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メロデー・トシカ その2

「お、ユイじゃないか。何で地球にいるんだ?」


 そのトシカと言う男がユイを見ると気軽に声を掛けている。

そしてジロッと輪太郎を睨んだ。


「別にいいじゃない。あなたには関係ない」


「いや、怪しいな。ユイはもしかしてこいつ知っているんじゃないか」


 そう言ってトシカは写真のようなものを見せてきた。

絵のようにも見えるがあまりにも精巧に書かれている。

点描かもしれない。

そしてその絵をよく見ると、ボスの顔だった。


「何でこの人を捜しているの?」


「こいつはライカ組に喧嘩を売ったそうなんだよ。地球に逃げたから捜して来いって言われたんだ」


「あなたライカ組に入ってんの? リョウコ姉さんが悲しむよ」


「入ってねえよ。ちょっと借金があるだけだよ。ともかくその感じだとユイはこの男のこと知ってるんだろう? 教えろよ」


「何であなたにそんな事を教えないといけないのよ」


「あのーいいですか?」と輪太郎が発言する。


「なんだおめえ! 身内の会話に口を出してるんじゃねえ!」


 トシカの手が消えたように見えた。

切るような風を感じる。

横から伸びたユイの手が目の前にあり、トシカの手が顔の横に来ている。

どうやらトシカが僕の顔を殴ろうとして、ユイがさせまいと手を払ってくれたようだ。

輪太郎にはどちらも全く見えなかった。


「トシカ!」とユイが叫んだ。

はっとトシカはユイを見て、そして固まっていた。

その固まっているトシカをユイが思いっきりひっぱたく。

パン! と大きな音がした。

固まったまま、トシカはアスファルトの地面に墜落したようにぶつかる。

地球人なら確実に死んでいる威力だ。


「私の友達に何してるの! いくらユーリの父親だからって許さないよ!」


 会話を聞いているかぎり、どうやらこの人がリョウコの旦那のようだ。

という事はこの男のフルネームはメロデー・トシカなのだろう。

確かに性格はクズっぽいが容姿は完璧だ。


 しばらくしてトシカが泣きながら立ち上がった。


「教えてくれよ。この男を見つけないと俺はマヴィスに帰れないんだよ。いくらメディー族でも半月も地球にいたら死んじまうよ。ユイ、義理とは言え兄を殺す気かよ」


「私はあなたを兄とは思っていません」


「俺が死んだらリョウコもあの年で未亡人だぞ。マーリの父親を殺す気か?」


 そう言われて、ユイは顔を曇らせている。


「教えていいかボスに聞いてみようよ」


 輪太郎が見かねて言った。

ユイは不満そうな顔で黙っている。

 輪太郎はボスに電話を掛けた。

今までの経緯を伝える。


「別にいいぞ。教えてやれ」と実に軽い返事で電話は切れた。


「いいってさ」


 その輪太郎の言葉を聞くと、ユイは大きくため息を付いた。


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