人になら絶望する必要がないことがわかった。
ドーピングをしても大人と子供ほどの力の差はあるが、工夫次第で勝てなくもないだろう。
こちらには生き返りとチュッパナイフがあるから言えることだけど。
痛みに耐えながら、チュッパナイフを見る。
この吸い込み方だと、まだに20分は掛かるだろう。
もう少し切り付けなければいけない。
「お前の手に持っているのは何だ? 俺のリゲンを吸い取ってるのか?」
「あんたの捻くれた邪気を吸い取っているだけさ」
そう言いながら、歯を食いしばり、輪太郎は立ち上がる。
カチコチキャンディーを食べているが、腹のダメージは深刻だった。
「一つ、聞いていいか?」
「あ? 何だよ」
素直にトシカは会話をしてくれていた。
輪太郎はウエストポーチを背中に回し、痛みに耐えている演技をしながらウエストポーチを開ける。
「リョウコさんのような良い人と結婚して、マーリちゃんのように可愛い子供もいるのに、何でそんなに嫌そうに生きているんだ?」
「はあ? お前なんかに何がわかるんだよ。リョウコなんていい女じゃねえよ!」
トシカは怒っているが手を出しては来なかった。
やはりそこまで悪い奴ではないのかもしれない。
輪太郎はウエストポーチから紫プチトマトを取り出し、口に入れて噛みしめた。
痛みの余韻は残っているが、体が治ったことを感じる。
ただ折れた歯は生えてはこなかった。
次の体になるまで歯が2本ない生活を送らなければいけないようだ。




